「なあ・・・・。一日中、誰かのことを考えてしまうって・・・。やっぱり好きなのかなあ・・・??」

彼の生き方に恥じないように。
胸を張って生きれるように。
まだまだ未来のビジョンはぼんやりしているけれど、今自分にできることを精一杯やってみよう。

そう心に決めてから、真剣に受けるようになった予備校の授業。

でも、終礼のサインと共に、ぷしゅーと空気が抜けたように机に突っ伏してしまう。

そうして頭に浮かぶのは、つい最近知ったばかりの今は芸能界で忙しくしているはずの浜尾君。

彼が何者であるかを知るより先に心惹かれたのだから、憧れの芸能人に感じる好き。とは違う。
一緒に受験生として、切磋宅磨する仲間・・・に対する感情とも違う。
だって、ここの予備校の仲間に対して、一日中心を砕く。ってことはないから。

第一印象は、光に透ける様なおとぎ話からでてきたような綺麗な人。

そんなイメージから一目惚れに近かったかもしれない。

でも、話せば話すほど、おとぎ話どころか、きちんと現実を見据えていて、しっかりと自分の未来を考えている人なんだなぁ。って心惹かれた。

側にいるのが、心地よくて、安心できて、なのにドキドキが止まらない。
そんな不思議な感情。

・・・やっぱり、これって好き。なのだろうか。

もし、この好き。に名前をつけるとすれば・・・。

それは、恋、なのだろうか・・・・。

同性で、芸能人で、そんな身分違いの恋をしたって、報われないだけなのに。


「そりゃあ、お前。好きだから、そうやって悩んでるんだろ?」

隣にいた友人に話しかけていたはずなのに、すっかり独り言のように思いをめぐらしていた僕は、返事があったことにびっくりしてしまう。

「えっ!?あっ。うん・・・。やっぱり、好き、なんだよねー・・。」

僕に対して、ふんわりと向日葵のように向けてくれた笑顔は、嘘でなかったと思う。
カメラを向けられて作る笑顔ではなく、彼の人柄から自然にでた笑顔だと思うから・・・。

でも。

きっと、あの笑顔を一人占めしている人がいる・・・気がする。

「でもさあ。多分、恋人がいるっぽいんだよね・・・。」

そうなのだ。

身分違いがどーのこーのと言う前に、あんなにも輝いているのは公私ともに充実しているからではないか?と思ってしまうような幸せオーラが漂っている。

未来に対する希望と、愛されている自信に満ちた揺らぎない芯の強さ、みたいなもの。

未来にも、彼への恋心すらもふらふらと根無し草のように頼りない自分。
だからこそ、強烈に引きつけられたのかもしれない。

「恋人がいよーがいまいが、好きになる気持ちはとめられないだろ?」
「うん。そうなんだけどさー・・・。」

伝えることすらもできないまま、心の中にしまっておかなくてはいけない恋心を思うと、我がことながら可哀想な気になってくる。

「告白もできないって、辛いなー・・・。と思って。」
「じゃあ、忘れるんだな。」

へたばったままの頭をぽんっ!と叩かれて、思わずムキになってしまう。

「そんな簡単なことなら、最初から好きにならないよっ!!」

がばっ!!と身を起こして反論すれば、にやり、と友人が笑っている。

「ほら。もう答えでてんじゃん。」

----あ。そっか。

彼が誰を好きでも、自分だけに笑顔をくれているのではなくても。

側にいたいと思う。
彼の生き様をいつまでも見詰めていたい。と思う。


偶然の出会いがくれたプレゼント。


一方的な恋心かもしれないけれど、僕が一歩前に進めるように手を引いてくれた素敵な人であることに変わりはないんだから・・・。