母さん?今度会わせたい人がいるから、一緒にそっち行くわ。」
「・・・なあに?急に改まって。もしかして、恋人~~?」

うきうきと弾んだ声の母。
もしかして、うすうす感じているかもしれないけれど、電話でまおと付き合ってます。というのは、なんだか軽い気がして告白できなかった。

「んー・・・。母さんも知ってると思うけど。俳優仲間の浜尾京介。」

恋人?という質問には答えずに、でも伝えたいことは伝えておく。
恋人だと思っていて、急にまおが来たらびっくりしてどんな反応を示すかわからないから。

「ちょっとーーー!!お姉ちゃん。ダイスケがまお君連れてくるんだってっ!!」

うっそーー!!やーん。嬉しいっ!!夢見たい~~。
などと言う声が後ろのほうで聞こえてくる。

・・・ねえちゃん、いたのかよ。

「ねねね。いつ?お母さん緊張するわあ~。あんな綺麗な子が来られたら。
まお君、何が好きなの??若者ってやっぱりから揚げにハンバーグとかかしらねえ?
あっ!!もちろん泊まって行くんでしょ??」

すっかりまおと会える。ということに舞いあがってしまって、恋人どうこうのくだりは忘れてるな・・・。

まあ、いいか。

今まで彼女を実家に連れて帰ったり、というとろこまで深い関係になったことがないから、イマイチ家族がどういう反応を示すのかがわからない。

もちろん、高校生のときに家に来たことぐらいはあるけど、それと今では全然意味合いが違うもんなあ・・・・。

「じゃあ、今度の週末に。まおは意外と和食とか魚とか好きだから、そんなにがっつり肉肉してなくてもいいよ。いつもどおりで・・・。」

まあ、いつもどおり、というのが一番難しいのは百も承知だけれど。
俳優仲間の綺麗な顔立ちを見慣れているはずの俺でさえ、2年付き合っても、未だにまおの顔をみるとときめいてしまうのだから・・・。

きっと、あの純粋無垢な透明感のある瞳でじっとみつめられるせいだろうな。



電話を切ると同時に、後ろで息を詰めていたまおが、はーーっ!!と大きなため息をつく。

「ああっ!!緊張したーー!!行ってもいいって?」
「むしろ、感激してたぞ。まおファンだからなあ。うちの母親。ねえちゃんもいたのがやっかいだけど。」

「・・・どうして??」
「ねえちゃんも、お前のこと好きだから。」

まおが、ぷぷぷっ。と噴きだす。
とおっても嬉しそうに。

「えっ!もしかして、やきもち妬いてるの??」
「・・・・ちげーよ。さすがにねえちゃんに取られるとかは思わないし。」

まあ、反対に「いいだろ~~?」と自慢したくはあるが。
ねえちゃんは、ねえちゃんで旦那さんとラブラブなのだから、まおのファンと言っても、どうのこうのなる心配はない。

・・・ただ。

「お前、女二人が揃ってみろ。最強だぞ?」
「・・・何が最強なの??」

「行ってみれば、わかるよ。」



「ただいまー・・・。」

久しぶりの実家のドアを開ける。

「おかえりなさい。ダイスケ。ねねねっ。まお君は??」
「息子の顔より、そっちかよ。」

「あら。ちゃんとおかえりなさい。って言ったじゃない。」
「後ろにいるけど。」

緊張して、俺のシャツのすそをぎゅうっと握り締めているのがわかる。

「あっ。こんにちわ。はじめまして。浜尾京介です。」

ひょこっと、俺の影からでてきて挨拶するまお。
緊張してても、やっぱこの業界で長いことやってきてるだけあって、初対面の人とすらすらっ。と挨拶できるとことかはさすがだよな。

「わあ。かわいいっ!!」
「えっ。なになに~~?ダイスケ帰ってきたの~?」

気配を察して、奥からねーちゃんが出てくる。

「おきゃくさん??わーっ!!すっごくかっこいいねっ。だれ?だれ?」

ねーちゃんが出てくるともれなくついてくる姪っ子たち。

「大ちゃんのお友達だって。」
「そーなんだーっ!!大ちゃんもかっこいいけど、お兄ちゃんもカッコイイねっ!!」

「まあ。まあ。ひとまずあがって?」

あっと言う間にみんなに囲まれてしまったまおを、母さんがリビングに連れて行く。

「いつもダイスケの面倒みてくれて、ありがとうね~~。」
「ダイスケはちゃんと、東京でごはん食べてる?」
「どうしたら、そんなに顔がちっちゃくなるの~~?」
「ほんと、お肌も綺麗だよねーっ!!」
「ダイスケとお揃いの香水使ってるってほんと?」
「ねーねー!!お兄ちゃん何年生?」

などなど・・・。

いや。それ、俺に直接聞いたらいいんじゃ・・・。ってことまで、まおを取り囲んで質問攻めにしている。


せっかくまおと実家に帰ってきたのに。

やっぱり、二人でしっとり・・・。は、無理だったな。



なかば呆れ気味に少し離れたソファに腰をおろす。

しばらくまおは返してもらえそうにないからな。

まおは、多少困惑気味ながらも、姪っ子に手を握られて、嬉しそうにしているし、
徐々に楽しそうにうちとけてきているので、暫くまかせておこう。

ここで口を挟んでも、どうせ俺の話なんて、聞かないだろうし。


一人でコーヒーを入れてきて、ふたたびソファに腰を下ろすと、父さんが隣にやってくる。


「・・・どう思う?あれ。せっかく息子が久しぶりに帰ってきたのにさぁ・・・。」

「同じ遺伝子だからな。好みが一緒なんだろ。」

あ。そっか。
そりゃあ、母さんも、ねーちゃんも姪っ子たちも、まおのこと好きでも仕方ねーわ・・・。

すとん。と納得しかけて・・・。


「・・・え?」

「だから、お前の好みと一緒だってこと。」


ちょっと、待て。なんだか今さらっと凄いこと言いませんでしたか??


「まあ。俺としては、味方が増えた気分で嬉しいけどな。」


みんなにもみくちゃにされているまおを、ほほえましく見守っている父さん。


「もしかして・・・。俺たちのこと、わかってる?」

「・・・家にわざわざ連れてくる、っていうのはそういうことだろ?お前、他の俳優友達連れて来たことないし。
まお君と一緒にいるときは、すごく楽しそうだし。」

何も言わなくても、理解してくれている父親って、やっぱり偉大ですごいなあ。と胸が熱くなる。

「・・・なんて言ったらいいかわかんないけど・・・。ごめんなさい。ありがとう。」

本来ならば、偏見の目を持って、勘当されても仕方がない。と覚悟を決めていた。
いくら、共演する事が多くて、大まお。と呼ばれるぐらい仲がよくても、仕事とプライベートは別だと思われてるだろう、と思っていたから。

「でも、うちにいる限りは、まお君のこと離してくれそうにないぞ?あの二人。」
「・・・そうだよなあ・・・。ところで、みんなは知ってるのかな?俺たちのこと。」

「さあ。どうだろうな。」


姪っ子ちゃんがいるので、今はさすがに話できないが・・・。


きちんと、身内に紹介しておきたいから、わざわざ一緒に帰ってきたのだ。


「ままあ。うんちーっ!」

姪っこちゃんが、ナイスタイミングで、急に声をあげる。

「あらら。ごめんなさい。まお君。ちょっと席外すわねーっ!!」

わが子を抱えて、トイレにダッシュする姉。


一瞬、ふっ。とみんながそちらを向いて、会話が途切れる。

「・・・あのさあ。実は、俺、2年前からまおと付き合ってるんだけど・・・。」

大きな瞳を見開いて、俺をじーっと見詰めているまお。
わかってる。
大丈夫だよ。
みんなお前のことは大好きだから、俺を責めてもまおのことは攻撃しないから。

ドキドキドキドキ・・・・・。

なんだか、言うなら今っ!!という勢いで、カミングアウトしてしまったから、心の準備ができてなかった。

言ってしまってから、急に緊張してくる。


「やっぱりっ!!最近大輔の浮いた噂を聞かないなあ~。って思ってたのよね。まお君と一緒のときって、すっごくデレデレしちゃってるしっ!!」

そこに、わが子をトイレに座らせてきたねえちゃんが帰ってきて。

「ねーねーっ!!やっぱり、大輔って、まお君と付き合ってたんだって~~?」
「そうなんだあっ!!羨ましいっ!!こんなビジンな恋人がいてっ!!」

「ねねね。なんで大輔のこと、好きになったのー?」
「どこが好きなの?ほんと、図体ばっかりおっきくて、中身は子どもでしょ~?」

なんて、またまたまおを取り囲んでいる。

・・・ちょっと、待てっ!!

あんまりベラベラなんでもしゃべるなよ。


「初キスはいつ~?あっ。撮影のときか。」
「おとーさんいるところでは、まずくない?この話題。」

ありがとう。ねーちゃん。
そこで留まってくれて・・。

さすがもまおも、かあぁ。と頬を染めてうつむいてしまっている。


そこから、やっとまおを解放してくれて、すっかりみんなの荷物置きになってしまっている自室に戻る。


「・・ごめんな。まお。びっくりしただろ?」
「ううん。気さくに話かけてくれて、嬉しかったよ。・・・最強の意味もわかったし(笑)」

ぽすん。とベッドに並んで腰掛ける。

「・・・でも、よかったあ。みんなあったかい人で。ほんと、ここに来るまでドキドキだったからねえ。」
「ほんと、お前は誰にでも愛されるよな。」

まおを抱き寄せて、腕の中に閉じ込める。

誰にでも愛されるまお。
それでも、俺と一緒にいることを選んでくれた。

「そんなことないよ?不器用なおれを、大ちゃんがいつも守ってくれるからだよ。」

とん。と頭を俺の胸にあずけてくる。
きゅ。と背中に腕をまわして、抱きついてくるまお。

トクン。トクン。と鼓動の音が重なりあう。


「俺、今、すっげー幸せ。」
「うん。おれも・・・。」


今まで自分を育ててくれた家族には感謝してもしきれない。

でも、自分の意思で選んだ新しい家族。というものを持ちたい。と30歳を超えた頃から思うようになった。

今まで何人かの女の子と付き合ってきても長続きしなかったけれど。

まおとならば、自然体でいることができる。

いつも尊敬キラキラっ!!って瞳でみつめてくれるのに、つまらない嫉妬をしても
「面倒臭いなあ。大ちゃん。・・・ま、そんなところも好きなんだけどね。」なんて許してくれる。

根っこの部分で価値観が似ているからだろうか?

ケンカをしたとしても、じっくり話し合えば、最後は必ず理解しあえる。


住んでいる場所こそ賃貸だけれど・・・・。


「ただいまあ。」とドアを開ければ、そこには自分の帰るべき居場所がある。

実家を出てから、初めて感じたホーム感。


「改めて、これからもよろしくな。まお。」
「ふふふっ。こちらこそ、末永くお願いします。」

腰を抱き合いながら、額をこつん。とくっつけあう。


・・・・あ。デジャブ。


俺たちのスタートラインになった「あの晴れた青空」のパッケージになった写真。


これからは、家族としてのスタートライン。だな。


幸せすぎて、くすぐったいような照れを伴う感情ごと、まおをしっかりと腕の中に抱きしめた。


ずっと、ずっと俺の側で笑っていてくれな。


まお。




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予想外に長くなってしまいましたWW

これは、今回リクエスト分じゃなくて、以前に大ちゃんがまお君の家に遊びに行ったお話を書いたときに、まお君が大ちゃんの家にいったら?ってゆーので、途中まで書いてたのに、PC不調のため、下書き保存ができてなかったお話~~WW

なんだか、どんな話だったか思いだせなくって、全然違うお話になってしまったけどWW
ほんわかバージョンです^^

真剣に書いたら、実際にはもっと色々あるだろうけどね(笑)