「・・ねえ。大ちゃん。」
「・・・ん?」
「別れよ?」
「・・・はあああ??」
いきなり、何を言い出すのかと思えば。
言われた言葉の意味がわからなくて、じいいいっとまおをみつめてしまう。
だって、朝まではあんなにキラキラと「ほらあ。大ちゃん霜が降りてきらきら~~。」なんて
楽しそうにはしゃいでいたのだ。
俺と過ごせるだけで楽しいのお。と言わんばかりにそれはそれは幸せそうに息を弾ませて。
今まで何度も翻弄されてきたけれど、このパターンは初めてだ。
や。でも確かにさっきからソファでくつろいでる俺の背中に、ぺとっ。とくっつきはしたものの、
なんだか物思いにふけてっていた様子だった。
「・・・あの。まお?」
まさか、こんなに唐突に別れを切り出されるなんて思いもしなくて。
まおの真意を計りかねて、おそるおそるたずねる。
「・・・ねえ。別れよう。って言われたら、どうする?」
「どうするって・・・。お前・・・・。」
どうするって、どうするんだろう・・・。
なんか、そんなこと考えたこともなかった。
結婚式で永遠の愛を誓い合ったカップルが、よもや自分たちが離婚する日がくるなんて思いもしないのと一緒で。
まおのいない生活・・・。
この部屋から、まおの存在がなくなって、まおの匂いがなくなって、あちこちに置かれてあるまおの荷物がなくなって、いつかは一緒に過ごした日々さえも思い出に変わ・・・・らないな。
はっきり言って、もう愛だとか恋だとかそんなことはどうでもいいぐらい、俺の一部分なんだから。
それはもう、俺を知っている人間全てが引いてしまうぐらいみっともなく、別れるなんて無理だと懇願してしまうだろう。
諦め悪いと言われようがなんだろうが、苦労して手に入れた幸せなのだ。
そんなに簡単に手放せる訳がない。
不安げに揺れる瞳で返事を待っているまお。
・・・なんで、お前のほうが不安げなんだよ。
「別れられるわけ、ないだろ?」
「・・・よかったあ。」
はあああ。と安心したあ。と大きなため息を漏らすまお。
おいおい。安心したのは、俺のほうだぞ??
「何をいきなり言い出すのかと思えば・・・。なんか、俺、お前不安にさせうようなこと、したか?」
もしかしたら、勝手に誤解して別れを切り出される前に、自分から言っちゃおう!!みたいなことがあったとか・・・・。
「ううん。大ちゃんはいっつもいっぱい、いっぱい愛されてる実感くれてるよ?」
「・・じゃあ、どうして・・・。」
今度は、本格的に甘えたモードになって、ぴっとりとくっついてくる。
「今日ねえ。みんなでしゃべってて。付き合って、1年・3年・5年・10年で必ず倦怠期がきて、一度は別れようって思うもんなんだよ。って教えてもらって・・・・。」
お前、それ鵜呑みにして・・・。
「そんで、もしかしたら大ちゃんもそんなふうに思うのかな?って思って・・・。」
あああ。
よくも、悪くも素直で、純粋すぎるまお。
どっから聞いてきたのか知らないが、頼むから、余計な入れ知恵しないでくれ~~!!
俺の心臓に悪いわ。
「あのな?まお。それは世間一般に・・・ってことで、みんなに当てはまるとは限らないだろ?
まあ。アレだ。
相手がわかってると思い込まずに、そういう節目、節目にちゃんと愛情を伝えなさいよ。っていう
昔の人の知恵みたいなもんじゃないか?」
「・・・そうなの?」
ふーん。とまたまた丸ごと信じているまお。
「・・いや、そうじゃないかなあ?って思うだけ。」
またまた、ふーん。そうなんだあ。って言いながら、もそもそと俺の腕の中にもぐりこもうとする。
もそもそ。・・・ぴたっ。
まおの動きが止まる。
・・・・あ。落ち着いた。
「・・・・頼むから。俺の言うことだけ信じてろよ。お前が思ってる以上に、俺はお前のこと、愛してるんだからな。」
「・・・うん。わかってるよ・・・。」
わかっていても、何気ない一言で突然不安になっていまう生き物なのだ。
人間というものは。
「ああっ。やっぱりここが一番落ち着くなあ。大ちゃん、どこにも行かないでね。」
「行けと言われても、絶対に行かない。まおの側から一生離れない。」
ふんわり。とした感じで「行かないでね。」と言うまおからは、全然切羽詰ったものは感じない。
だからこそ、しっかりと瞳を見て、まおに言い聞かせるように強い口調で伝える。
「大ちゃん・・・。」
「何度も言うけど、男に二言はないからな。」
漠然とした不安。
それはきっと俺のほうが強く持っている。
まおはまだ若い。
純粋無垢な心のままに、俺に告白してくれた。
何でも吸収しやすい柔軟な頭。
年齢の割りに、しっかりしていて大人びてはいるけれど。
その若さゆえに、世間一般から見たら普通の恋愛じゃないことに不安を覚えてしまうことがあるかもしれない。
何度も、何度も語り合ってお互いに信じてはいるけれど。
明日のことなんて誰にもわからないものだから。
嫌いになることだけが、別れじゃない。
まおより9年分長く生きてきただけ、そんな怖さも知っている。
愛しているからこそ、傷つけたくなくて別れることもある。
・・・俺だって、最初は悩みに悩んだものだ。
このまままおの気持ちを受け入れてしまっていいものかどうなのか。
答えはとっくに出ていたのに。
俺がただの先輩でいられないぐらいまおを愛してしまっていた。
泣きたいぐらいに。
「・・・まおは?」
「・・・え?」
「まおは、どうなんだよ。別れよう。って言われて別れられるのかよ。」
「えっ・・・。そんなこと、考えたこともなかった・・・。」
あ。なんだか少し大人気ないぞ。自分。
びっくりしたようにうつむくまおを見て、イライラしてしまう。
「冗談でも、そんなこと言うなよ。心臓に悪い。」
「あ。うん・・・。ごめんね。自分のことばっかりだった・・・・。」
珍しくイラついている俺を見て、はっと気がついたように瞳を雲らせる。
「ごめん・・・。大ちゃん・・・。」
「わかってれば、いいよ。」
泣きそうになるまおを、ぎゅっと腕の中に閉じ込める。
誰を愛するのか、は個人の自由。
神様は、愛を持って人間に自由意志という素敵なプレゼントを与えてくださった。
・・・だからこそ、幸せにもなれば、不安にもなる。
神様。
貴方は、慈悲深く、残酷です。
----------------------------------------------
はああ。やってしまった・・・。塩味大ちゃん。しかもスイートな終わりじゃないっていう・・・。
ごめんなさい。
私、もともとこういうのが好きな人間なんです~~。
「・・・ん?」
「別れよ?」
「・・・はあああ??」
いきなり、何を言い出すのかと思えば。
言われた言葉の意味がわからなくて、じいいいっとまおをみつめてしまう。
だって、朝まではあんなにキラキラと「ほらあ。大ちゃん霜が降りてきらきら~~。」なんて
楽しそうにはしゃいでいたのだ。
俺と過ごせるだけで楽しいのお。と言わんばかりにそれはそれは幸せそうに息を弾ませて。
今まで何度も翻弄されてきたけれど、このパターンは初めてだ。
や。でも確かにさっきからソファでくつろいでる俺の背中に、ぺとっ。とくっつきはしたものの、
なんだか物思いにふけてっていた様子だった。
「・・・あの。まお?」
まさか、こんなに唐突に別れを切り出されるなんて思いもしなくて。
まおの真意を計りかねて、おそるおそるたずねる。
「・・・ねえ。別れよう。って言われたら、どうする?」
「どうするって・・・。お前・・・・。」
どうするって、どうするんだろう・・・。
なんか、そんなこと考えたこともなかった。
結婚式で永遠の愛を誓い合ったカップルが、よもや自分たちが離婚する日がくるなんて思いもしないのと一緒で。
まおのいない生活・・・。
この部屋から、まおの存在がなくなって、まおの匂いがなくなって、あちこちに置かれてあるまおの荷物がなくなって、いつかは一緒に過ごした日々さえも思い出に変わ・・・・らないな。
はっきり言って、もう愛だとか恋だとかそんなことはどうでもいいぐらい、俺の一部分なんだから。
それはもう、俺を知っている人間全てが引いてしまうぐらいみっともなく、別れるなんて無理だと懇願してしまうだろう。
諦め悪いと言われようがなんだろうが、苦労して手に入れた幸せなのだ。
そんなに簡単に手放せる訳がない。
不安げに揺れる瞳で返事を待っているまお。
・・・なんで、お前のほうが不安げなんだよ。
「別れられるわけ、ないだろ?」
「・・・よかったあ。」
はあああ。と安心したあ。と大きなため息を漏らすまお。
おいおい。安心したのは、俺のほうだぞ??
「何をいきなり言い出すのかと思えば・・・。なんか、俺、お前不安にさせうようなこと、したか?」
もしかしたら、勝手に誤解して別れを切り出される前に、自分から言っちゃおう!!みたいなことがあったとか・・・・。
「ううん。大ちゃんはいっつもいっぱい、いっぱい愛されてる実感くれてるよ?」
「・・じゃあ、どうして・・・。」
今度は、本格的に甘えたモードになって、ぴっとりとくっついてくる。
「今日ねえ。みんなでしゃべってて。付き合って、1年・3年・5年・10年で必ず倦怠期がきて、一度は別れようって思うもんなんだよ。って教えてもらって・・・・。」
お前、それ鵜呑みにして・・・。
「そんで、もしかしたら大ちゃんもそんなふうに思うのかな?って思って・・・。」
あああ。
よくも、悪くも素直で、純粋すぎるまお。
どっから聞いてきたのか知らないが、頼むから、余計な入れ知恵しないでくれ~~!!
俺の心臓に悪いわ。
「あのな?まお。それは世間一般に・・・ってことで、みんなに当てはまるとは限らないだろ?
まあ。アレだ。
相手がわかってると思い込まずに、そういう節目、節目にちゃんと愛情を伝えなさいよ。っていう
昔の人の知恵みたいなもんじゃないか?」
「・・・そうなの?」
ふーん。とまたまた丸ごと信じているまお。
「・・いや、そうじゃないかなあ?って思うだけ。」
またまた、ふーん。そうなんだあ。って言いながら、もそもそと俺の腕の中にもぐりこもうとする。
もそもそ。・・・ぴたっ。
まおの動きが止まる。
・・・・あ。落ち着いた。
「・・・・頼むから。俺の言うことだけ信じてろよ。お前が思ってる以上に、俺はお前のこと、愛してるんだからな。」
「・・・うん。わかってるよ・・・。」
わかっていても、何気ない一言で突然不安になっていまう生き物なのだ。
人間というものは。
「ああっ。やっぱりここが一番落ち着くなあ。大ちゃん、どこにも行かないでね。」
「行けと言われても、絶対に行かない。まおの側から一生離れない。」
ふんわり。とした感じで「行かないでね。」と言うまおからは、全然切羽詰ったものは感じない。
だからこそ、しっかりと瞳を見て、まおに言い聞かせるように強い口調で伝える。
「大ちゃん・・・。」
「何度も言うけど、男に二言はないからな。」
漠然とした不安。
それはきっと俺のほうが強く持っている。
まおはまだ若い。
純粋無垢な心のままに、俺に告白してくれた。
何でも吸収しやすい柔軟な頭。
年齢の割りに、しっかりしていて大人びてはいるけれど。
その若さゆえに、世間一般から見たら普通の恋愛じゃないことに不安を覚えてしまうことがあるかもしれない。
何度も、何度も語り合ってお互いに信じてはいるけれど。
明日のことなんて誰にもわからないものだから。
嫌いになることだけが、別れじゃない。
まおより9年分長く生きてきただけ、そんな怖さも知っている。
愛しているからこそ、傷つけたくなくて別れることもある。
・・・俺だって、最初は悩みに悩んだものだ。
このまままおの気持ちを受け入れてしまっていいものかどうなのか。
答えはとっくに出ていたのに。
俺がただの先輩でいられないぐらいまおを愛してしまっていた。
泣きたいぐらいに。
「・・・まおは?」
「・・・え?」
「まおは、どうなんだよ。別れよう。って言われて別れられるのかよ。」
「えっ・・・。そんなこと、考えたこともなかった・・・。」
あ。なんだか少し大人気ないぞ。自分。
びっくりしたようにうつむくまおを見て、イライラしてしまう。
「冗談でも、そんなこと言うなよ。心臓に悪い。」
「あ。うん・・・。ごめんね。自分のことばっかりだった・・・・。」
珍しくイラついている俺を見て、はっと気がついたように瞳を雲らせる。
「ごめん・・・。大ちゃん・・・。」
「わかってれば、いいよ。」
泣きそうになるまおを、ぎゅっと腕の中に閉じ込める。
誰を愛するのか、は個人の自由。
神様は、愛を持って人間に自由意志という素敵なプレゼントを与えてくださった。
・・・だからこそ、幸せにもなれば、不安にもなる。
神様。
貴方は、慈悲深く、残酷です。
----------------------------------------------
はああ。やってしまった・・・。塩味大ちゃん。しかもスイートな終わりじゃないっていう・・・。
ごめんなさい。
私、もともとこういうのが好きな人間なんです~~。