ついつい指先が動いてしまう。

<よっ。今日も天気いいし、ドライブでも行かない?>
<わあ。ほんと、あったかいよね>

今までとなんら変わらず、気軽に遊びに誘うように。
まおの返事も、いつもと変わらない素早さと気軽さだった。

・・・気のせいかな・・・?

それでも、ラインの向こうの表情までは見えない。
やっぱり、会って確かめたい。

久しぶりに会ったまおは、やっぱりどこかやつれていた。
・・・まあ、無理もないハードスケジュールだったけれども。

いつだったか、ゴルフの帰りに夕日が沈んでゆくのにすっごく感動していたまおを思い出して、海岸線を走る。
どこまでも続く地平線に、夕焼けの茜色が波に反射して、まぶしい。
まおの横顔も、はしゃいでいるのに、どこか無理をしているような気がする。

「なあ。まお。無理してない?」
「・・・え?何が?」

「自分のことで、手いっぱいなのに、大ちゃんのことまで気を遣ってさあ。
真面目なまおの性格だから、手抜きできなさそう。」
「・・・そんなこと、ないと思う。」


そんなこと、ない。という割には黙ってしまうまお。
・・・やっぱり、一人で色々と抱え込んでるんじゃないか・・・。
まおに一人で背負わすなんて、恋人失格だぞ?大ちゃん。

「ちゃんと、大ちゃんと話せてる?」
「うん。話してるよ?フツーに。」

何でもないことのように返事するまおが、大ちゃんに気を遣っているみたいで痛々しかった。

「でも、僕だったら、そんな寂ししそうな顔はさせないけどな・・・。」

思わず、本音が口をついてでてしまっていた。

熟年夫婦だかなんだか知らないけど、恋人のことをほったらかしにしてこんな表情させるなんて・・・。
僕だったら、何でも知りたいと思う。
一日の最後には、お互いに今日の出来事や、思ったことを全部洗いざらい話しあうと思う。
いくら忙しくったって、ちょっとの時間を惜しんで会いたいと思う。

「・・・え?」
まおが、何か言った??って感じで覗き込んでくる。

「ああ。いや。何でもない。」

まおの口から直接聞いたわけではないのだ。
勝手に決め付けて、心配しているだけなのだ。

・・・ただ、しんどうにしているまおを見ているのが、はがゆいだけで。
僕が口を挟む問題じゃないよな・・・。

そう思いなおしてみたけれど、やっぱり100%信用できなくて。

「・・・しんどくなったら、いつでも連絡しておいでよ?」
「・・・うん・・・。」

車を降りようとするまおの手首をつかんで、そう告げた。