同居、と言ってもたいそうな嫁入りダンスがあるわけでもなく、
身の回りの洋服や、勉強に使う教科書やらを毎日少しずつ運んでくるだけ。

それでも、日々まおの荷物が増えてゆく自分の部屋を見ていると、いよいよ本格的に同居するんだなあ。という実感が芽生えてくる。

まおがいつも家にいて、「おかえり。」と迎え入れてくれる。

それは、このうえない幸せだと思う。
・・・思うけれど、同時に、もし仮に失ったときの喪失感を思えば・・・。

怖くなる。

何度も、俺のことが好きだよ。と言ってくれるまお。

でも、仮にタクミクンの映画がなかったら、今こうやって側にいてくれただろうか?
恋に恋するような年代で、俺と付き合い始めて、よかったのだろうか?

色んな人と付き合ってきて、やっぱり俺がいい。と選んでくれたのではない。
たまたま、芸能界に入って、一番身近な存在だった俺に恋してしまっただけではないだろうか??

今まで、何度もよぎった疑問と不安。

そのたびにまおは「心配性な大ちゃん。」「面倒くさい大ちゃん。」と笑いながら「愛してるよ。」と言ってくれた。


世間から見れば、ただの同居かもしれない。

でも、おれ達にとっては、トクベツな意味を持つ同居、だった。

今までの自分だけの人生を捨て、新しく共に歩んでゆこう。という決意をカタチに表した・・・。


もちろん、結婚したって、離婚しないなんて保証はどこにもない。
神に誓ったところで、あっけなく誓いを破ってしまうこともある。

そう考えれば、今だけを信じて気楽に考えればいいのかもしれない。


・・・だが、一度手に入れてしまった幸せはそう簡単に手放すことはできない。


オトナになって、色んな世界を見て、俺との生活が色あせないだろうか。


まおは、「こんなに人を好きになったのって、初めてだよ。」

ふわ。と花が咲くように笑って、しあわせそうにキスをくれる。

初めてのまま、突き進んでいってしまっていいのか?
色んな選択肢の中から、唯一、と思えるものを選ばなくてもよいのか??

まおの未来を支えてゆくのが、本当に俺でもいいのか?
その価値がある人間なのか・・・・。

考え出すと、止まらなくなる。