濡れた水着を、大木の幹にかけて乾かす。

砂浜に岩を組んで作ったかまどに、林から拾ってきた木々をくべて火をおこす。

パチパチと木のはぜる音が、心地よいBGMだ。

・・・なんだか、日常を忘れるなあ・・・。
舞台の合間のお休みであることも。
目の前にいる大ちゃんはみんなのもので、ちゃんとお仕事があって、明日にはまた日常に戻るなんてことも。

・・・駆け落ちするってこんな気分かな・・・。
なんて、つまらないことを思ったりする。

舞台の上でキラキラ輝いている大ちゃんに憧れて、そんな大ちゃんがコイビトであることを誇りに思う。
有名になって、本格的な舞台が増えて、どんどん稽古も増えてきて・・・。
すれ違いの時間が増えてしまったけれど、大ちゃんが力強く飛躍しているんだ、と実感できる。

・・でも、こうやって何者にも邪魔されない。
二人を見守ってくれるのは、大地のささやきだけ。
心穏やかな、満たされた時間を過ごしてしまうと、時が止まればいいのに。と願ってしまう。

「・・・わあ。夕日・・・。」

大ちゃんの横顔がオレンジ色に染まってゆくのを眺めていて、日が沈みゆくことに気がつく。

世界中が、オレンジ色に染められて、優しい色を放つ。
水面が夕日を反射して、ガーネットのように輝く。

「すっごい、ロマンチック・・・。」
「・・・ああ・・・。」

夕日に見とれているうちに、いい匂いが立ち込めてくる。

「・・・おっ。まお。そろそろいい感じに焼けたんじゃない?」
「あっ。ほんとだあ。」

ふつふつと、出汁を噴出しているサザエ。
東京から持ってきた、厚切りのお肉はじゅうじゅうと肉汁を垂らしている。
つやつやとあざやかな緑色をしたピーマン。
香ばしいしょうゆの香りの立ち込めるコーン。

「おれ、バーベキューってファンイベぐらいでしかしたことないから、すっごく楽しいっ!!」
「そっか?それは、よかった。」

こうやって風を感じながら、外でごはんを食べるのってすっごく楽しい。
頼りがいのある大ちゃんがぜーんぶリードしてくれて、楽しませてくれて。

「こんなにおればっかり楽しくって、いいのかなあ?」
「いやいや。俺のほうこそ、楽しんでるぞ?」

砂浜にめり込む素足が、ひんやりと冷たい。
冷たいビールと、焼きたてのサザエやお肉をはふはふしながら食べて・・・。

沈みゆく夕日を感じた。