「あっ。」

向かい合って朝食を摂っていると、大ちゃんが短く叫ぶ。

「なあに?突然。」

ボウルに盛り付けたサラダを取り分けようとしただけだけど。
もしかして、プチトマト全部欲しかった??

「家出る前に、着替えて行けよ。まお。」
「・・・えっ?ケチャップこぼしてた?」

今日は、オムレツにしたのだ。
ついつい遊び心が過ぎて、ケチャップをたっぷり掛けすぎたもんなあ。

Tシャツチェックをするけど、別に汚れてなどいない。

「・・・コーディネイトが変?これ、お気に入りなんけどなぁ。」
「いやいや。まおのスリムな体にとってもよく似合ってる。似合ってるけれども・・・。」

くい。と襟ぐりを人差し指で引っ掛けられる。

「かがんだら、乳首見えるから、ダメ。」
「・・・ぶっ。そんな理由?」

またまた~~。過保護なんだからっ。

「鎖骨が半分以上見える襟ぐり禁止なっ。真っ直ぐ前向いてたらわかんないけど、かがんだらやばいから。」
「誰も男の胸なんて覗き込まないよ。」

「いーやっ。まおは自覚がなさすぎる。」
「大ちゃんが気にしすぎなんだよお。」

だって、ちょっと襟ぐり開いてたほうがお洒落なんだもん。
でも、やきもち妬きの恋人を選んでしまったのは、おれだ。

「はいはい。わかりましたぁ。」
「返事は、一回でよろしい。」

「大ちゃん、おとーさんみたいだよ。」
「おとーさんとか、言うなっ。」

お気に入りTシャツだけど。
・・・これは、デート用だな。

・・・本気のデートはジャケット着てキメたいから、スーパーでお買い物デート用(笑)


「ねねね。じゃあ、今日は帰って来てからこれに着替えるから、お買い物つきあってね。」
「かがんで野菜選ぶの禁止な。」

「・・・どこまで過保護なんだよっ。大ちゃんっ。」
「用心して足りないことはない。ことが大事(おおごと)になってからじゃ遅いだろ?」

「・・・だから、大事にならないって・・・。」

・・・大ちゃんのお父さんな姿を見てみたい。
そう、何度も思ったけれど。

こんなお父さんをフォローするのって、結構しんどそう・・・。

もし、娘なら一生嫁に行けないだろうなあ。

よかった。俺、娘じゃなくて、恋人で(笑)


・・・・なーんて、朝からしょーもないことを考えるのでした。

平和だなあ・・・。