「せっかく免許を取ったんだからっ!!!
大ちゃんは隣で寝ててもいいよ~~。」

と、春の陽気に誘われて意気込んで大ちゃんをドライブに誘ったのだけれど。

「気になって、ゆっくりなんてできないわっ。」
「ええ~~。大丈夫だよお。」

「だって、お前大胆だよ。初心者のくせに。」
「そうかなあ~??」

「また、時間あるときにゆっくり教えてやっから。今日はひとまず目的地まで交代しよ?」
「・・・高速一本道だから、大丈夫だよお。」

「高速だから、怖いんだよ。車線変更のたびに、ヒヤヒヤする。」

せっかくの自分の運転での初デートは、開始10分であっさり却下されてしまい、次のインターで交代することになった。



ふてくされ気味に助手席のシートに沈む。

運転する大ちゃんはカッコイイ。
・・・いや、何しててもカッコイイんだけどさ。

真剣に遠くを見詰める視線とか。
ハンドルに置かれた筋ばった腕とか。
窓枠にかけられた肘が様になってるとか。
時々、窓枠にかけたほうの人差し指を、物思いにふけるように唇で挟む癖とか。

助手席に乗っているおれは、終始ドキドキしっぱなしだ。

何をしていてもカッコイイ大ちゃん。
の中でも、一・二位を争うぐらいの胸キュン具合なのだ。

おれだって、あんなふうになりたい。と憧れると同時に
いつも運転してもらってばっかりだから、たまには助手席でくつろいでもらおう。なんて思ってたのになー・・・。



そんなことを考えながら外の景色を眺めていると、いつの間にか高速を降りて、窓の外には静かな田園風景が広がっていた。

まだ水が張られていない雑草の生い茂る田の緑が、どこまでも広がる。
窓を閉めていても、さわやかな空気が感じられるぐらい澄んだ青空が天高く続く。

その間を流れるように道沿いにどこまでも続く幾本かのライン。

永遠に続くように感じられるそのラインをじーっと視線で追う。



「どこまで続くのかな?これ。」

窓の外を指差すと、大ちゃんが前を向いたまま、「ん?」と相槌を打つ。

「この、電線?電話線?」

・・・考えてみれば、とっても不思議だ。
発電所を出発して、どこまでも、どこまでもこのラインを通って迷いもせずに、きちんと目的の場所に辿りつくのだから。


「なんかさあ。運命の赤い糸、みたいだよね。」

我ながら気障な表現だなあ。と思うけれど、生まれた瞬間から、自分のたどり着く場所めざして、どこまでも旅にでるのだ。

うんと遠くて、見えもしないのに、この細い線の中を目的地にたどり着けると信じて、ずっと、ずうっと走りづつける。


すぐに辿りつけることもあれば、うんと時間がかかることもあるだろう。


おれ達を結んでくれた赤い糸は、短かったのかな?長かったのかな??

きっと、短く、太かったのだろう。


俳優の先輩・後輩として出逢った。
「タクミクンシリーズ」の映画がなければ、お互いに惹かれああっていても、男同士であるが故に、その感情が恋心であることを気がつかないままにすれ違っていたかもしれない。

もう少し出会うのが遅くて、大ちゃんが結婚でもしていたら。
すでに、家庭をもっていたら??

恋心に気がついたとしても、その思いは封印するしかなかっただろう。

奇跡のような偶然だと思っていたけれど・・・。

もしかしたら、最初から太く短い運命の赤い糸が引き寄せてくれたのかな・・・??


なんて、どこまでも続く電線を眺めながら思った。


うん。

こうやって、助手席で物思いにふけるのも悪くない。


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以前に髪を結ぶ大ちゃんと、その紐をたぐるまお。というイラストを描いたのですが。

あのシーンからの連想というより、結ぶ。のタイトルからの連想なお話になってしまいましが~~。
あの、イラからのお話なのです・・・WW