吐き出し窓に並んで座って海を眺める。
「ここにきて、よかった・・。」
「ああ。なんだか心の整理ができたな。」
大ちゃんがぽつり、とつぶやく。
・・・あれ?気持ちの整理ができたのはおれだけじゃなかったんだ・・・。
「なんかさあ。お前が卒業して、俺だけのまおになって、すっごく幸せな反面、別の世界の人間になってしまったことがどっかさみしかったんだけど・・・・。」
「・・・うん。」
そんなふうに感じさせちゃってたんだね。やっぱり。
「なんか、まおの卒業記念っていうより、俺がまおから離れても、一人でまおを信じてしっかりと立っていこう。って思えた。」
「・・・ふふっ。大ちゃんは、おれなんかいなくてもしっかり一人で立ってるよ?」
いつも、いつもそうやっておれに居場所をくれる。
大ちゃんの隣にいていいんだよ。
お前がいるから強くなれるんだよ。って・・・。
ぐらぐらと不安になってしまうたびに、どれだけその言葉に救われたか。勇気づけられたか。
世界中で二人っきりのこの夢のような時間。
今までは、こうやって旅行に出かけるたびに、ずうっと時が止まればいいと思っていた。
でも、違うんだよね。
大ちゃんは、大ちゃんの夢を。
おれは、おれの夢を叶えるために生きているんだ。
それでも、同じ未来を見据えて歩んでゆく。
活躍する舞台は違えども、お互いに信じて、自分の可能性を最大限に発揮することに全力を尽くそう。
もちろん、共に歩んでも叶えられない夢もある。
それでも、この命ある限り、貴方を信じ、愛し続けよう。
二人の愛した証が残せようと、残せまいと、今ここにある命と愛は確実に存在するのだから・・・。
同じ俳優として切磋宅磨してきた、先輩と後輩であり、コイビトでもある。
身近にお互いを感じれていた安心感から卒業して、新たな一歩を踏みだそう。
ほら。
きっと今までよりもうんと強く信じあい。
今までよりも、ずっと深く愛し合いながら、夢は実現するから。
「帰ろっか・・・。東京へ。」
「うんっ。そうだね。」
たった一泊二日の旅だったけれど、濃密に過ごした分だけ色んなことが見えてきて。
なんだかちょっとだけ強くなれた気がするよ。
ありがとお。大ちゃん。
---------------完--------------------------