季節はめぐり、浜尾君には会えないまま受験の日がやってきて。

不思議なほどに落ち着いて、集中することができた。

自分の中でもやもやとしていたものが、全て冷静に見詰めなおすことができたから。

・・・・それでも、やっぱり一方的に思うことしかできなお恋。というものは、時々ツキン。と痛みを伴うけどね。
手を繋いで街を歩いているカップルを見かけたり。
一緒に合格しようねっ!!なんて、話ている恋人たちの姿を見るたびに。

自分だって、「僕もがんばるので、がんばってください。」
そんなふうに伝えたかったなあ・・・。なんて、思う。

キラキラした未来を彼からたくさんもらったのに、何か僕から返すことができただろうか??

それとも、きっと彼のことを支えてくれている恋人がいるから、そんなものは必要ないのだろうか??

人間とは、貪欲な生き物だなあ。と思う。

人を好きになって、その人のことを思うと胸がいっぱいになって、幸せな気持ちになれて。
それだけで、十分じゃないか。
今までの色あせた風景が、急に七色に鮮やかな色彩を持って輝きだしたのだから。

そう思うけれど。

愛した分だけ、愛されたいと願ってしまう。

流れ出る感情の分だけ、満たされたいと思ってしまう。


世の中には、どれだけこうやってすれ違う想いがあるのだろう・・・。


好きになった人に、同じ分だけ愛される確立って、実はそうそう高くないんじゃないだろうか・・・。


街を歩くカップルを眺めながら、そんな不思議な思いに囚われるのだった。