「ただいま・・・・ま・お?」

ああ。何だか一人しりとりをしているみたいだ・・・。
ではなくっ。

「まお、何してるの?」
「あ・・・。おかえりい。大ちゃん。」

なんとも不思議な格好で、おかえり。と言ってくれるまお。
愛おしいものを抱きしめるように、パソコンを抱きしめて、うるうると瞳を潤ませている。

「どうした?まお。そんなにそのパソコンが好きか??」

確かに、この立ち姿がカッコイイ。とまおの一目ぼれで選んだパソコンだが。
新しく新調してから半年は経つぞ・・・・??
ああっ。お休みに入ってから、俺のいない間にパソコンと毎日浮気してたとか!?
こんなところにライバル出現とは、落とし穴だったなあ。

なんて、一人芝居?をしている俺を尻目に、ぎゅううっと幸せそうな表情で、まだパソコンを抱きしめている。

「あのー・・・。お帰りのハグは?キスは??」
「あっ。ごめんねえ。おかえりなさい。」

催促すると、やあっと我に帰ったようにパソコンから離れて、抱きしめてくれて、キスをくれる。
やっと、ほっとできて家に帰ってきたなあ。という実感が沸く。
しかし、パソコンに負けるとは・・・。
・・・なんだか、情けない・・・。

「何、そんなにパソコンと愛をささやいてたの?」
「あいって・・・(笑)そんなんじゃないよお。感謝と、お別れをしてたの。」

「感謝と、お別れ・・・??」
「うん。卒業してからも、ブログコメントが届くのを楽しみにしてたんだけど・・・。
それも、今日でお別れだなあ。と思って・・・・。」

寂しさと、満足感の入り混じった表情で、微笑むまお。

「そっか・・・。まおは、みんなに愛されてたもんな。」
「うん。ほんとうに・・・・。みんなが伝えてくれたこの気持ちを、受け止めたいなあ。って思ったら、パソコン抱きしめてた(笑)」

卒業が決まってからは、イベントがあるたびにメッセージカードの束を山盛り持って帰ってきていた。
みんなに、休止活動を伝えたときも、たくさんのコメントを、徹夜で涙を流しながら部屋の隅で読んでたっけ・・・。

たくさんの人の思いを、全身で受け止めようとするまおの真摯な姿が、愛おしい。
たくさんの人に愛されている。ということを感じると、よかったなあ。と心から思う。
俺だけじゃない。
みんながまおを愛してくれて、まおの居場所がある。と安心する。

「・・それで、少しは受け止めた気分になった?」
「うーん・・・。なったようななってないような・・・。ほんとうは、ヒトツ、ヒトツのコメントを取り出して、ありがとうございます。って、抱きしめたい気分だよ。」

そう言いながら、甘えるように俺に抱きついてくる。

「あははっ。それができたら、いいよな。俺も、その意見に同感だ。」
「うん。みんなの言葉が心に沁みるんだよね・・・。」

きゅ。と背中に回した腕に力がこもる。

「・・・気がすむまで、抱きついてていいぞ?」
「うん・・・。ありがと・・・。」

俺を抱きしめることで、少しでもまおの心が満たされるならば。
みんなへの感謝の気持ちを、少しでも消化できるのならば。

・・・少なくとも、パソコンに抱きつくよりは、実感があると思うぞ?

まおの頭を撫でながら、卒業する子どもを持つ親の気持ちってこんな感じなのかなあ??

なんて、ぼんやりと考えていた。