花束にうずもれるようにして顔を隠した。
笑顔で卒業するって決めたから。
なのに、じわああ。とあふれてくる涙が止まらない。
やだなあ。テニミュ卒業のときは泣かなかったのに。
こんなメンバーで改めて送り出されたら、涙止まんないよ・・・。
「ま~おっ。なにしんみりしてんだよっ。」
ぽんっと叩かれた肩に・・・。
今までこらえていた涙が一気に溢れ出す。
「だって・・・・。」
「お前が自分で笑顔キラッキラで卒業する。って言ったんだろ?」
「そうだけどおお。」
見上げると大ちゃんの優しい笑顔があって、ほっとして更にぶわあああ。って新しい涙があるれる。
「おいおい。何で俺の顔見て泣くんだよっ。」
「だって・・・。だって・・・・。」
ぐいっと力強く抱き寄せられ、あふれ出した感情ごと抱きしめてもらった気分になる。
「まおは、強い子。・・・な?」
「うん・・・。」
将来を夢みて。
本当にキラッキラの期待しかなくて、卒業を決めてからも、毎日楽しかったのだ。
キチキチのスケジュールも、みんなと会える最後の機会、だと思うとしんどいなんて思う暇もないぐらい充実していたのだ。
・・・そのぶん、大ちゃんには寂しい思いをさせちゃったけど。
でも、こうやっていざ。って日が来るとやっぱり寂しさが募ってくる。
4代目卒業のときに、あんなに泣いていた大ちゃんの気持ちが今はわかる。
今まで積み上げてきた経験や自信や、自分に関わる全ての人が与えてくれた気持ちが走馬灯のように頭を駆け巡って・・・・。
自分一人でがんばってきたんじゃない。
ここにいる大ちゃんや、馬場りょや圭ちゃん。
・・・そして、今もずうっと続いているテニミュの歴史や。
スクリーンの向こうで、いっぱいいっぱい応援してくれている人たちの思いが伝わってくる。
こんなちっぽけな22歳の自分に心を注いでくれる人たちがこんなにもたくさんいる。
そう思うと・・・・。
ああ。違うね。
寂しくって涙が溢れるんじゃない。
みんなの想いが嬉しくて、涙が溢れるんだ。
「ほらほら~~。まお君、鼻水汚いよ?ほら。ティッシュ。」
「せっかくの綺麗な顔が、お目目腫れちゃうよ??」
「明日の舞台挨拶もあるんだし。泣きすぎてぼってぼての浮腫んだ顔はNGだからねえええ。」
なーんて。大ちゃんの腕の隙間から、ひょい。ひょい。と顔をのぞかせながら、かまってくれる馬場っちも優しい。
・・・ちょっと、毒舌だけど。
でも、おれを元気つけようとして、わざとそんな風に言ってくれてるのがわかるから。
「うん。もう、泣かない。」
渡されたティッシュで、ちーんと鼻をかむ。
「・・・その顔で、おまけ出れないねえ。泣いてました!!ってのバレバレ。」
「うん・・。でも、最後だから・・・。」
「いいよ。まお。無理しなくて。明日もあるんだし。」
「そうそうそう。まお君にとっては、これがスタートだからねっ。」
どうしよう・・・・。
確かに、さっき花束ももらっちゃったし、笑顔で終れたし、そのほうがいいのかなあ・・・。
なんて悩んでいると、さりげなく大ちゃんが近寄ってきて耳元でささやく。
「・・・先、帰って布団あっためといて?」
こそっと耳元でささやかれ。
かあああっ。と顔が火照るのを自覚する。
ぱたぱたと、両手であおいでいるうちに。
「じゃあ、また後でな。まお。」
「またね~~。まお君。」
「おつかれ~~。」
なんて、いつの間にかみんなぞゾロゾロと行ってしまう。
火照る顔を冷やしながら一人残された楽屋。
・・・うん。でもこれでいい。
「よしっ。残り一日がんばるぞ~~!!!!」
・・・でも、今日はもう一回ごにょごにょ・・・ってことだよね??
大ちゃん。
それって、起きて待っとけよ。ってこと・・・??
なんて、すっかりしんみりした気分なんてどっかに吹っ飛んじゃって、
カタンっ。とイスを蹴り上げて、元気にドアを開けた。