最近のまおは、仕事仲間との打ち上げやら、打ち合わせやらで呑んで帰ってくることが多い。
仕事仲間と飲んでくる時は「大ちゃん。ごめんなさい。今日はごはん食べて帰ります。」ぐらいのあっさりとしたメールだ。
だが、仕事の付き合いではなく友人として俳優仲間と飲んで帰るときには「大ちゃん。今日琢磨君とごはん食べて帰ってもいい?なんか、食べるものある??」なんて遠慮しいしいの文面が伝わってくる。
まおの友人で、自分の時間なんだから自由にすればいいのに、こうやって律儀にメールをしてくるところに愛おしさを覚える。
「ああ。大丈夫だよ。男の一人暮らし、長かったんだからな。楽しんでおいで?まお。」
と返信してやる。
-------もうすぐ俳優業を卒業する。
それまでに、今まで培ってきた絆を大切にしたい。
この世界で出会うことができた友人と、語り合いたい。

そんなまおの気持ちがわかるから。
俺との時間は、これからいくらでもある。
でも、どこか心の片隅に感じる寂しさ。をこうやって律儀に贈ってれるメールが癒してくれる。
大ちゃんのこと、大好きだよ。琢磨君とごはん食べてくるけど、大ちゃんのことも忘れてないからね。
そんな、メッセージのように思えて・・・・。

一人で簡単に晩御飯を作って、テレビを見ながら食べる。
二人でいるときは、笑いのツボが浅いまおがケラケラと笑いにぎやかなこの部屋なのだけれど。
・・・まおと、一緒に暮らすまではいったいどんな生活をしていたんだろうな。
思い出せるけど、感情は思い出せない。
寂しい、なんて感情は一人暮らしだからと言って持ったことはなかったのに。

ブルルル。と携帯が震える。
着信を知らせるブルーのランプが点灯するだけで、心が躍る。
いそいそとメールを開くと、「今月の請求のお知らせ。」
・・・がっくし。
ポン。とテーブルに携帯を投げ出し、ソファにどさっともたれると再びぶるぶると震えだす携帯。
「次は、何だよ。」
ぶつくさ。と文句を言いながら、メールを開くとそこには「まお。」の文字が・・・。
「じゃん。琢磨君とXXにいるよ~~。」という2ショシャメつきメールに「そうか。そうか。楽しそうだな。まお。」
と、にこにこと笑顔になる。
「・・・俺、こんなにわかりやすい人間だったかなあ?」なんて思いながらも、愛するまおからのメールで一喜一憂してしまう自分が愛おしい。

そして、仕事仲間だろうが、俳優友達だろうが、飲んで帰ってきたときのまおは、決まってハイテンションで、甘えたで。
まあ、パブロフの犬の条件反射?じゃないけど、呑んできたまおはかわいい。ということを学習してしまった俺の脳は、快くまおを送り出してやることができるようになっていた。