「ぶちょーのこと、好きだから。」
そう告げられたからと言って、今までと何も変わりはなく。
仲のよい先輩と後輩として、順調に撮影は進んでゆく。
若かりし頃にありがちな、勘違い。
好き。には違いないだろうけれど、どういう種類の好き。に気がつくかはきっと撮影が終らないと答えはでない。
まおの瞳の中には、今は「ギイなのか俺なのかわからないけれど、恋してるんだ。」という感情しか見出せないから。
だから、俺も「タクミのことも、まおのことも好きだよ。」という態度で接する。
まおが、役に入り込みやすいように。
まお本人が、あまりにも可愛すぎて、思わずキスしてしまったことなんて、なかったように。
映画がクランクUPを迎えて、またお互いの日常が始まる。
まおは今頃、普通の高校生してるんだろうな。
教科書を広げて、つたない字でカリカリと机に向かう横顔が、撮影のときに勘違いして拗ねてしまった感じと重なる。
久しぶりに雑誌の取材で一緒になる。
「まおっ。久しぶりだな。」
「あっ。大ちゃん。お久しぶりです。」
ニコニコ。と笑顔を浮かべて会釈してくれるまお。
・・・やっぱり、役を離れれば普通の高校生に戻った。ってところかな?
ほっとしたような、寂しいような複雑な気分を抱えて、取材に望むけれど。
ちら。ちら。と投げかけてくる視線は、やっぱり「大ちゃん好きだよ。」と言ってくれているようで。
まおの視線にぶつかるたびに、心の奥がくすぐったくなる。
「ふふふ。だって、大ちゃんのこと、大好きですから。」
そう言って、幸せそうに笑うまお。
「・・・ね?」
「・・・おう。相思相愛だからな。俺もまおのこと愛してます。」
なんて返事する俺。
まおは何度も、何度も、日常の挨拶のように会えばこうやって「大ちゃんのこと、好きだよ。もう、尊敬することばっかりで、憧れです。」って瞳をキラキラさせながら伝えてくれて。
すっかりその気になっていた俺も、「そっか。じゃあ、もっともっと頑張らなきゃな。」って元気をもらっていて。
不思議な関係。かもしれないけれど、お互いに直接「付き合おう。」とか言葉にしたことはないのに、特別な存在だ。ということを公言していて。自分自身もすっかり相手に伝えていると思いこんでいて。
二人っきりになった楽屋で、鏡に向かって飲み物を飲みながら他愛もない会話をして。
さあ。そろそろ帰ろうか。という時間帯に、
「ねえ。大ちゃん。今日はこのあと空いてますか?」と、まっすぐにキラキラした瞳で見詰められて。
ふわり。
引き寄せられるように重ねた唇は、やわらかくて、あたたかくて。
「・・・空いてるよ?どこ、行きたい??」
ぱちぱち。
長い睫毛をぱしぱしさせるまおの反応が可愛くて。
「えっと・・・。どこでも・・・。おすすめの店とか、ありますか・・・?」
頬を紅色に染めながらうつくむくまおの肩を抱き寄せると、ためらいがちに背中に回されるまおの腕。
「まお。俺のこと、好き?」
「・・・うん・・・。」
「そっか・・・。俺も、好きだよ?まお。」
ぎゅっと指先に力がこもり、洋服を握り締められる。
「じゃあ、今日は腹ペコだし、がっつり定食屋さんにでも、するか!!」
「わあ。僕、とんかつ食べたい~~。」
なんて、やっぱりいつもの二人に戻ってしまって。
・・・まあ、そんなこんなで、「いつから、付き合ってますか?」に対する答えも実のところよくわからないのだ。
「いつが、ファーストキスですか?」と聞かれたら、寝込みを襲ってしまったことを抜きにすると(笑)
虹色の撮影の後です。って答えられるんだけどな。
-----------------------------------------
これ、続ける意味あったのかなあ?っていうような内容になっちゃったねww
二人の温度差は、ナシ。
お互いに告白しまくってるんですけど。・・・え?どこから?かがわからないぐらいに。
ってのを書きたかったのです~~~。