「僕ねっ。お母さんのお手伝いとかよくしてたから、料理は得意なんだよっ。」

そう、言っていた。
確かに、言っていた。

それを信じて??
俺のうちで、一緒に料理を作りながら、ほっこりおうちデートでもしようか。となった日。
初めてのまおの手料理を楽しみにしていたのだが・・・。

「ああっ。あぶなっ・・い。」
「先に湯を沸かしておかないと、困らないか?」

隣で包丁を使うまおに、ドキドキ・ハラハラしっぱなしで。

作ってもらう。と言うよりも、俺がまおが作るのを母親のように??見守っている、という感じだった。
・・・まあ、ごはんを炊いてたのを忘れて、3日間放置するようなヤツだもんな・・・(笑)

大学から一人暮らしをしていて、飲食店でバイトをしたこともある俺からすれば、まおの手つきは危なっかしくて、見てられない。って感じだったけれど。
自信満々に「得意なんだよ~~。」っていそいそとキッチンに立ってくれるまおを傷つけてはいけない。とあまり口出しもできず、何だか挙動不審になってしまう。

「大ちゃん、パスタ好きなんでしょ?」
「簡単にできて、栄養バランスも一品でそれなりに取れるしな・・・・。」

なんて、会話から初めての料理がパスタ、になったのだけれど。

「ふえぇぇぇ・・・・。目、痛い・・・・。」

玉ねぎを刻んでいたまおが、ボロボロと涙をこぼして甘えてくる。

「玉ねぎは、冷蔵庫に入れてたのを使わないと、涙出るんだよな。買出ししたその足で、作っちゃったもんなぁ。
まおは、休んでていいぞ?」
「うん・・。ごめんね。せっかく、作ってあげようと思ってたのに、ちょっとだけ交代。」

「ううう。痛いよ~~。」とか言いながら、涙を拭き拭きダイニングのほうへ避難するまおを見ながら、残念なようで・・・半分以上はほっとする。

手料理を作ってもらう。って男のロマンではあるけれど、実家育ちのまおがぎこちない手つきで格闘している姿は、ハラハラのほうが勝ってしまう。

タンタンタンタン。

玉ねぎを刻む軽快な音が響く。

ほえ?ときょとんとした瞳が、俺に向けられる。

「大ちゃんって・・・。もしかして、すっごく料理うまい??」
「・・・フツーかなぁ?簡単なものしか作らねーし。まあ、一人暮らしが長いからな。必要に駆られて、それなりに。」

「すっごーい・・・。カッコイイ・・・・。」

キラキラ・うるうる。と尊敬の眼差しで見詰められる。
・・・ああ。この瞳に弱いんだよなぁ。俺。
ただの後輩だったまおに惚れてしまったのは、この瞳のせい。

「・・・ほら。できたぞ。」
「わあぁ。おいしそー・・・。」

心から感激してくれているまおの表情に、心の中がほんわかとあったかくなる。
一人でどんなにうまいメシを作っても、こんな感動は得られない。

「こんな美味しいパスタを食べたのは、生まれて初めてだよ~~。」
「お前、それ褒めすぎだからっ。」

なんて、口では言いながらも、ベタ惚れ~~。とばかりに、頬を緩ませて褒めちぎってくれるまおの言葉がくすぐったい。

「まおも、練習すれば、すぐ上達するさ。」
「うんっ。じゃあ、これから毎日教えてねっ。」

「・・・毎日?」
「うん。毎日。」

それからと言うもの、仕事が終れば外で待ち合わせて、一緒に買い物をして、料理を作る。
のが定番のデートコースになってしまった。
まおの実家にも、「大ちゃんに料理を教わっている。」という名目で、毎日出かけているらしく。
たまのお泊りのときも、すっかり信用されてしまって・・・・。

「この前はね~。みんなにパスタ作ってあげたよっ。野菜の切り方が揃っていて、上手になった。って褒められた。・・・大ちゃんの特訓のお陰だね。・・だって!!」

なんて、嬉しそうに実家での出来事を報告してくれるのも、自分が褒められているようで、嬉しい。

「まおって・・・。褒め育て?」
「・・・え??」

ゴセイジャーのときに、「演技がなってない。」と叩かれて、本気で向かいあってくれて、ありがたかった。
とか、何とか言ってたけど。

自分は料理が得意。と思い込んでいた自己肯定感とか。
素直に人からの褒め言葉を受け取るとことか。
実は、すっごく褒められて、愛情たっぷりに育ってきたんだろうな~~。と思う。

そんな純粋培養なまおが、可愛い。

「・・・いいよ。お前はそのまんまで。」
「・・・???」

小動物のような愛らしさで、きょとん。としているまお。

オトナになれば、否が応でも純粋無垢ではいられなくなるからな。
ゆっくり俺のあとをついて来い。

いつでも、いついまでも見守っててやるから・・・。


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カレーは、ジップロッXに詰めて保存。な大まおの話を書こう!!と思ったのですが・・・。
ちょっと方向がずれてしまいましたWW

でも、こうやって、まお君のヒトツ、ヒトツ教え込んでいったんだよね~~。
大ちゃんっ!!!
今は、すっかり家事も得意になったんだよね~~。まお君。ってことで(笑)