一目見た瞬間から、ほけーと見とれてしまって。
気がつけば、視線で追ってしまって。

「いつから、大ちゃんのこと好きだったの?」
「いつから、付き合いだしたの?」

なんて聞かれるけれど、実のところ明確な記憶がない。

・・・きっと、出逢った瞬間から恋に落ちて。
気がつけばいつも隣にいた。という感じで。

テニミュの自分のことで、いっぱいいっぱいだったときも、大ちゃんが「おいで。おいで。」ってかまってくれて、
なんだか親戚のお兄ちゃんに可愛がられているような感じで、ほっとできて。

セリフとちるは、振り間違うわ。で落ち込んで、楽屋の隅でズーンと霊界を作っている僕を
「一緒にメシ食いにいこっか。」と誘いだしてくれて、自分のデビューのときの話をしてくれて。
「お前、まだ16歳だろ~~??俺なんて、大学卒業でそれだったんだぞ。16歳で落ち込まれたら、落ち込むわWW]なんて、明るく笑い飛ばしてくれて、心が軽くなったのを覚えている。

でも、いくら僕が大ちゃんのことを大好きでも、お仕事の大先輩なので。
・・・そんなに気軽に友達とか、仲間とか、そんな関係になれるなんて思ってなかった。

急速に距離が近づいたのは、「たくみくん。」のお仕事の話が決まったから。

学校で、女の子がきゃいきゃいしながら漫画の貸し借りしたりしてたから、そういう(BL)世界が流行っている。というのは知っていた。
「高校生の役なら、現役なわけだし。」
なんて、マネージャーさんに勧められて受けてみたオーディション。
・・・受かっちゃった・・・・。しかも、主役抜擢だってええええ。

現実に、ほとんど付き合ったこともない僕が恋愛モノ、なんてできるかなあ。
しかも、ボーイズ・ラブ・・・・。

いやいや。何事も、勉強だからっ!!!

「テニスの王子さま。」はおにいちゃんが全部持っていたから、読破したけれど、さすがにタクミクンは自分で買うしかないよな・・・。
どれぐらい、あるんだろう。お金、足りるかなあ??

なんて思いながら、本屋さんに行って。

慣れた風に手渡してくれた店員さんに、必要以上の恥ずかしさを感じなくて済んでほっとする。


そんな時。

「まお君。相手役は渡辺君だって。」
「えっ・・・。ぶちょー??」
ってマネージャーさんからのTELで教えてもらって、知っている人だったことにほっとする。
何より、あの安心できる掌と、頼りがいのある背中が思い出されて、不安いっぱいだった心がすうっと落ち着いていくのを感じる。

「そっかあ。ぶちょーかあ。。。」
「なあに。まお君、ものすごく嬉しそう。」
「ふふっ。だって、知ってる人でよかったあ。って。優しいしね。ぶちょー・・・。」

電話を切ってから、ぎゅっとタクミクンの本を抱きしめる。

「そっかあ。ぶちょーかあ・・・。」

んふふ。と思わずゆるんでしまう口元を、本の包みで隠して家路についた。