ふと、喉が渇いて目が覚めた。

そっと起こさないように、大ちゃんの腕からすり抜けた・・・はずだったけど、目を覚ましてしまう大ちゃん。

「ん・・。おはよ?ごめんな。せっかくのバカンスに居眠りしちゃって・・。」
「ううんっ。全然大丈夫っ。大ちゃんこそ、ちょっとは疲れ取れた?」

「床で寝たからちょっとだけ、頭いてー・・・。でも、すっごく気持ちはすっきりした。」

頭を押さえながら、起き上がってきて、ふあぁ。と欠伸をしている。
なんだか、心からリラックスしている様子に、自分も肩の力が抜ける。

海に面した窓に、二人で並んで腰掛ける。

さあああっと、風が吹きぬける。
はらはらとどこからか、ピンクの花びらが舞って来る。

「・・・あれ?これ、サクラだよな・・・?」
「ほんとだ。」

着いたときは気がつかなかったけど、ログハウスの奥には、立派なサクラの木がこの家を守るように生えていた。

「サクラ・・・。」

はらはらと舞い散るサクラの花びらを、一枚、一枚拾い集める。

「桜ってさあ・・・。ほんと、すっごく綺麗で、すっごく儚いよね。」
「ああ。本当に、夢を見ているようだ・・・。」

春を待ちわびて、冬中固いつぼみで耐えて。
時期が来たら誰にも教えらなくとも、一斉にぱあっと咲き誇り・・・・。
敢えてこの厳しい天候を選んだのだろうか?と思うぐらい、毎年激しい雨・風が襲い、その花びらを散らす。
儚いからこそ、美しい命。

メサイアの世界に思いを馳せる。
もっともっと自分が成長できて、夢を実現できたら。
いつかまた・・・。
サクラを演じる日がきっとくる。

今はデザインの勉強が楽しくてしかたがない。
強くなりたい。と思う。
居心地のよい大ちゃんの腕の中も、俳優のお仕事もとっても好きだけど。

自分の中の色んな可能性を信じて、歩んでゆきたい。

大ちゃんを、みんなを信じているから。
強くなって、守られるばかりじゃなくて、癒してあげれる存在になりたい。

「まさか、ここでお花見できると思ってなかった。」
「そうだなあ。しかもまおおふたりっきりで。」

「・・・あはっ。お酒持ってきたらよかったね。」
「梅酒なら、持ってきたぞ?」

「・・・うそ。」
「・・・ほんと。」

よっこらしょ。と大ちゃんが立ち上がる。

「でも、まずは腹ごしらえしてからだな・・・。」
「あっ。そういえば、晩御飯はどうするの?」

「海で調達。」
「・・・ほんと?」

まさか、そんなサバイバルだったなんて・・・。

「半分ほんと、半分冗談。」
「さざえとかが、もぐったら簡単に取れるらしいから。後は材料持ってきたからバーベキューしよ?」