「たっだい・・・まああっ!!!」

リビングに入ると同時に、思わず大ちゃんの目を両手で目隠ししてしまった。

・・・なんで、こんなの見てるんだよ。
ちゃんと、見つからないように、わざわざ他のDVDの後ろに隠してたのに。

「なんだ?まお。帰ってくるなり。」

はっ。いけない。これじゃあ、いかにも隠してました。って自らばらしているようなものじゃん。

「えっと・・・。だーれだっ!?」

慌てて、ちょっと声色を変えて、ふざけてみる。
内心は、バクバクなんだけど。

「まおしか、いないっしょ?ってゆーか、さっきまお。って言ったけど。」
「ばれたかあ~~。」

大ちゃんが呆れながら、おれの指先を握る。

「こんなあったけー季節に、冷たい指先してるのお前ぐらいなもんだよ。」

ふふふっ。と笑いながら、ちゅ。と手の甲にキスをくれる。
そのくちびるの感触が、やわらかくって、あったかくって、甘えたくなるんだけど・・・。

今はそれどころじゃ、ない。
早く、あのDVDをどうにかしなくっちゃ・・・。

チラチラと画面を横目で見ながら、うるうるっと最大限誘いをこめて、見上げる。
大ちゃんの両手まで握り締める。というサービスつきで。

「あのさっ。大ちゃん今日は暑かったでしょ?お風呂入りたくない?」
「んー・・・。先にごはんかな。まだ、DVD途中だしさ。」

ああっ!!だから、そのDVDを見させないために誘ってるのに~~!!
なんで、今日に限って、エロエロ全開大ちゃんじゃないんだよおおっWW

「ほら。今、公開されてんだろ?まおの『くじらのいた夏。』今日、たまたま本棚の整理してたら、奥のほうに入り込んじゃっててさあ。やっと仕事がひと段落したから、見てたとこ。」
「でも、ほら。メイキングだしさ?あんまり、見ても面白くないよ?」

アセアセ。といい訳をする。
ああっ。早くしないと、問題のシーンに突入してしまううううう。

「そんなことないぞ?まおのオフショットな感じ満載で、こうやってみんなと仕事してんだあ。って見ていて興味あるし。俺との仕事って、最後のほう、あんまりなかったもんな。」

じっ。と楽しそうに画面に魅入る大ちゃん。

まあ、多分なんとなくは知っているだろうけど。
あの、ギズモのきわきわパンツ姿だけは、見られたくないっ!!ってゆーか、絶対大ちゃん怒るよねっWW

「これ、夏の撮影だったんだよなあ。懐かしいなあ。遠距離恋愛。一週間ぐらい、離れてたもんな。」
「あ。うん・・。そうだね。」

あの頃を思い出して、ちょっと胸が切なくなる。

「こうやって、みんなと楽しそうに撮影しているまおを見ると、なんかフクザツな気分になるよ。」
「あはっ。このときは、ほんとみんなずーっと一緒で、合宿みたいな感じだったからねえ。」

話題をそらそうとしているのに、どんどん核心に迫っていってしまう。

そうこうしていうちに、画面は問題の海辺でのシーンになる。


「ああああっ!!」

思わず、画面を両手でばっと隠す。

「なに?まお。そんなに慌てて。何かやばいシーンでもあるの?もしかして、キスシーンとか??」
「あっ。いやっ。そんなんじゃ、ないけどっ。」

「こらっ。見せなさい。」
「やだっ。だって、大ちゃん怒るもん。」

大ちゃんが、ぐいぐいっとおれを押しのけようとする。

「怒るわけ、ないだろ~~?だって、仕事だろ?キスシーンだって、ベッドシーンだって、どーんと受け止めてやるよ。」
「いやっ。確かにギズモは性病もちの役だったけどっ。そんなシーンはワン・シーンもないからっ!!」

「じゃあ、なんで隠すんだよ~~。余計に妖しいぞっ!!」

こちょこちょ~~っ。と脇腹をくすぐられ、あっけなく陥落するおれ。


「まお・・・。自分で選んだ衣装って、もしかしてこのパンツ?」
「う・・・。だから、大ちゃんに見られるの嫌だったんだよ~~。ギズモ的には、白のブリーフかな?って思ったんだけど、これでも控えめにしたんだからねっ。」

「・・・まあ、くっきり、はっきりと・・・。」
「そんな、まじまじみないでよっ。恥ずかしい・・・。」

「ってゆーか、お前、奥様ごっこしている暇あれば、前隠せよなっ!!なんで、こんなに開放的なんだよっ。」
「え?だって、暑かったし、眠かったんだもん・・・。そこまで頭、回らなかった・・・。」

「これだから、まおは・・。」
なーんて、ブツブツ文句を言っている大ちゃん。

「ほら。やっぱり怒ってるじゃん。怒らないって約束したのに。」
「約束なんて、してないぞ?」

「あーっ!!嘘ついた。イケナイオトナなんだあ。」
「嘘なんて、ついてないだろっ!?」


言い争って?いるうちに、いつの間にやら床に押し倒されていて。

「撮影だけならまだしも、休憩中にまで裸体を晒したのは、倍返しだからな。」

笑いを含みながらも、すとん。と突き刺さるように見下ろす視線は本気で。
おれを床に縫い付けている腕の力は本物で。

「大ちゃん・・・?」

「覚悟しとけよ?倍返しだからな。」