「ただいま~~。」
「・・・おかえり。まお。」

穏やかな微笑と共に、大ちゃんが迎えてくれる。

「よかったのか??家族と過ごさなくて。」
「・・うん。ちゃんと、みんなに伝えてきた。幸せになります。って・・・。」

「そっか・・・。」

ふわ。と大ちゃんが抱きしめてくれる。

「・・・6年間、お疲れ。まお。」
「うん・・・。大ちゃんこそ、今までいっぱいありがとお。・・・そして、改めて、よろしくお願いします。」

腕の中に埋もれたまま、お辞儀をする。

「・・・お前って、ほんっとかわいいよなあああ。」
「わわわっ。くるし~~。」

ぎゅうううっと息が止まらんばかりに抱きしめられる。
大ちゃんの香りで、胸いっぱいになる。
抱きしめられた腕の力強さに、心がほっとする。

「なんか、まおをお嫁さんにもらった気分。・・・あ。嫁は嫌か?男だもんなあ。」
「・・・ううん。嫌じゃないよ。大ちゃんと一緒なら、呼び方なんて、なんでもいい。」

まじまじとおれを見詰める大ちゃん。

「そっか・・・。そうだよな。」

ぽん・ぽんと頭を優しく撫でられ、ふわ。とあったかいキスが落ちてくる。

「・・・愛してるよ。大ちゃん。」
「・・・俺も。愛してる。」

ぎゅっと抱きしめあえば、トクトクと伝わってくる鼓動。

「・・・まお。ごはん食べてきただろ?軽くなら、飲める??」
「あっ。うん。全然平気っ!!」

なんて、今日は部屋の掃除ぐらいしか運動しなかったから、そんなにお腹は空いてないけどね。
大ちゃんのことだから。
備えあれば、憂いなしって感じで完璧に用意してくれてるに違いない。

「白ワイン、買っといけど?」
「わあ。うれしいっ。今日は、大ちゃんも付き合ってくれるの?」

「ちょっとだけ・・・な?」
「んふふふ~~。酔わせちゃおっかなあ。」

アルコールに弱い大ちゃんは、おうち呑みするときでも、乾杯の一杯を付き合ってくれればいいほうなのだ。
もちろん、次の日に仕事が入っていると「仕事に響いたらいけないから。」ってそれすらも、ナシ。

でも、そんな仕事にまっすく熱心なところが大好きだから、寂しいと思ったことなんか一度もない。

・・・ただ、今日はそんなことを忘れて、ただただ甘えたい気分なんだ・・・。

「おまっ。手加減しろよ~~。」

なんて、言いながら、キャビネットからグラスワインを取り出してくれる。
冷蔵庫から次々にでてくる可愛らしい包み紙に包まれたキューブチーズ。
アボガドを巻いた生ハム。
色とりどりのオリーブやフルーツの載ったクラッカー。

そしてそして、絶対に白ワインには合わないと思われがちなチョコやグミ。

んふふっ。ちゃーんと、わかってるよねえ。大ちゃん。

「お菓子ばっかり食べてたら、身体に悪いぞ。」なんていつも注意するのに、
こういうときにはちゃんと用意してくれる。
・・・そんなところが、大好き。

「なんか、長いようで短かったなあ・・・。6年間。」

大ちゃんが、遠い目をして言う。

「だってさあ。6年間っつったら、小学校入学してから、卒業するまでだぞ?」
「・・・ほんとだねえ。なんか、昔は6年間ってとてつもなく長く感じてた気がする。」

芸能の仕事をしてみたい。
その一心だけで飛び込んで。

どんなに一所懸命に練習しても、思うように上達しない自分にイライラして、自信をなくして。
毎日が、挫折感と緊張と申し訳なさでいっぱいだったけど。
大ちゃんが「誰一人欠けても、この舞台は成り立たないんだ。大切な仲間だからな。」って励ましてくれた。

どんな時でも、大ちゃんの生き様を信じて、追っかけて、ここまでついてきた。

あんなにちっぽけだったただの高校生のおれが、ここまで成長できたのも、大ちゃんのお陰だよ。
こてん。と大ちゃんに身体をあずける。

「あと。もうちょっとだね・・・。」
「ああ・・・。役者としてのお前を見れなくなるのは寂しいけど・・・。
まおならきっと頑張れるさ。誰よりも努力家で、一所懸命なのはよく知ってるからな。
今までだって、そうやって夢を叶えてきたもんな。」

「そうだね。今までも、これからも・・・・。」
「ああ。目指す道は違っても、ずっとずっと一緒だからな。」

みんなに誓ったから。
守られてばかりじゃなくて、自分の力で夢を勝ち取ると。

甘えてばかりじゃなくて、自分の世界を広げると。

「まおの背中には、本当に羽根が生えてるみたいだな。」

そう言ってくれた大ちゃん。

うん。貴方の大好きな青空を高く高く翔んで---------。


貴方に負けないぐらいのオトナになろう。