特に不満なんて何もない。

毎日、仲間と笑いあって。
悩みと言えば、色恋沙汰か、就職活動のことぐらいで。
日常に退屈しているのか?と言えば、そうとも言えるし、それなりに楽しいとも言える。
勉強して、バイトして、時間があれば彼女とデートをして。

ドラマチックな出来事があるわけではないけれど、世間一般の普通の大学生。
なのにずっと何かを求めている心。
どこかに、何かを忘れてきたような・・・。

目の前にあるやらなければいけないこと。
仲間と騒ぎ会ったり、スノボやテニスやといった楽しいこと。
全力で打ち込み、退屈なんて感じる時間なんてないはずだった。

時には「愛してる」とささやき、女性と身体を合わせることだってあるけれど。

心から、満足できない。


大学生活の思い出作りや、ちょっとしたバイトのつもりで始めたモデルの仕事。
漠然とした俳優への憧れが、しっかりとした自分の目標になってくる。

ここには、俺の求めている答えはあるのだろうか・・・。


ただ、がむしゃらに他人の人生を演じる。もしかしたら、そこに答えがあるような気がして。
自分の存在意義はどこにあるのか。
役になりきって、みんなにこの心を届けたい-------。

どこかで待っているかもしれない、俺の求めている答え。に届くように。



そして-----------。

運命の出会いをする。

初めての仕事です。と紹介されて入っきた彼。
ドアが開いた瞬間に、枯れ果てた木々もイキイキと息を吹き返すようなオーラを身にまとっている。

まだ、16歳とは思えないような意思の強い瞳。
まっすぐに俺に向けられる熱っぽい視線。
漆黒の髪に、小麦色に焼けた肌。

美形、としか言いようのない整った顔立ちだけれども、この世界にはいくらでも整った顔立ちの人間はいるのに。
なぜか視線を外すことができなかった。