まおがアンティークショップで買ってきた、艶消しのまあるいフォルムのブロンズ色の時計。
手の平に載せると、ずっしりと重くて、小さいけれど、存在感のある時計。

二人が付き合いだした記念に、一緒に時を刻んで行こうね。

と、付き合って一年の記念日にまおが選んできてくれたプレゼント。

付き合いだしてから、もうすぐ3年の月日が経つ。


ケンカをして一人で声を殺しながら、泣いた日も。

言葉が足らなくて、傷つけあった日も。

誰よりも大切な存在だよ。と愛をささやきあった日も。


いつでも、静かにじっと二人を見守ってくれた。


そんな大切な思い出のつまった時計。



ベッドにもぐったまおが、時計をじいいっと見詰めながら、ボソリとつぶやく。

「・・・ねえ。大ちゃん、地球って丸いんだよね。」
「コロンブスの発見が正しければな。」

何を今更、そんなことを改めて聞くのだろう。
こういう時のまおは、何かを自分の中で創造して、考えている。

「この時計も丸いよね。」
「ああ。そうだな・・・。」

時計を見詰めるまおの瞳は穏やかで、優しい光に満ち溢れている。

「あのさあ。時計の針って、ぐるぐる回って必ず同じところを通るでしょ?地球もさあ。ぐるぐる回ってるんだよね。」
「そうだな。」

「それじゃさあ。例えば、ここにおれがいるとして、ここに大ちゃんがいるとして。ぐるっと回ったら、同じ空気を吸ってるのかなあ?」

時計の針を刺しながら、いいことを発見した!とばかりにふふふ。と笑っている。

・・・厳密に言うと、緯度が全く同じでないといけないし、空気だって重力と一緒に大地と共に動いているわけだし、そもそも公転だってしているのだから、全く同じ位置に数時間後にたどり着く。ということはありえないのだけれど。

数ヵ月後には、飛び立ってしまうまおが、どんなに離れていても繋がっている。とそんなふうに感じれている。という発想が羨ましくもあり、尊敬する。

オトナになってから、そういうメルヘンチックな発想ってなくなってしまったからなあ・・・。

「・・・そうだな。お前が吸った空気を、数時間後には俺も吸っているかもな・・・・。」


今は、偉大な発見者の功績を忘れよう。


地球は永遠にぐるぐると同じところを回っていて。

もし、その場で立ち止まることができるのならば、数時間後には地球の反対側にいる人に会える。


「それに、ほら・・・。」


今はまおの夢の世界に付き合おう。


掌サイズの小さな地球儀。

赤いマジックで、日本とまおの留学先を結ぶ。

「こんなにも近いんだよな。わずか数センチってとこだな。」
「ふふふ。ほんとだねえ・・・。」

肩を寄せ合って、時計と地球儀を眺める。


うん。


きっと大丈夫。


地球は丸くて、こんなにも二人の距離は近い。


・・・そう自分が信じるならば。



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ちょっとわかりにくいかもしれませんがWW

まお君の想像わかりますか??

私も、最初あっ!!同じ空気を吸うんじゃ??と思ってから、いやいや。よく考えたら違うよな~~。って思ったのですWW
でも、そういうふうに信じれたら、寂しくないですよね^^