見たいDVDだって全部見た。
読みかけの本だって、全部読んだ。
お気に入りの曲をi podにだって、全部落とした。

時間を持てまして、ゆううっくり入ったお風呂から上がってきても、まだ大ちゃんの気配がしない。

「これ、借りちゃっていいかな・・。」

ドライものだけまとめて洗おうと思って、藤で編んだかごに乱雑に放り込んである中から、

大ちゃんが昨日着ていたシャツを取り出す。

「毎日一人で待ってるのって、さみしいもんだなあ・・・。」

最初の頃は、大ちゃんを待っているのが楽しくて、嬉しくて仕方がなかった。
料理を作って、大ちゃんからの「今から帰るよ。」のメールを待ち焦がれて。
その間に、新しいデザインが思いついたらパソコンとにらめっこしたりして。

あっと言う間に時間が過ぎてゆくような気がしていたけど・・・。
舞台が始まってしまうと、やっぱり少し遠い存在になってしまった気がする。

メールしたって、大ちゃんが見れるのは、どっちにしても幕が下りてからだし、
そこからみんなとわいわい盛り上がっちゃったら、いつ帰って来るなんてわかんないし。

自分も仕事していたときは、そんな感じだったから、あんまり気にならなかったんだけど・・・。

大ちゃんのシャツに袖を通して、きゅ。と前をあわせる。

「早く帰ってきてよ・・・。」


広いベッドに一人で腰掛ける。
ぽっかりと空いたもう一人分のスペースがさみしくて、でっかいティディーベアーを置いてみる。
つぶらな瞳で、ちょこん。と寝ころぶティディーベアー。

「・・・なんか、余計にさみしいんですけど。」

にこっ。と笑ってはいるものの、当たり前だけど表情ヒトツ動かさない。
これが、大ちゃんだったらくるくる変わる表情で、ふざけたり、いとおしそうに見詰めてくれたり、抱きしめて・・・くれたり・・・・。

でっかいティディーベアーを抱っこして、ころん。と寝転ぶ。
ダイニングのテーブルが目に入る。

「せっかくのお料理が冷めちゃうよ・・・。」

舞台から疲れて帰って来るであろう大ちゃんのために、腕によりをかけて作った晩御飯。
きちんとテーブルにならべて、ラップをかけて大ちゃんの帰りを待っているお皿たち。

おれと一緒で、とっても寂しそう・・・。

「一緒にいてくれる・・・?」

ちっとも反応してくれないティディーベアーだけど、抱き心地はふかふかしてて、ちょっとだけ安心した。