「・・・やっぱり、反則だ。」

顔を洗って、首にかけたタオルで拭きながらリビングに戻ると、俺の顔をみるなりまおがつぶやく。

「・・・何が、反則なのさ。俺、何もしてねーけど?」
「何もしてないのが、反則なんじゃん。」

半ば、いじけるようにまおが膝を抱える。

「・・・すっぴんのほうがカッコイイなんて、反則だよっ。大ちゃんっ。」
「・・・ああ。なんだ。そういうこと・・・。」

まおの可愛いやきもち?ってところか。
まおの素顔だって、十分すぎるぐらい美人だと思うが。

思わず触れたくなるような、キメの細かい肌。
つやつやと濡れる桜色の唇が、すうっと薄くラインを引いていて。
大きな瞳と長い睫毛が瞳を縁取っていて・・・。

「そういうこと。じゃないよっ。顔を洗っただけで、こんなに絵になるなんて、ほんとずるい。」
「ずるいって言われても・・・。この顔で生まれたんだし。別にトクベツなことはしてないぞ?」

更に、ぷんすか。と拗ねてしまう。

「わかってるよお。それぐらい。一緒に住んでるんだし?」
「まおだって、美人じゃないか。それを保つ努力も忘れないところが、性格も美人だし。」

ちょっとだけ、まおの拗ね拗ねオーラが緩む。

「・・・ほんと?」
「ああ。ほんと。まおは、外見も、性格も美人だよ。」

「大ちゃんと一緒に歩いて、恥ずかしくない?」
「恥ずかしくないどころか、自慢したいぐらいだぞ?」

「そっかぁ・・・。なんだか、こんなカッコイイ大ちゃんを見つけるたびに、並んで歩くの気後れしちゃうんだよね。」
「そのセリフ、そのままお前に返すよ。美人で、顔ちっちゃくて、スタイルよくて・・・。」

「ええ~~?大ちゃんのほうが、色気ぷんぷんで、筋肉もついてて完璧じゃん。」
「いやいや。まおだって、余計な贅肉ヒトツない綺麗なカラダしてるぞ・・・・。」

「大ちゃんなんて、思わずキスしたくなるようなふんわりしたくちびるだし~~。」
「いやいや。まおの瞳なんて、思わず見とれちゃうような・・・。」

拗ねていたまおは、どこかに行ってしまって、いつの間にやらお互いの褒めちぎり大会になっている。

「・・・つーか、誰か止めて?」
「あははっ。ほんとっ。永遠に褒めちぎり大会だよねっ。」

「いくらでも、まおの魅力語れるからな。」
「おれだってだよぉ・・・。」

・・・この会話を、ファミレスとかでしてたら、完全に回りから蹴りが入るな。
我ながら、バカップルだなあ。

まあ、まおの機嫌が直ったから良し。としよう。

・・・ふふ。でも、そんなに素顔の俺にベタ惚れしてくれてて、それはそれでかなり嬉しい・・・かも。