「ごめんな。まお。お前を傷つけるよなこと言って・・・。」
「うん。すっごく傷ついた。」

これぐらいは、お返ししてもいいよね。
おれのことを信じていない大ちゃんにささやかな逆襲なんだから。

明らかに、「ううん。いいよ。」って言ってもらって、抱きしめてもらえる。と期待していた?大ちゃんがあたふたとうろたえるのがおかしい。

「・・・まおっ!?」
「いつまでも、こども扱いしないでよね。」

ああ。素直じゃないおれ。
本当は、大ちゃんのことが恋しくて、寂しくて、見つけてもらった瞬間に全てを許していたのに。

「いや。こどもだとは思っていないぞ?まおは、年齢の割りにしっかりしてるし、自分の意思も貫くし、努力家だし、尊敬すらしてる。」
「その、年齢の割りにっていうのがすでにこども扱いでしょ?」

「・・・確かに・・・。」

こどもの頃のまおを知っているから、という意味合いが言葉の端々に感じられる。

・・・もちろん、それだけの年月を共に過ごしてきた、という証拠で、甘く胸をトキメかす要素でもあるのだけれど。

同時に、まだまだ一人前として信用されていないような気分になる。

・・・まあ、実際大ちゃんに比べたらまだまだ子どもなんだから仕方がないんだけど。

「俺が、悪かった。まおの気持ちを無視するような発言をして。」
「・・・うん。そうだね。わかってくれたなら、それでいいよ。」

年上なのに、下手に出て謝ってくれる大ちゃん。
でも、今回に関しては、やっぱり大ちゃんが悪いと思う。

今までだって、何回も

「思い込みじゃない。」
「後悔してない。」
「心から、愛している。」

と、伝えてきたのに。

信じてくれてなかった。ってことだもん。

「一緒に帰ってくれるか?まお。」

大ちゃんが、肩をぐっと抱き寄せてくれる。
意固地になっていた心が、ぐら。と揺れるのがわかる。
・・・でも、口から出るのは、やっぱり素直じゃない言葉だった。

「もう、他のヤツのところに行け。とか言わないならね。」
「ま~お~・・・。だから、悪かったって。」

汗だくになって探してくれた大ちゃんに、こんなに意地悪したって、自分が悪かった。と謝ってくれるのだ。

それでも、一緒に帰ろう。と手を差し伸べてくれるのだ。

・・・もしかしたら、100%信じきらずに、愛情を試しているのは自分のほうかもしれないな・・・。

なんて、頭の片隅で思いながら。

「いいよ。帰ってあげる。」

抱き寄せられた胸に、とん。と頭をあずけて、うなずいた。