「んっ。はっ。ううっ。・・・きもちっ・・いいっ・・・。」

まおの指先が、肩甲骨の内側をぐいっ。ぐいっ。と押してゆく。
そのまま腰に滑ってゆき・・・。
親指が、腰骨の横の窪みを刺激する。

「ううっ。そこっ。」
「・・・ここっ?」

まおが嬉しそうに声を上げる。

「うん。そこっ・・・。」

お尻の上にのっかっているまおの重みも心地よい。

「はい。腕伸ばして~~。」

肩甲骨を開くように、肩をぐいっと押される。
腕の筋肉をほぐすように、丁寧に揉み解しながら指先へと向かってゆく。
覆いかぶさるようにして、抱きしめられると指先にちゅ。とキスをくれる。

「はいはい。次は、脚ね~~。」

なんて言いながら、太ももの裏側を辿ってゆくまおの指先が・・・。
ちょっとだけ、むずむずする。

「わあ。大ちゃん足の裏、傷だらけだね~~。痛そう・・・。」
「だいぶ、慣れたけどな。」

まおの指先が、そっと傷に触れる。

「ひゃはっ。」

くすぐったくて、思わず変な声が漏れる。
ぽんっ!!といたずらスイッチが入ったかのように、にまあ。と笑ったまおが、足の裏をこしょこしょとこそばしてくる。

「ひゃははははっ。お前っ。やめろよっ。もっと、労われよ~~。」
「ふふふっ。ほらほら。余計な力抜けたでしょ~~?」

「・・バカッ。余計に余計な力使うってーのっ!!」

ベッドの上で、ゴロゴロと暴れまわる俺たち。
・・・大人の男二人で何やってんだか。

結局俺も、お返しとばかりにまおのくすぐり攻撃に参戦して、お互いにへとへとになってしまった。

「・・・なあ。まお。マッサージしてくれるんじゃなかったっけ?」
「うん・・。そうだね。・・でも、途中までは、ちゃんとしてたよ?」

はあ。はあ。と荒い息をつきながら、ゴロン。と天井を見上げて、並んで寝転ぶ。

「・・確かに、気持ちよかった。テクニシャンだよなあ。まお。」
「・・・何ソレ。なんか、大ちゃんが言うと、違う意味に聞こえるんだけど。」

ははっ。
ついついまおの腰を撫でながら言ってしまうと、鋭いツッコミが入る。

「いやいや。マジで。なんか身体軽くなった。」
「・・・そう?」

「うん。サンキュな。」
「大ちゃん、この舞台好きでしょ?」

じいいっ。と心の奥まで見透かされるように見詰められる。

「・・ああ。まあ、出演させてもらう舞台、全部好きだけどさ。」

やりがいのある舞台。
新しいことに挑戦する舞台。
若手と楽しむ舞台。

仕事である以上、この仕事がいい。とか楽しい。とか思わずに、全てを投球で向き合うのみ。
と思って過ごしているけれど・・・・。

実際、心から楽しんでいるのは確かだ。

「なんかさあ。やっぱいいよな。家庭があるってのは。」
「・・・どうしたの?急に。」

「んー・・・。こうやって、仕事に真剣に向き合ってても、ちゃんと家に帰ればお前が待っていてくれて、帰るべき場所があって。くだらないことで、笑いあって・・・。なんか、すっげーほっとする。・・。だからかな?今まで以上に仕事にのめりこめるのは・・・。」
「ふふっ。そんなふうに思ってくれて、うれしい。」

ゴロン。と横を向くとパチン。と視線が合う。

「そんなに喜んでくれるなら、大ちゃんの専属トレーナーになちゃおっかなあ?」
「おおっ。それは、魅力的だなあ。」

すりすり。と腕にすりよってくるまお。

「・・・でも、まっ。まおのその美貌と才能は、俺一人で一人占めするには勿体ないよな。」
「お仕事は、お仕事でちゃんと成功するように頑張るよ?もちろん。」

「うん。わかってる。お前の本気。・・・だからこそ、今が満たされすぎて、また成功して俺から離れていくときに寂しくなるだろうから。
俺だけのまおじゃない。ってことをどっかで意識しとかないとな。」
「・・・そんなの、その時にならないとわかんないのに・・・。」

今から、そんなこと心配しなくても・・・。と、心なしかしゅうん。としてしまうまお。

「お前と違って、俺は石橋叩いてしまうのっ。」
「・・あはっ。そうだね。むぼーになりすぎるおれを、大ちゃんがコントロールしてくれて。心配性な大ちゃんと、おおざっぱなおれだからこそ、うまくいってるんだもんねっ。」

絶妙なバランスで、補いあう俺たちの関係。
まおは、守ってもらってばっかりで・・・。と気にしてたけど、今はこんなにも頼もしい安心できる家族だよ。

さて。

まだ幕は開いたばかり。

最後まで見守っていてくれよな。

まお。