・・・ああ。この前、この映画みて泣いてたの知ってたんだ・・・・。

それで、わざわざこの曲を探してきてくれて。
有名なクリスマスソングではないけれど、今のおれの気持ちを知っていてくれて、寄り添ってくれるのがうれしい。

もうっ。どこまで完璧なんだよ・・・大ちゃん・・・・。

大ちゃんのこの曲を選んでくれた気持ちと、切ない旋律に心が震え、とめどなく流れる涙。

ポーン。

ゆっくりと、大ちゃんが最後の音を弾き終わる。
ぐすっ。と鼻をすすり上げ、涙を拭きながら大ちゃんを見るとゆっくりと鍵盤から指を外し、おれを優しく見詰めてくれている。

「もうっ。下手くそなんて嘘ばっかり。」
「意外と主旋律がはっきりしてるし、ゆったりした曲調だから弾けただけだよ。」

「泣かしちゃったお詫びに・・・。まお、こっちおいで?」

グランドピアノをぐるりと回って、大ちゃんが座っていたイスから少し身体をずらすと、俺が座るスペースを空けてくれる。

「月並みだけど・・・。」

左手で俺の肩を抱き、右手だけで鍵盤を叩く大ちゃんの指先。
何をしても、仕草が美しい大ちゃんの指先。

低くどこまでも響く大ちゃんの深い声が、耳元から心の奥底まで響いてくる。
どこまでも包み込んでくれる大ちゃんの思い。

「どこまで泣かせるんだよお・・・。ばかあ。」

泣かしちゃったお詫び。と言われたけれど、大ちゃんの慈愛に満ち溢れた声色に感動して、
またまた胸があつくなってしまう。

「まお・・・。今年もよろしくな。」

歌い終わった大ちゃんが、涙をすくい取るようにちゅ。ちゅ。と頬にキスをくれる。
強く抱きしめられた肩に食い込む指先が、胸を締め付ける。

「うん。うん。おれも・・・。」

毎年、毎年、思い出に残るクリスマスになったなあ。って思うけれど、今年もきっとずっと忘れない・・・。