「まお。今日ちょっといいか?」
「・・・ん?どうしたの?今日はごはん食べる連れがいない?」
稽古の帰りにまおを誘う。
ひどい仕打ちをしているのに、こうやって今までと変わらない笑顔を向けてくれる。
それだけで、どれだけ俺のことを愛してくれているかがわかる。
一緒にメシ行こうぜ。と誘ったものの、とても食事をする気分ではなくて。
そもそも最初から食事を食べるつもりなんてなかったから、アテもないし。
人通りの少ない道を選びながら、まおと並んで歩く。
「あのさ。まお。」
「・・・ん?」
「この前の、返事・・・・。」
「この前って・・・?」
何事もなかったというふうに、立ち止まって首を傾げる。
「・・・・いや。なかったことにしたかったなら、いいんだ。」
せっかくあと一息、というところまできた一言が飲み込まれてしまう。
ひたひたと、無言で並んで歩く二人の間の緊張した空気が全身を刺す。
考えてみれば、必死に忘れようとしていた気持ちをまた掻き乱されて、迷惑でしかないのだろう。
「・・・ごめん。まお。」
アスファルトに落ちる二人の陰を眺めながら、つぶやく。
「ひどいよっ!!大ちゃんっ!!自分から、ごめんな。って言ってなかったことにしたくせに。
なかったことにしたいわけ、ないじゃないかっ・・・・・!」
ぽろぽろと大粒の涙をこぼしながら、両手を握り締めて叫ぶように声をふりしぼる。
「なかったことになんて、できるわけ・・・・。毎日、どんな思いで過ごしてるかなんて、大ちゃんにはわからない・・。」
一度堰をきってしまった感情は、押し留めることができない。とばかりに、後から、後から涙が溢れ、アスファルトにぽたぽたと落ちてゆく。
「俺も、なかったことになんて、できなかったんだ・・・。」
抱きしめてもよいものかどうか迷ったけれど、泣きじゃくるまおを見ているとそうせずにはいられなくて、ぎゅっと腕の中に閉じ込めた。
「ごめん。ごめん。まお。辛い思いさせて・・。」
「大ちゃんは・・・。おれのこと好きじゃないの?ただの可愛い弟だから優しくしてくれたの?」
まおだってもう子どもではない。
自分に向けられる好意の種類ぐらい、なんとなく感じとっていたのだろう。
「いや・・・。違う。本気で愛してるよ。」
「じゃあ、どうして・・・。なかったことにしたいのか?なんて聞くんだよっ!!」
今まで押し殺していた分だけ爆発してしまったかのように、ドンドンと俺の胸を叩く。
「恋人同士を演じるのとは、訳が違うんだぞ?まお。回りの人や、家族や色んな人を巻き添えにすることになる。」
「・・・知ってる。」
ぼそり。と低くつぶやくまお。
「大ちゃんを不幸にするから、何度も何度も諦めようと思ったよ。それでも、諦められなかったんじゃんか。
だから、気持ちを知っててもらうだけでいいって・・・。」
「俺のことじゃない。お前を愛してくれている家族も、不幸にするかもしれないんだぞ?」
「・・・・だって・・・・。仕方がないじゃんか・・・。それでも、好きなものは、好きなんだもん・・・。」
「一回付き合い始めてしまったら、離れてやることなんて、できないぞ?」
「・・・付き合ってもくれないのに、どうして離れるなんて言うの・・・。」
指先が真っ白になるぐらい俺のシャツをぎゅううっと握り締めて、腕の中で小さく震える。
その感情は怒りなのか、悲しみなのか。
「離れるなんて、できるわけないじゃんか・・・。こんなにも好きなのに。」
まおの腕が背中に回り、ぎゅうっと抱きしめられる。
「・・・・ああ。そうだった・・・な・・・。」
涙でぐしょぐしょになったまおの頬を両手で包み、触れるだけのキスをする。
「どんなことがあっても離れないと誓うから。俺と付き合ってくれるか?まお。」
「・・・うん・・・。」
まおの瞳が大きく見開かれて、ふたたび新しい涙がこぼれてくる。
「・・・なんか、俺ダメダメじゃん。最初っから、こんなに泣かしまくって・・・。」
「・・・ううん。いっぱい悩んで、真剣に考えてくれて。ちゃんと返事してくれたから、いい・・・。」
俺の腕の中でふるふると首を横にふりながら、「うれしい・・。」と小さくつぶやくまおの背中を撫でながら、
何があっても守り抜こう。
そう心に誓った。
「・・・ん?どうしたの?今日はごはん食べる連れがいない?」
稽古の帰りにまおを誘う。
ひどい仕打ちをしているのに、こうやって今までと変わらない笑顔を向けてくれる。
それだけで、どれだけ俺のことを愛してくれているかがわかる。
一緒にメシ行こうぜ。と誘ったものの、とても食事をする気分ではなくて。
そもそも最初から食事を食べるつもりなんてなかったから、アテもないし。
人通りの少ない道を選びながら、まおと並んで歩く。
「あのさ。まお。」
「・・・ん?」
「この前の、返事・・・・。」
「この前って・・・?」
何事もなかったというふうに、立ち止まって首を傾げる。
「・・・・いや。なかったことにしたかったなら、いいんだ。」
せっかくあと一息、というところまできた一言が飲み込まれてしまう。
ひたひたと、無言で並んで歩く二人の間の緊張した空気が全身を刺す。
考えてみれば、必死に忘れようとしていた気持ちをまた掻き乱されて、迷惑でしかないのだろう。
「・・・ごめん。まお。」
アスファルトに落ちる二人の陰を眺めながら、つぶやく。
「ひどいよっ!!大ちゃんっ!!自分から、ごめんな。って言ってなかったことにしたくせに。
なかったことにしたいわけ、ないじゃないかっ・・・・・!」
ぽろぽろと大粒の涙をこぼしながら、両手を握り締めて叫ぶように声をふりしぼる。
「なかったことになんて、できるわけ・・・・。毎日、どんな思いで過ごしてるかなんて、大ちゃんにはわからない・・。」
一度堰をきってしまった感情は、押し留めることができない。とばかりに、後から、後から涙が溢れ、アスファルトにぽたぽたと落ちてゆく。
「俺も、なかったことになんて、できなかったんだ・・・。」
抱きしめてもよいものかどうか迷ったけれど、泣きじゃくるまおを見ているとそうせずにはいられなくて、ぎゅっと腕の中に閉じ込めた。
「ごめん。ごめん。まお。辛い思いさせて・・。」
「大ちゃんは・・・。おれのこと好きじゃないの?ただの可愛い弟だから優しくしてくれたの?」
まおだってもう子どもではない。
自分に向けられる好意の種類ぐらい、なんとなく感じとっていたのだろう。
「いや・・・。違う。本気で愛してるよ。」
「じゃあ、どうして・・・。なかったことにしたいのか?なんて聞くんだよっ!!」
今まで押し殺していた分だけ爆発してしまったかのように、ドンドンと俺の胸を叩く。
「恋人同士を演じるのとは、訳が違うんだぞ?まお。回りの人や、家族や色んな人を巻き添えにすることになる。」
「・・・知ってる。」
ぼそり。と低くつぶやくまお。
「大ちゃんを不幸にするから、何度も何度も諦めようと思ったよ。それでも、諦められなかったんじゃんか。
だから、気持ちを知っててもらうだけでいいって・・・。」
「俺のことじゃない。お前を愛してくれている家族も、不幸にするかもしれないんだぞ?」
「・・・・だって・・・・。仕方がないじゃんか・・・。それでも、好きなものは、好きなんだもん・・・。」
「一回付き合い始めてしまったら、離れてやることなんて、できないぞ?」
「・・・付き合ってもくれないのに、どうして離れるなんて言うの・・・。」
指先が真っ白になるぐらい俺のシャツをぎゅううっと握り締めて、腕の中で小さく震える。
その感情は怒りなのか、悲しみなのか。
「離れるなんて、できるわけないじゃんか・・・。こんなにも好きなのに。」
まおの腕が背中に回り、ぎゅうっと抱きしめられる。
「・・・・ああ。そうだった・・・な・・・。」
涙でぐしょぐしょになったまおの頬を両手で包み、触れるだけのキスをする。
「どんなことがあっても離れないと誓うから。俺と付き合ってくれるか?まお。」
「・・・うん・・・。」
まおの瞳が大きく見開かれて、ふたたび新しい涙がこぼれてくる。
「・・・なんか、俺ダメダメじゃん。最初っから、こんなに泣かしまくって・・・。」
「・・・ううん。いっぱい悩んで、真剣に考えてくれて。ちゃんと返事してくれたから、いい・・・。」
俺の腕の中でふるふると首を横にふりながら、「うれしい・・。」と小さくつぶやくまおの背中を撫でながら、
何があっても守り抜こう。
そう心に誓った。