「ああっ。もうっ!!」

ふんわり。としたくちびるを感じるはずが、ごわごわした不織布の感触に邪魔される。

おかえりい。と大ちゃんを抱きしめて、キスをしようとすると、マスクしたままだったことを忘れていた。
ちゅ。ちゅ。とマスクをずらして、キスを重ねると、今度は眼鏡がぶつかりあう。

「花粉症なんか、嫌いだ~~!!」

思わず叫んでしまう。

本当は、穏やかな気候で、お花も咲き乱れて、とおっても素敵な季節のはずなのに。
愛し合う恋人達にとっては、天敵の季節だ。

インフルエンザ対策でのマスクをやっと手放せる様になったかと思えば、ぐじぐじ鼻が鳴ってしまうから、マスクはやっぱり必須アイテムで。

いつでも、どこでも、その気分になったときにキスをしたいのに、マスクに邪魔されるわ。
目が充血するからコンタクトができなくて、眼鏡にしていたらキスするたびにずりっとずれるわ。

まあ、今年は軽いほうなんだろうけど。

側にいるのに、一枚ベールでさえぎられたようなもどかしさを感じる。


「ほら。まお。五月晴れ。って言うだろ?綺麗な青空だよな~~。」
「わあ。ほんとだね~~。」

ソファに座っていた大ちゃんに声を掛けられて、スマホの画面を覗きこむ。
大嫌いな季節だけど、こうやって大ちゃんと青空を眺めている時間だけは、大好きな季節だと思える。

「こっちおいで?まお。」
「うん。」

大ちゃんがソファに寝そべって、身体をずらしておれの入るスペースをくれる。
狭いスペースで抱き合って、ぴっとりとくっつきあって。

トクン。トクン。と大ちゃんの胸の鼓動を感じる。

大ちゃんの掌が、シャツの裾から滑り込んでくるけれど、ひやり。とした冷たさは感じない。
冬の間は、冷気と、大ちゃんの掌の温かさが対照的で、思わず身をすくめたのに。

「ん・・・。」

とろとろとまどろんでしまうような愛撫。

大胆に洋服をはだけられて、ちゅ。ちゅ。と胸の上にキスを落とされても、
大ちゃんの髪の毛がさわさわと素肌に触れるのが心地よいばかりで。

「ん・・・。きもち・・・いい・・・。」

一面のふかふかのシロツメクサのグリーンの絨毯に埋もれて。
そよそよとさわやかな風に吹かれる。

ふわ。ふわ。と触れてゆくのは、ひらひらと舞うモンシロチョウ。

あー・・・。やっぱ、春って好きかも・・・・。



「おーいっ!!まお、寝るな~~!!!」

ゆさゆさと揺さぶられて、あまりにも心地よい愛撫にうとうととしてしまっていたことに気がつく。

「あ・・・。ごめんね。大ちゃん。あんまりにも気持ちよくて。」
「まお・・・。それ、オトコとしてちょっと傷つくわ・・・。」

「えっ。そんなことないよ~~。本当に気持ちよかったんだからっ。」
「・・・違う意味で・・だろ?」

心なしか落ち込んでいる大ちゃん。

「だって、大ちゃんの掌に触れられてると安心するんだもの~~。」
「そうやって、俺との夜の生活が冷めてゆくんだろうな~~。」

わざとらしく、拗ねる大ちゃん。

「違うよ~~。ドキドキするだけの恋じゃなくて、安心できる居場所ってゆーの?愛のほうが勝つ日もあるんだよ。」
「まおの、居場所?」

「うん。おれの居場所。」

大ちゃんの腕を背中に回して、胸の中に鼻先をこすりつける。

ぎゅっと腰に回した腕は、抱えきれないぐらいに逞しい抱き心地で。



「うん。やっぱり、安心する。ずっと、ずっとここにいさせてね。大ちゃん。」



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あー・・・。眠い・・・。
今年は花粉の飛散率が高い。って言っていた気がするんだけど、結構平気。
5月の初めは、なんだか鼻水が止まらなかったけど~~WW