「じゃあ、今日はこれで終了、ということで。」
「お疲れ様でした~~~。」

高原ホテルの撮影初日。

はあ。と白い息を吐くほど寒い長野県。
ホテルの周辺も閑散とした森に包まれている。

こんな日は、騒ぎたいよな~~~!!

なんて、テンションでいたのだけれど。

マネージャーさんからの部屋割り、を聞いて「え???」とハテナマークがとぶ。

「琢磨君は、206のシングルね。
大ちゃんは、305のツインの部屋で・・・・。」

「え?なんで俺だけ一人部屋??」
「仕方ないでしょ?だって、お泊りが3人だから、だれか一人がシングルになっちゃうんだもの。」

「・・・でも、大ちゃんわざわざ一人でダブルに泊まらなくても・・・。」
「明日、浜尾君が合流するからね。」

「あ。そっか。」

・・・と、一旦納得したものの、やっぱりおかしい。
だったら、俺と大ちゃんが同室で、あとから合流するまおがシングルに泊まったほうが合理的なのに。

「大ちゃん。今日は一人なんだろ?夜、飲みにいってもいい?」
「あ~~・・・・。」

曖昧に言葉を濁す大ちゃん。

「俺、あんま酒強くないんだよなあ。」
「・・・そっか。じゃあ、また明日。」

結局マネージャーの部屋に入り浸ったり、ホテルの周りを散策したりしてその夜の暇を潰した。


次の日。

まお君が合流しての撮影に入る。

休憩中はできるだけ自分の世界に入ろうと、集中していて無口なまお君。
じいいっと壁に台本をもってもたれかかりながらも、視線の端でまお君を見守っている大ちゃん。

----まだ、テニミュの頃の癖が抜けないのかな?なんてほほえましくそんな二人の様子を観察していた。

だけど、大ちゃんのまお君を見詰める視線の熱さや、見詰め返すまお君の瞳の深さに。

ああ。もしかして。

と、なんとなく気がついてしまった。


今回、横井組、と呼ばれたゴールデンスタッフと、キャストの根拠となった作品を。

「そっかあ。まだ、続いてたんだ。」

心を閉ざした歩の演技をしていても。
どこかで大ちゃんのことを信頼してるからこそ、休憩中に気を使わずに無愛想でいれる。という空気を感じるし。
かと思えば、ふ。と台本からあげた視線が、大ちゃんが自分を見詰めていることに気がついたときに、照れたようなふんわりした笑顔になるのが印象的で。

・・・まお君、かわいいなあ。

なんて、思ってしまった。


「・・・ねえ。部屋割り、って誰が決めたの?」
「ああ。横井監督さんだよ。せっかくの機会だから、って・・・。」

「そっか。せっかく、だもんね。」

意味深な含みのあるせっかく。という言葉をマネージャーさんはうんうん。と聞いている。
なんだ。みんな知ってたんだ。