ケーキを外で食べて帰るかどうか迷ったんだけど。

やっぱりおうちでゆっくり食べよう。ってことになって、ケーキ屋さんへ寄り道する。

「誕生日だし、やっぱ、ホールでしょうっ!?」
「そうがないなあ。じゃあ、一番小さいやつだよ?この15cmください。」

あまーい香りのする店内。
小さなプレートに「誕生日おめでとう。まお」と書いてもらって、大きな大ちゃんが小さな箱を持ってるのって、
なんか可愛い。なんて思いながら、ゆっくりと岐路につく。

「・・・あ。リニューアルしてる。」
「ああ。夏物仕様、だな。」

見慣れた街並みの中の、通いなれた雑貨屋さん。
まだまだ梅雨グッズのレインブーツや傘が並ぶ奥に、きらきらと光る硝子細工の風鈴やグラスがなら並んでいる。

「ちょっと、寄り道していい?」
「・・いいよ。だって、今日はまおのお願いなんでも聞く日、だろ?」

「あははっ。ちゃんとプレゼントもらったから、それはナシ。だよ。」

律儀に覚えてくれている大ちゃん。
誕生日だから特別にどうこう。っていう感じじゃなくて、本当にいつも通りの大ちゃんだから。
毎日、毎日特別扱いされてたんだなあ。なんて改めて思う。


耐熱硝子でできた、淡いブルーのグラスが並んでいる。

「ちょ。大ちゃん。これ、可愛くない?」
「・・・あ。ほんとだ。ペアでハートのカタチになるんだな。」

離れていても、いつもハートを半分こして持っているんだと思うと、うきうきしてくるよねっ。


「大ちゃんっ!!これがいい。誕生日のプレゼント、これがほしい。」
「いいよ。これぐらいのおねだりなら、いくらでも。」

「あのっ!!これ、一個づつプレゼント包装していただけますか?」

店員さんにベツベツに包装してもらって、ヒトツは大ちゃんに渡す。

「半分は大ちゃんの分だからね?」
「ああ。まおのこと想いながら、毎日これでコーヒー飲むよ。ありがと。」


両手にケーキとグラスの包みを持った大ちゃん。
その腕をおれの荷物で一人占めしていることが嬉しい。


「・・・愛してるよ。大ちゃん。」

きょろきょろっと通りに人がいないことを確かめて、頬にちゅ。とキスをした。


「まーおっ!!」

両手がふさがってなされるがままの大ちゃんが、照れて慌てて周囲を見渡す。


「誰もいないよお。ちゃんと、チェック済みだから、安心して?」
「・・・なんか、お前。芸能界休んでから、大胆になったなーっ!!」

「・・・そう?」


だって、今まではこれでもすっごくすっごく我慢してたんだ。
大ちゃんに迷惑がかかったらいけないから。


でも、今なら自由に大ちゃんのことを話しできるし、プライベートな時間を一人占めできるし。


誰かにとられちゃわないように、「愛してるよ。」ってしっかり行動で示しておかなきゃね?