「・・・・まお?」

すっかり固まってしまた僕を大ちゃんが覗き込んでくる。

・・・わあ。こんな時どんな顔してればいいんだろう・・・。

恥ずかしくて、嬉しくて、でもなんて感想?を言ったらいいのかわかんなくて。
口元を押さえて、ひやああああと、膝に突っ伏す。

「・・そんなに照れなくても・・・。まお、キスするの初めてだった?」
「・・・うん・・・。」

こくこくと、うなづきだけで答える。

「やったね。じゃあ、俺が初めてなんだ。」
「・・・うん・・・。」

「付き合ったのは?」
「・・・・一応、ある・・・。」

「一応って何だよ。」
「・・・告白されて、一緒に学校から帰ったり、マックでごはん食べたり。でも、友達も一緒だったから、
女の子と友達をどこが違うんだろうなあ。って思って。・・・っていうか、二人っきりになったら緊張して話できなかった。」

なんでこんな話してるんだろう。
そんなことどうでもいいじゃんか。

「あの。部長は・・・?」
「そりゃあ、この年でないほうがおかしいだろ。普通。でも、まおに出逢ってわかったよ。
今まで誰と付き合っても埋められなかった喪失感はお前と出会うためにあったんだなあ。って。
この年になって、一目ぼれだよ。」

ふふっ。と自嘲気味に笑いながら頭をくしゃりと撫でられる。

「・・・えっ。そうだったの?」
「・・・ああ。天使みたいな子が入ってきたなあ。って思った。」

「そんな、天使だなんて大げさな・・・・。」
「本当に、まおの周りだけ光り輝いてたんだ。」

優しくいとおしげな瞳で見詰められ、胸の奥がきゅうんとする。

「ぶちょー・・・。」
「大ちゃんって読んで?」

「だいちゃ・・・・。」

最後まで呼び終らないうちに、二度目のキスが降ってきて。
わあ。間近でみてもやっぱり綺麗・・・。
なんてゆっくり近づいてくる大ちゃんの顔にじいいっと見とれてしまっていた。

「あ~~。明日から、楽しみだなあ。稽古。」
「わわわっ。ほんとだ。なんか緊張しちゃうかな。」

「今までと一緒でいいんだよ。何にも変わらないんだから。変わったのは、俺たちの関係だけで。」
「うん・・・。がんばる・・・。」

ぎゅうっと膝を抱え込んで、顔を埋めてしまった僕の背中を優しく抱いてくれる。
安心できる大きな掌。

告白して、恋が実って、ファーストキスまで一気にすすんで。
たった一日で、もう10年間分ぐらいの時間を過ごしたみたいだった。