真新しいスーツに身を包んで、大学の門をくぐる。

父親の母校。

僕には脈々とその血が流れている。

だけど、同じ人生を歩むわけではない。

両親が僕に注いでくれた愛情や想いを胸に、自分らしさを探す一歩を踏み出したところだ。


誰のために生きるのか?

どんなに愛されていても、従属するだけではそこに真の輝きは生まれない。

自ら光輝くためには、強い意志とたゆみない努力が必要だと彼が教えてくれた。

そうして、その姿が自然に人を惹きつけるのだと。


今の自分にその価値があるか?

愛し、愛されるだけのスタートラインに立つ事ができているか?


ふんわりと全てを包み込むような優しい眼差しをした渡辺さん。

彼の位置まで追いつこうとするには、途方もなく長い道のりに思える。

ゴールの見えない階段をどこまでも登っていくような・・・。


それでも、一歩を踏み出さないことには何も始まらないから。

二人に胸を張れるような恋ができるように、もっともっとオトナになろう。


今、この瞬間を精一杯生きて・・・。


会場を出ると、ざあっ。と風がふいて一面の桜吹雪に包まれた。


寄り添う二人の影が、すうっと現れて、桜の花びらと共に消えていった。



僕の、本気だったけど、はかなく散った初恋。



でも、今日のこの日の清清しい空気のように、どこまでも晴れやかな気分だった。



今頃、彼も新しい一歩を踏み出しているだろう。



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完結とか言いながらWW

あちゃー。桜がどっかいちゃったWってことで、慌てて書き足しましたWW

このくそ暑い時期に桜もどうかと思うのですがWW

まあ、気分はフレッシュな春ってことで想像してください(笑)