本棚をなんとなく整理していたら、本の間から、はらり。と一枚の写真が落ちてきた。
床に落ちたその写真を拾い上げる。
「・・・だれだろ?これ。」
ピンクの桜の花びらの下で、ふんわりと可愛い感じの女の子が大ちゃんと並んで嬉しそうにピースしている。
・・・これ、二人で行ったことのある公園だ・・・・。
もしかして、昔の彼女とか・・・??
大ちゃんに彼女がいたことぐらいは知っている。
出逢ったのが、大ちゃんが25歳のときだったんだから、過去がないほうがおかしいと思う。
でも、おれが気がつかないように、昔の話をするときは慎重に言葉を選んでくれる大ちゃん。
ちょっとしたことですぐに落ち込んでしまうおれの気持ちをわかってくれて、
もしかして、昔誰かときたことがあるのかな~?って思ってしまうときでも、さりげなく話題を変えてそれ以上考えなくていいようにしてくれる。
追求したい気持ちがないことはないんだけど。
もう、別れている彼女さんに嫉妬しても仕方がない。
それも、頭ではよくわかっているから。
「・・・でも、こうやって、はっきり映像になって残ってるとやっぱ落ち込むなあ。」
二人の思い出の場所だと思っていた場所に他の人が映っている。
なんだか、過去の話なのに、大ちゃんを取られた気分になる。
大ちゃんのお気に入りの場所なのだから、大切な人を連れて行きたい。と思うのは当然のことなんだろうけど。
・・・やっぱり、ざわざわするよなあ・・・。
毎日「まおは可愛い。綺麗。努力家だし、素直だし、天然でかまいたくなる。」
そういい続けてくれるお陰で、愛されている自信はあるんだけど。
それでも、やっぱりこういうふんわりしたいかにも女の子らしい子を見ると、逆立ちしたって勝てっこない。と思ってしまう。
「大ちゃんって、こういうタイプの子が好きだったんだ・・・。」
目はちょっとおれのほうが大きいかな?
髪の毛だって、お手入れすれば負けてないかも。
スタイルだって、顔はちっちゃい。ってみんなに言われる。
・・・でも、やっぱり可愛いよなあ・・・・。
筋張っていない可愛さ。というのか。
外見だけのイメージだけど、控えめで、庇護欲をかきたてそうな・・・。
・・・・あ。駄目だ。落ち込んできた・・・。
「比べたって、仕方がないだろ?」
今、大ちゃんの隣にいるのは自分なのだから。
女の子にはわからないような、同性で同じ仕事をしているからこそわかる悩みや背負っているものの重さとか。
そんなものを理解して、共有して、少しでも癒しとなる居場所になってあげたい。
「わかってるけど・・・。なかなか、気持ちはそう単純には割り切れないよなあ・・・。
・・・ってゆーか、大ちゃんもいつまでも彼女の写真を持ってるって、まだ少しは好きだったりするのかなあ。」
そうだよ。
別れるって言ったって、自分からふったとは限らないじゃないか。
もしかしたら、ふられて今でも完全には忘れれずにいるのかもしれない。
気持ちが冷めたんじゃなくて、何か事情があって別れることになったのかもしれない。
「ただいまあ。」
何も知らない大ちゃんの呑気な「ただいまあ。」が聞こえてくる。
-----もうそんな時間だったんだ。
気がつけば、写真をじーっと見詰めたまま、涙がぽろぽろと零れ落ちていた。
「・・・まお?どうしたんだ?」
大ちゃんがこっちに歩いてきて、写真をクッションの下に押し込む。
「ううんっ。何でもない。」
慌てて、涙を掌でこすって、ふるふると首を振る。
・・・・だって、大ちゃんは何にも悪くないんだから。
自分に言い聞かせるけれど、口を開いたら
「この彼女さんと、自分とどっちが好き?どうして写真をまだ持ってるの??」とかって、大ちゃんのことを責めてしまいそうで。
なのに、大ちゃんの掌が優しく頭を撫でてくれて
「何でもない。って顔してないぞ?」って瞳を覗き込んでくるものだから。
胸が熱くなってきて、我慢していた涙が、また溢れてきてしまう。
・・・反則だよ。大ちゃん。
このあったかい掌に弱いのだ。
ぽんぽん。と撫でられて、「大丈夫か?」と言われると心にわだかまっていたものがとろとろに溶けてしまうのだ。
一所懸命に我慢していたものを、吐き出しても許されるような気分になる。
「ごめんねえ・・・。大ちゃん。おれが勝手に落ち込んでるだけなんだけど。昔の?彼女さんの写真を偶然見つけちゃって・・・。」
ぎゅっと大ちゃんにしがみついて、後から後からこぼれてくる涙をTシャツで拭く。
「・・・・そんなの、あったんだ。」
「・・・うん・・・。」
戸惑ったような大ちゃんの声。
「・・・忘れられなくて、捨てれなかったんじゃ、ないの?」
「・・・なんか、写真って捨てるのが抵抗あって、今まで捨ててないかも。・・・でも、忘れられないとかそういう深い意味はないぞ?」
ためらいがちに背中に腕を回して、そっと撫でてくれる。
「・・・でも、ごめんな。まおに辛い思いさせて。」
「・・・ううん。でもすっごく可愛い感じの女の子だったから、お似合いだな~。とかって落ち込んじゃった。」
「・・・でも、その彼女より、お前を選んだ。ってことだから、それでいいだろ?今は、まおのことが一番好きだし、ずっと一緒にいたいと思ってるぞ?」
「うん。そうだね。」
最初からわかってるけど。
やっぱりこうやって言葉にしてもらえると、心に響く。
しばらく無言で抱きしめてくれていた大ちゃんが、思いをめぐらすように紡いだ一言は。
「・・・ところで、まお。その彼女の写真って・・・・誰だろ?」
「覚えてないのーっ!!!」
「いや。覚えてないというか、どの子かな?と思って・・・。」
ちょ。どういうことーっ!!!
あの写真の子以外にも、過去の彼女さんがいるってことっ!?
「大ちゃん・・・。」
「はい・・・。」
ひくーい声で睨みつけると、素直に返事する大ちゃん。
そうだよね。もう、わかってるよね??
「まだ、他にも写真があるんだよね?」
「・・・・多分・・・。」
「じゃあ、今から本棚ぜーんぶ整理して、一枚残らず捨ててっ!!」
「わかった。今日中には無理だろうけど、今度の休みにはちゃんと整理しとく。」
「約束だからねっ。」
一枚ぐらいなら、許してあげようかな?と思ってけど、やっぱりやめた。
「ほらっ。これ、その写真。これもちゃんと捨ててね。」
クッションの下から、例の写真を取り出して、大ちゃんに渡す。
「はいっ!!はさみで、ちゃんと切ってね。個人情報だから。」
「あ~~。あの時の・・・。懐かしいなあ。」
「やっぱ、おれが捨ててあげるっ!!」
大ちゃんに手渡した写真を奪いかえす。
本当は、自分の手で思い出を整理してほしかったんだけど。
うーん・・・。でも、知らない人の写真を切り刻むのって、やっぱりなんだか勇気がいるなあ・・・。
「やっぱり、自分で処理して。大ちゃん。」
「わかってるよ。今後、気をつけるから。機嫌直して。な?」
子どもをあやすように、頭をよしよし。と撫でられて、許してしまうなんて癪だなあ。なんて思いながらも、やっぱり惚れた弱みってやつで。
「・・・じゃあ、キス100回で許してあげる。」
「・・・それって、俺が得してないか?」
ぎゅ。とびしょびしょになった大ちゃんのTシャツを握り締めて、とん。と胸を叩く。
精一杯の怒ってるんだからね。という意思表示。
「・・・100回以上でもいいか?まお。」
「ん・・・。」
そう言われたときには、大ちゃんのくちびるにふさがれて返事ができなかった。
-------------------------------------------------
まあ、一度はこういうことってありますよね^^
どんなカップルでも^^
床に落ちたその写真を拾い上げる。
「・・・だれだろ?これ。」
ピンクの桜の花びらの下で、ふんわりと可愛い感じの女の子が大ちゃんと並んで嬉しそうにピースしている。
・・・これ、二人で行ったことのある公園だ・・・・。
もしかして、昔の彼女とか・・・??
大ちゃんに彼女がいたことぐらいは知っている。
出逢ったのが、大ちゃんが25歳のときだったんだから、過去がないほうがおかしいと思う。
でも、おれが気がつかないように、昔の話をするときは慎重に言葉を選んでくれる大ちゃん。
ちょっとしたことですぐに落ち込んでしまうおれの気持ちをわかってくれて、
もしかして、昔誰かときたことがあるのかな~?って思ってしまうときでも、さりげなく話題を変えてそれ以上考えなくていいようにしてくれる。
追求したい気持ちがないことはないんだけど。
もう、別れている彼女さんに嫉妬しても仕方がない。
それも、頭ではよくわかっているから。
「・・・でも、こうやって、はっきり映像になって残ってるとやっぱ落ち込むなあ。」
二人の思い出の場所だと思っていた場所に他の人が映っている。
なんだか、過去の話なのに、大ちゃんを取られた気分になる。
大ちゃんのお気に入りの場所なのだから、大切な人を連れて行きたい。と思うのは当然のことなんだろうけど。
・・・やっぱり、ざわざわするよなあ・・・。
毎日「まおは可愛い。綺麗。努力家だし、素直だし、天然でかまいたくなる。」
そういい続けてくれるお陰で、愛されている自信はあるんだけど。
それでも、やっぱりこういうふんわりしたいかにも女の子らしい子を見ると、逆立ちしたって勝てっこない。と思ってしまう。
「大ちゃんって、こういうタイプの子が好きだったんだ・・・。」
目はちょっとおれのほうが大きいかな?
髪の毛だって、お手入れすれば負けてないかも。
スタイルだって、顔はちっちゃい。ってみんなに言われる。
・・・でも、やっぱり可愛いよなあ・・・・。
筋張っていない可愛さ。というのか。
外見だけのイメージだけど、控えめで、庇護欲をかきたてそうな・・・。
・・・・あ。駄目だ。落ち込んできた・・・。
「比べたって、仕方がないだろ?」
今、大ちゃんの隣にいるのは自分なのだから。
女の子にはわからないような、同性で同じ仕事をしているからこそわかる悩みや背負っているものの重さとか。
そんなものを理解して、共有して、少しでも癒しとなる居場所になってあげたい。
「わかってるけど・・・。なかなか、気持ちはそう単純には割り切れないよなあ・・・。
・・・ってゆーか、大ちゃんもいつまでも彼女の写真を持ってるって、まだ少しは好きだったりするのかなあ。」
そうだよ。
別れるって言ったって、自分からふったとは限らないじゃないか。
もしかしたら、ふられて今でも完全には忘れれずにいるのかもしれない。
気持ちが冷めたんじゃなくて、何か事情があって別れることになったのかもしれない。
「ただいまあ。」
何も知らない大ちゃんの呑気な「ただいまあ。」が聞こえてくる。
-----もうそんな時間だったんだ。
気がつけば、写真をじーっと見詰めたまま、涙がぽろぽろと零れ落ちていた。
「・・・まお?どうしたんだ?」
大ちゃんがこっちに歩いてきて、写真をクッションの下に押し込む。
「ううんっ。何でもない。」
慌てて、涙を掌でこすって、ふるふると首を振る。
・・・・だって、大ちゃんは何にも悪くないんだから。
自分に言い聞かせるけれど、口を開いたら
「この彼女さんと、自分とどっちが好き?どうして写真をまだ持ってるの??」とかって、大ちゃんのことを責めてしまいそうで。
なのに、大ちゃんの掌が優しく頭を撫でてくれて
「何でもない。って顔してないぞ?」って瞳を覗き込んでくるものだから。
胸が熱くなってきて、我慢していた涙が、また溢れてきてしまう。
・・・反則だよ。大ちゃん。
このあったかい掌に弱いのだ。
ぽんぽん。と撫でられて、「大丈夫か?」と言われると心にわだかまっていたものがとろとろに溶けてしまうのだ。
一所懸命に我慢していたものを、吐き出しても許されるような気分になる。
「ごめんねえ・・・。大ちゃん。おれが勝手に落ち込んでるだけなんだけど。昔の?彼女さんの写真を偶然見つけちゃって・・・。」
ぎゅっと大ちゃんにしがみついて、後から後からこぼれてくる涙をTシャツで拭く。
「・・・・そんなの、あったんだ。」
「・・・うん・・・。」
戸惑ったような大ちゃんの声。
「・・・忘れられなくて、捨てれなかったんじゃ、ないの?」
「・・・なんか、写真って捨てるのが抵抗あって、今まで捨ててないかも。・・・でも、忘れられないとかそういう深い意味はないぞ?」
ためらいがちに背中に腕を回して、そっと撫でてくれる。
「・・・でも、ごめんな。まおに辛い思いさせて。」
「・・・ううん。でもすっごく可愛い感じの女の子だったから、お似合いだな~。とかって落ち込んじゃった。」
「・・・でも、その彼女より、お前を選んだ。ってことだから、それでいいだろ?今は、まおのことが一番好きだし、ずっと一緒にいたいと思ってるぞ?」
「うん。そうだね。」
最初からわかってるけど。
やっぱりこうやって言葉にしてもらえると、心に響く。
しばらく無言で抱きしめてくれていた大ちゃんが、思いをめぐらすように紡いだ一言は。
「・・・ところで、まお。その彼女の写真って・・・・誰だろ?」
「覚えてないのーっ!!!」
「いや。覚えてないというか、どの子かな?と思って・・・。」
ちょ。どういうことーっ!!!
あの写真の子以外にも、過去の彼女さんがいるってことっ!?
「大ちゃん・・・。」
「はい・・・。」
ひくーい声で睨みつけると、素直に返事する大ちゃん。
そうだよね。もう、わかってるよね??
「まだ、他にも写真があるんだよね?」
「・・・・多分・・・。」
「じゃあ、今から本棚ぜーんぶ整理して、一枚残らず捨ててっ!!」
「わかった。今日中には無理だろうけど、今度の休みにはちゃんと整理しとく。」
「約束だからねっ。」
一枚ぐらいなら、許してあげようかな?と思ってけど、やっぱりやめた。
「ほらっ。これ、その写真。これもちゃんと捨ててね。」
クッションの下から、例の写真を取り出して、大ちゃんに渡す。
「はいっ!!はさみで、ちゃんと切ってね。個人情報だから。」
「あ~~。あの時の・・・。懐かしいなあ。」
「やっぱ、おれが捨ててあげるっ!!」
大ちゃんに手渡した写真を奪いかえす。
本当は、自分の手で思い出を整理してほしかったんだけど。
うーん・・・。でも、知らない人の写真を切り刻むのって、やっぱりなんだか勇気がいるなあ・・・。
「やっぱり、自分で処理して。大ちゃん。」
「わかってるよ。今後、気をつけるから。機嫌直して。な?」
子どもをあやすように、頭をよしよし。と撫でられて、許してしまうなんて癪だなあ。なんて思いながらも、やっぱり惚れた弱みってやつで。
「・・・じゃあ、キス100回で許してあげる。」
「・・・それって、俺が得してないか?」
ぎゅ。とびしょびしょになった大ちゃんのTシャツを握り締めて、とん。と胸を叩く。
精一杯の怒ってるんだからね。という意思表示。
「・・・100回以上でもいいか?まお。」
「ん・・・。」
そう言われたときには、大ちゃんのくちびるにふさがれて返事ができなかった。
-------------------------------------------------
まあ、一度はこういうことってありますよね^^
どんなカップルでも^^