かすかなざわめきに、目が覚める。

「・・・あれ?大ちゃん・・・??」

いつも抱き締めてくれているはずの腕がない。

ふ。とざわめきのほうに視線をやると・・・。

背中をまあるくして、ボリュームをちいっさくして、コロンビア戦に見入っている。

「あーっ。」とか、「おーっ。」とか、小さく叫びながら。


「・・・そこまで、気を遣わなくていいのに。」

真っ暗な部屋で、スクリーンの光が大ちゃんの横顔をピカピカと照らす。
なんだか、きらきらと輝く少年のような瞳が、とっても魅力的で。

まだ、朝の5時過ぎだよ?
目覚ましかけなくても、目が覚めちゃうぐらい楽しみだったんだね。

昨日?というか、今朝は散々夜更かししたのにね??


そんな大ちゃんが可愛くて、愛おしくて仕方がない。


「・・・・・わっ!!びっくりしたあ!!」

ベッドサイドにあったリモコンで、ボリュームを一気に上げると、大ちゃんがびくうっ!!と飛び上がる。


「・・・そんなに好きならさ。一緒に観よう。って起こしてくれたらいいのに。」
「・・・だって、まお、そこまでサッカーに興味ねーだろ?」

大ちゃんが遠慮しいしい、機嫌を伺ってくる。

「ぷぷぷっ。でも、ぴっとりくっつきながらでも、観れるでしょ?」
「・・・それもそうだ。」


するり、と大ちゃんの腕の中に滑り込むと、しっかりと両腕を胸の前でクロスさせる。


んふふ。

いつもよりドキドキしている大ちゃんの心臓の音。
ファインプレーだったり、ピンチだったりするときに、大ちゃんが身を乗り出すと。
ぎゅうっと閉じ込められるぐらいに強く抱き締められる感触が伝わってきて、ドキドキする。


「あーあ・・。負けちゃったなあ・・・。せめて、もうちょっと接戦だったらなあ・・・。」
「四年後があるよ。」

「やっぱ、世界の壁はあついなーっ・・・・。」

はあぁ。とため息をつきながら、おれを抱き締めながらゆらゆら揺れる大ちゃん。


・・・ほんとうに、もうっ。


これだから、一人にしておけないんだよねっ!!


「ほらほら。そんなに落ち込まないのっ。まだまだ日本での層が薄いんだよ。4年後には、もっともっとキッズたちが頑張って、ビッグな選手が育ってるかもよ?」
「んー・・・。そうだなあ。野球とは歴史が違うもんなあ・・・。」

「そうそうっ!!そのうち、甲子園みたいなのが、できるって!!」
「・・・そんなのあったら、楽しみだなあ。」


なーんて、落ち込んでいる大ちゃんをよしよしなだめて。


自分の誕生日に何やってるんだろーっ・・・。とは思うけれど、やっぱりこうやって大ちゃんをかまってあげるのが、何より嬉しい。

なんだか、おれでも大ちゃんの役に立ってるんだなーっ。って実感できて、くすぐったいような気持ちになる。


「・・・・ね?気分転換にお出掛けしよっか?」
「おうっ!そうだなっ。せっかくのまおの誕生日だしっ。でっかいホールのケーキでも食いに行くかっ!!」

「・・・大ちゃん、それ、やけ食い・・・?」
「や。なんかいかにも誕生日ですーっ!!って感じがして、いいだろ?」

なんか・・・。

おかしい。


初めて二人で祝った誕生日は、あまりケーキ得意じゃないのに、おれのために。ってホールのケーキを買ってきて、がんばって食べてくれたよね??

それが、今では「でっかいホールのケーキ。」だって。


大ちゃんの色に染まってゆくのは、おれだけじゃない。

大ちゃんだって、おれの色に染まっていっている。


23歳の誕生日。


また、貴方に一歩近付いたね。


ちょっぴり大人になれた分、もっともっと甘えてよね。大ちゃん。


いつも完璧な貴方がたまに見せる、こんな少年のような瞳が大好きだよ。



ヒトツ大人にだったおれだけど、昨日と変わらず貴方を愛してる。