ん・・・・。誰かが優しく頭を撫でててくれている。
あったかくて、安心できる感触。

うとうとと心地よいまどろみに身を任せていると、大好きな声が降りてきた。

「おはよ・・。まお。」
「ん・・・。おはよ。」

瞼を開けると、そこにはふんわりとした大好きな大ちゃんの笑顔が待っていた。

「誕生日、おめでとう。」
「・・・・ん。ありがと・・・。」

静かに、穏やかに、幸福に、始まる朝。

芸能界に入ってから、毎年お祭り騒ぎのように、イベントがあったり、ブログにたっくさんのお祝いコメが届いたり。
たまたま稽古や収録が入っていると、誕生日ケーキをサプライズで用意してくれていたり。

そんなわいわいとした誕生日が当たり前になっていたけれど。


大好きな人の腕の中で静かに迎える誕生日の朝も悪くない。


ぎゅっと、大ちゃんを抱き締めて体温を感じる。


「・・・んふふ。23歳の誕生日も、この腕の中で過ごせて幸せ。」
「・・・・嬉しいこと言ってくれるなーっ。まお。」

心からの言葉をつぶやくと、大ちゃんが愛おしくって仕方がない。って感じで抱き締めてくれる。

「わわわっ!!大ちゃん、くるしーっ!!」
「おおっ。ごめん。ごめん。あんまりまおが可愛いこと言ってくれるから・・・。」

ぱっ。と腕の力を緩めると、両頬を掌で包み込みながら、額にちゅ。とキスをくれる。


「愛してるよ。大ちゃん。」
「ありがとう。俺もまおの側にいれて幸せだよ。」

かさ。と枕の下で何かが音を立てる。

「ん・・・?何?」

ブルーのリボンのかけられた真っ白い一枚のカード。

「・・・もしかして、バースデーカード?」
「うん。月並みだけど。」

「開けていい?」
「駄目っ!!目の前で読まれるのは、スッゲー恥ずかしいから、一人でこっそり読んでくれる?」

ばっ!とカードを枕で隠しちゃう大ちゃんが可愛い。
・・・そんな照れるところを見たいのに。

「枕の下に隠してるなんて、サンタさんみたいだよね。」
「まおが起きたと気に見つけてほしかったからな。」

20歳の誕生日から、毎年増えていくBDカード。
これで、もう4枚目。

こうやって毎年積み重ねられる紙の暑さ分、二人の愛の深さを表しているみたいで、すっごく嬉しい。


「今日は、どうやって過ごそうか?」
「んー・・・。なんか、まったりカフェオレでも飲みたい気分。」

「オッケー。」

キッチンで、流れるような手さばきで朝食を用意してくれている大ちゃんの気配を感じながら、スマホをいじる。

「ねーねー。6月25日って、ガウディの誕生日なんだって!!なんか、嬉しいなあ。ちょっとでも、同じ才能があるかも。とかって思っちゃうよねっ!!」
「・・・あるだろ?十分。」

カウンターキッチン越しに視線の合った大ちゃんは、眩しそうな瞳をしていた。

「ちょっとでも追いつけるようにがんばんなくちゃ。」
「・・・じゃあ、俺はまおに負けないように、がんばんなくちゃ。だな。」

ガウディの繊細で美しいデザインが好き。
机の上に並べられたコレクションの中の一冊に、たまたまあった世界の巨匠が、まさか同じ誕生日だったなんてね。


大ちゃんが、真っ白いプレートに盛ったクロワッサンと、色鮮やかなサラダと、とろっとろのスクランブルエッグの乗った朝食を運んでくる。
それと、背の高いグラスにたっぷりと注がれた甘いカフェオレ。

「なんかさあ。大ちゃんって、こういう盛り付けがお洒落だよね。」
「そうか?・・・まおの刺激じゃねー?食器のデザインとか、彩とか気にするだろ?一緒にカフェとか行くようになったし。」

「んふふ。そうかもね。」

一緒に暮らすことで、少しずつお互いの色に染まってゆく。

決してぶつかりあうことなく、自然に。
カラーインクを垂らすように。


そうだね。

おれだって大ちゃんの刺激でいっぱい変わったよ?

ポップで元気なインテリアが好きだったけど、今はシンプルで落ち着く空間が好き。


・・・・まあ、そこに大ちゃんの気配を感じるから。ってのが一番なんだけどね。


「・・・さて。出かけますか?」
「どこに?」

「決まってるだろ?まおの誕生日のプレゼントを買いに。」
「あ。そっかあ・・・。」

今まで、誕生日にまるまるお互いにオフっていう日がなかったから、二人で選びに行く。っていう感覚がなかったや。

「デートを兼ねて。・・・な?」
「・・・・うんっ!!」