「お疲れ様でした。」

『あの晴れた青空』の大ちゃんのクランクインの挨拶が終る。
カメラがまわっていることなんて、百も承知だったけど、どうしても「お疲れ様。」が言いたくて、
この感動をともにしたくて、握手を求めに行ってしまう。

役者浜尾京介であることを忘れていた。
まるで隣に並ぶことが当然であるかのように、友人のように、家族のように。
・・・こいびとのように・・・。

・・・あ。最後のは内緒ね。

3年かけて恋人を演じてきて、よく恋人を演じた共演者に惚れる。とかって聞くけど・・・。
それが役としてなのか、自分個人としてなのかがわからない。

でも、大ちゃんと一緒にいると心が安らぐ。
見詰められるとドキドキする。
もっと、もっと一緒にいたい。ずっと、ずっと見詰めていたい。と思う。

これって、立派な恋。だよね・・・。

自慢じゃないけど??正直僕自身だって、もてないほうではない。
・・・この業界に入ってから、表立って告白とかはされたことはないけれど、学生時代はそれなりに告白されたりもした。

でも、嬉しいけどちょっと困ったなあ。って感情が正直なところだった。
好き。と言われて嫌悪感を抱く人はいない。
でも、同じトキメキを相手に感じられるか?と言われたら、ごめんなさい。としか言いようがない。

夢物語のような淡い初恋はもちろんある。
でも、現実に好きだから、その次どうしたい。まで考えられないような幼い・未熟な恋だった。


でも、大ちゃんは違う。

どう表現していいかわからないトキメキを、まるごと包み込むように優しく抱きしめて、キスしてくれた。
好き。という気持ちをどう伝えたらいいのかわからずに、もやもやしていると、
「こっちこいよ。」と強引に引っ張って、キスしてくれた。

それが、タクミという役柄に対してなのかどうかはわからないけれど・・・。

本気で恋に落ちてしまった僕と、どこまでが冗談で、ギイで、ファンサービスなのかがわからない大ちゃん。

それでも、カメラのまわっていないところでも向けてくれる蕩けそうに優しい眼差しや、守ってくれている安心感や、思いのこもったキスは本物だと感じる。
・・・いや、もしかしたらそう思いたいのかもれないけれど。


「でも、確かめてみなくちゃ、前に進まないもんねっ!!」

僕だって、男だもん。

黙って見詰めているだけでは、何も始まらない。

未来は自分で切り開いてゆくものなんだ。