まおが引っ越してくることになった。

今までだって、同棲生活に近かったけれど、これを機に、本格的に片付けよう。

そう意気込んで、本棚の裏やら、ベッドの下など、普段は掃除しないところまで隅々まで掃除する。


ベッドの下から、懐かしいものを発見する。

「おおっ。そういえば、こんなのもらったなあ・・。」

ぽんっ。とひとまずベッドの上に放り投げておいて、奥のほうにたまっている誇りをクイックルワイパーで掻きだす。

ほこりまみれになっているところへ、ピンポーン。と軽快なチャイムの音がする。

「おうっ。入っていいぞ。まお。」

玄関まで迎えに行って抱きしめたいところだけど、あいにくと今日は全身誇りまみれだ。
なので、顔だけ向けて、返事をする。


「・・・どうしたの?大ちゃん。こんな時期に大掃除?」
「ああ。お前の荷物入れる前に、整理しとかないとな。ごっちゃになるだろ?」

整理するために、一旦棚から全部だしたものが散乱して、とっちらかっている部屋をまおが何気なく眺める。


「・・・大ちゃん。これ・・・。」

まおが手に持っているものを見て、まおの不機嫌そうな顔を見て、しまった!!と凍りつく。

「ああっ。それは、学生時代にダチが飽きたからってもらって・・・。」
「ふーん・・・。そんな昔のヤツを、大事に置いておく位好きなんだあ。」

ちくちく。と言葉にとげを含ませながら、ベッドにどさっ。と座る。

「・・・いや。好きというか、単に忘れてただけ・・・。」
「ワタナベの大すけべえ。」

ぼそり。とつぶやいたまおの目は、完全に怒っている。
まおが投げてきたものをひょい。と避けると、こんっ。と小気味いい音を立てて、壁にぶつかって落ちる。

「おまっ。あぶないだろ~~!!」
「あぶないことをさせてるのは、誰だよっ!!」

ぷんすか。と拗ねてしまったまおが、荷物だからけのベッドにゴソゴソともぐりこんで背中を向ける。

「ほんと、実はもらったものの、一回も見てねーって。」
「・・・・。」

「なんなら、今から一緒に見る?」
「・・・興味ない。」

拗ねている背中が、少しだけ揺れる。
まさか、泣くほど傷つけるとは思いもしなかった。

「ちゃんと、お前と付き合う前に処分してたらよかったな。ごめんな。まお。」

布団ごと、ぎゅっと抱きしめて頬にキスを落とす。

ますますまあるくなって、顔を隠すまお。

「・・・いい。浮気じゃないもん。」

ぼそり。とつぶやく背中が明らかに強がりだと主張している。


「ほら。ソッコーゴミ箱行きだから。心もカラダも、全部丸ごとお前のものだからさ。」
「うん・・・。わかってる。」

自分の感情を整理するように、沈黙したままじっとしている。

そう。理解していても、許せないことってあるもんな。


まおの機嫌が直って、途中だった片づけを一緒にして。

食事を摂って、風呂に入って。


ベッドに入ったときに、ふと、先ほど捨てたDVDが目に入った。
まあ、平たく言うと、男の生理的欲求を満たすDVDだ。

「・・・なあ。まお。やっぱ、一回も見ないのってもったいなくねー?」
「だって、今まで忘れてたんでしょ?」

「だって、まおがいたから、必要なかったし。」
「んー・・・。実は見たことないんだよね。ああいうDVD。」

「へえ。珍しいな。社会勉強に一回見るか?」
「ちょっとだけね。」

法律に触れたり、害になるものではなければ、経験は多いほうがいい。
そんな、もっともらしく聞こえるような説明をして、ディスクをセットする。


「・・・・ちょっと、無理かも・・・。」
「俺も、萎えるわ・・・・。」

開始10分にして、お互いに画面から視線をそらしてしまう。

「やっぱ、目の前にこんな美人な恋人がいたら、ダメだなあ。」
「目の前にいなかったら、いいのっ!?」

おおー・・・。いつもは天然なのに、こういうところは鋭いんだな。浜尾さん。

「いや。そういう意味じゃなくて。」
「じゃあ、どういう意味だよっ。」

なんだか、今日のまおは攻撃的だ。
・・・まあ、俺が悪いんだけれど。

「こんなに綺麗で、俺のことを想ってくれる恋人がいたら、どんな人間が視界に入っても心が動かない。ってこと。」
「大ちゃん・・・。」

うる。とまおの瞳が揺れる。


「愛してるよ。まお。」
「ん・・・。おれも。」

甘いキスを交わす。


色々と出会う前にあった過去はあるけれど、今はまおといるのが一番幸せ。

ヒトツ、ヒトツ、新しいピースを埋め込んで、ゆがんでしまったパズルを組み立てよう。


二人の未来のために。



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うーん・・・。最後、バタバタっと終ってしまいましたが。
ちょっと、お笑い路線でいくのか、胸きゅん路線でいくのか、固まりきらないまま最後まで書いてしまいましたWW
なんだか中途半端でごめんなさいWW