大ちゃんと二人で並んで、「そして春風にささやいて」を鑑賞する。

「・・・意外と、普通だな。」
「うん。意外と普通の高校生って感じ・・・。軽い感じだしね。」

もっと、裸のシーンとか、いかにも。みたいなラブ・シーンがあるのかと思ってた。
さわやかに、青春しています。って感じで、なかなか好感のもてる印象だった。

なので。

台本をいただいたときは、えええええ??ってちょっとびっくりしてしまう。
なんか、キスシーンとか、ものすごく多いんですけど・・・。

これ読んでぶちょーはどう思ってるのかなあ??
ぶちょーとキスしているところを想像してみる。
・・・ひゃああああ。恥ずかしいっ。想像するだけでドキドキしてきた・・・。

いやいや。でも、ここは気持ち作らなきゃ。
相手はぶちょーじゃなくて、ギイで、いつも完璧にカッコよくて、運命的な出会いをして・・・。

目を閉じれば、初めてぶちょーに会った時のことを思い出す。
思わず見とれてしまうぐらい、美形で。いつもさりげなく僕のことを気にかけてくれて・・・。
・・・ああ。僕にとって、ぶちょーはギイそのものだ。

「ギイ。愛してるよ。」

そう、言葉に出してみる。
瞳を閉じて、ぶちょーの顔を思い浮べながら。

「ぶちょー・・・。愛してるよ・・・。」

僕にとっては、雲の上のような存在。
そう。雲の上のような存在だったぶちょーが、「まお。まお。」って可愛がってくれて、共演できることになって。

たくみがこんなにもギイが好きなわけ。
どんなところに惚れたんだろう。たくみは・・・・。

彫りの深い美貌の持ち主だから?
友情にアツくて、自分にできることはないだろうか・と心を配れる人間だから?
たくみが自然体でいれる相手だから・・・?

なんだかぶちょーのことを思い浮べながら考えていると、何もかもがギイとぶちょーが重なって思えてくる。


虹色の硝子。の撮影が始まる。

共演と言っても、現場に入ったのは僕が先で。
見るもの、出逢う人全てがはじめまして。で、ものすごくドキドキする。

「よっ。まお。よろしくな。」

そんな時、ポンと肩を叩かれて振り向くと優しく微笑むぶちょーの顔があって。

「ぶちょー・・・・。」

緊張の糸が、プツンと途切れて、不覚にもうるうると瞳が潤んでしまった。
・・もちろん、気合いで我慢したけどね。


その夜、監督の粋な??計らいで、ぶちょーと同室になる。
久しぶりに会って、話たいこともたくさんあったけど・・・。
今日は、もういっぱいいっぱいで、まぶたが・・・・。

「少しでも、緊張しないように。少しでも、いい作品にできるように。」
って、せっかくセリフ合わせの練習をしてくれているのに・・・。

気がつけば、ぐっすりと眠りに落ちてしまっていた。

・・・夢の中で、
「愛してるよ。たくみ。」とギイが微笑みながら抱きしめてくれている。
・・・ああ。この腕は・・・。

「んん・・・。ぶちょー・・・・。」

夢の中で、ぶちょーに抱きしめられていた。なんて恥ずかしくって言えないけれど。
すっごく、すっごく、胸がきゅんとするのに、安心する。
そんな不思議な感覚だった・・・・。