今日は久々に大ちゃんとバーで飲むことにした。
お家でコタツに入ってほっこりしながら呑むビールもいいけれど、街のきらびやかなイルミネーションに触発されて、なんだかちょっと洒落た店で飲みたいね。って昨日ベッドに入りながら話していたんだ。
待ち合わせは、直接お店で。ってことになっている。
久々のデートに心がうきうきしてしまい、約束の時間の30分前についてしまう。
さすがにちょっと早すぎたなあ・・・。と思いながら、二杯目のビールを注文する。
「マスター。おかわり。」
手持ち無沙汰でカリカリと、カシューナッツをかじっていると、店のドアが、カランと開く。
あ。ダイチャ・・・んと、見知らぬ女の人。
だれだろう・・・。
「まお。お待たせ。」
と言いながら、片目をつむって女の人に気がつかれないようにごめん、というジェスチャーを送ってくる。
何が、ごめんなのかさっぱりわかんないよ・・・。
「さっき、入り口でばったり会って・・・。大学時代のサークル仲間。東京に就職してたなんて、全然知らなかったよ。・・・こっちは、浜尾京介。俺の俳優友達。」
「わあ。二人に会えるなんて、ラッキイだね。私。」
差し出された彼女の手を複雑な思いで握り返す。
おれの知らない大ちゃんを知っている人・・・。
大ちゃん、俳優友達って・・・。
今日は二人きりのデートのはずだったのに・・・・。
大ちゃんを挟んで、彼女とおれが座る。
「でさあ。あのときのスキーすっごく雪降って大変だったよねえ。」
「ああ。前が全然見えなくて、マジ遭難するかと思った!!」
楽しそうに笑う二人。
時々大ちゃんはこっちを見て、そんなことがあったんだよ?と気を配ってはくれるけれど、全然話題についていけない。
もちろん、おれにだって大ちゃんと出会う前の時間はあるけれど・・・。
こうやって3人で話していると、自分だけ仲間はずれにされたような疎外感を感じる。
わかってる。
大ちゃんだって、わざとじゃない。
入り口で偶然出逢ったって・・・。
ごめんな。ってちゃんと謝ってくれた。
でも・・・。でも・・・・。
言いようのないジェラシーが全身を駆け巡るのを感じる。
楽しみにしてたのに。
大きな舞台が終って、誕生日も終って。
すぐに次の稽古も始まっちゃけど、やっと、やっと大ちゃんを独り占めできる時間ができたと思ったのに・・・。
ガタン。
気がつくと、イスを蹴って立ち上がっていた。
「ごめん、おれ、先に帰るね。・・・大ちゃんは、ごゆっくり・・・。おれとはいつでも会えるけど、その人とは久しぶりだもんね。」
言葉が棘を持ち、二人を突き刺しているのがわかる。
こんな嫌味なこと言うつもりじゃないのに。
と思いながらも次ぎ次ぎと言葉が止まらない。
「・・・じゃ・・・。」
「ちょっ・・・まおっ・・・・・。」
焦る大ちゃんの声が聞こえる。
焦ればいいんだ。
そうやって、不安になって追いかけてきてほしい。
振り向かずに、全速力で駅まで走り、ホームに滑りこんできた電車に飛び乗る。
一人になった瞬間にぶわっとあふれる涙。
すっかり日が暮れて真っ暗な夕闇に浮かぶ、派手なネオンの光が流れてゆく。
おれの心とはあまりにも対照的で。
あのネオンの中で、二人はまだ楽しく飲みなおしているのだろうか・・・。
それとも、おれを追いかけて、店から飛び出してくれている??
大ちゃん・・・。
誰にでも優しく、気配りのできる大ちゃんのことだから、きっときちんと納得いくような説明をして、不快な思いをさせないように話をつけてから、店をでてるよね・・・。
きっと・・・。
流れるネオンを見ているうちに、自分のとった行動を後悔しだす。
渡辺君の友達って、失礼な子ね。とか何とか思われていないだろうか。
わがままな、お友達にふりまわされて、かわいそうね。とか・・・・。
おれのせいで、大ちゃんの評価を落としかねない。と言うことに気がついて。
次のホームで降りて、さっきの店に引き返すけれど、すでに二人はいなくって・・・。
「どこ、いちゃったんだろう・・・。」
携帯を開くけれど、通話開始を押す勇気がでない。
何もないとわかっておるけれど、もしまだ二人一緒にいたら・・・??
想像するだけで、胸がざわざわとする。
「どうしよう・・・。」
呆然と人並みを見詰めるけれど、答えなんて見つかるはずもない。
簡単なことなのだ。
この、画面にタッチして「さっきはごめんね。」と一言謝ればいいだけなのに。
たったそれだけのことに、なんでこんなに指が震えるんだろう・・・・。
「ダメだ・・・。」
携帯を大ちゃんからもらったばかりの鞄にしまうと、再び元来た道を歩き出す。
「どうしよう・・・。」
このまま、大ちゃんの家に行ってしまおうか。
さっきの態度で気分を害しているだろうか。
それとも、このまま実家に帰ってしまおうか・・・・。
でも、そんなことをしたら余計に二人の距離が離れてしまう気がして。
「やっぱり、大ちゃんの家に行こう。」
そう決意して、一歩を踏み出した。
お家でコタツに入ってほっこりしながら呑むビールもいいけれど、街のきらびやかなイルミネーションに触発されて、なんだかちょっと洒落た店で飲みたいね。って昨日ベッドに入りながら話していたんだ。
待ち合わせは、直接お店で。ってことになっている。
久々のデートに心がうきうきしてしまい、約束の時間の30分前についてしまう。
さすがにちょっと早すぎたなあ・・・。と思いながら、二杯目のビールを注文する。
「マスター。おかわり。」
手持ち無沙汰でカリカリと、カシューナッツをかじっていると、店のドアが、カランと開く。
あ。ダイチャ・・・んと、見知らぬ女の人。
だれだろう・・・。
「まお。お待たせ。」
と言いながら、片目をつむって女の人に気がつかれないようにごめん、というジェスチャーを送ってくる。
何が、ごめんなのかさっぱりわかんないよ・・・。
「さっき、入り口でばったり会って・・・。大学時代のサークル仲間。東京に就職してたなんて、全然知らなかったよ。・・・こっちは、浜尾京介。俺の俳優友達。」
「わあ。二人に会えるなんて、ラッキイだね。私。」
差し出された彼女の手を複雑な思いで握り返す。
おれの知らない大ちゃんを知っている人・・・。
大ちゃん、俳優友達って・・・。
今日は二人きりのデートのはずだったのに・・・・。
大ちゃんを挟んで、彼女とおれが座る。
「でさあ。あのときのスキーすっごく雪降って大変だったよねえ。」
「ああ。前が全然見えなくて、マジ遭難するかと思った!!」
楽しそうに笑う二人。
時々大ちゃんはこっちを見て、そんなことがあったんだよ?と気を配ってはくれるけれど、全然話題についていけない。
もちろん、おれにだって大ちゃんと出会う前の時間はあるけれど・・・。
こうやって3人で話していると、自分だけ仲間はずれにされたような疎外感を感じる。
わかってる。
大ちゃんだって、わざとじゃない。
入り口で偶然出逢ったって・・・。
ごめんな。ってちゃんと謝ってくれた。
でも・・・。でも・・・・。
言いようのないジェラシーが全身を駆け巡るのを感じる。
楽しみにしてたのに。
大きな舞台が終って、誕生日も終って。
すぐに次の稽古も始まっちゃけど、やっと、やっと大ちゃんを独り占めできる時間ができたと思ったのに・・・。
ガタン。
気がつくと、イスを蹴って立ち上がっていた。
「ごめん、おれ、先に帰るね。・・・大ちゃんは、ごゆっくり・・・。おれとはいつでも会えるけど、その人とは久しぶりだもんね。」
言葉が棘を持ち、二人を突き刺しているのがわかる。
こんな嫌味なこと言うつもりじゃないのに。
と思いながらも次ぎ次ぎと言葉が止まらない。
「・・・じゃ・・・。」
「ちょっ・・・まおっ・・・・・。」
焦る大ちゃんの声が聞こえる。
焦ればいいんだ。
そうやって、不安になって追いかけてきてほしい。
振り向かずに、全速力で駅まで走り、ホームに滑りこんできた電車に飛び乗る。
一人になった瞬間にぶわっとあふれる涙。
すっかり日が暮れて真っ暗な夕闇に浮かぶ、派手なネオンの光が流れてゆく。
おれの心とはあまりにも対照的で。
あのネオンの中で、二人はまだ楽しく飲みなおしているのだろうか・・・。
それとも、おれを追いかけて、店から飛び出してくれている??
大ちゃん・・・。
誰にでも優しく、気配りのできる大ちゃんのことだから、きっときちんと納得いくような説明をして、不快な思いをさせないように話をつけてから、店をでてるよね・・・。
きっと・・・。
流れるネオンを見ているうちに、自分のとった行動を後悔しだす。
渡辺君の友達って、失礼な子ね。とか何とか思われていないだろうか。
わがままな、お友達にふりまわされて、かわいそうね。とか・・・・。
おれのせいで、大ちゃんの評価を落としかねない。と言うことに気がついて。
次のホームで降りて、さっきの店に引き返すけれど、すでに二人はいなくって・・・。
「どこ、いちゃったんだろう・・・。」
携帯を開くけれど、通話開始を押す勇気がでない。
何もないとわかっておるけれど、もしまだ二人一緒にいたら・・・??
想像するだけで、胸がざわざわとする。
「どうしよう・・・。」
呆然と人並みを見詰めるけれど、答えなんて見つかるはずもない。
簡単なことなのだ。
この、画面にタッチして「さっきはごめんね。」と一言謝ればいいだけなのに。
たったそれだけのことに、なんでこんなに指が震えるんだろう・・・・。
「ダメだ・・・。」
携帯を大ちゃんからもらったばかりの鞄にしまうと、再び元来た道を歩き出す。
「どうしよう・・・。」
このまま、大ちゃんの家に行ってしまおうか。
さっきの態度で気分を害しているだろうか。
それとも、このまま実家に帰ってしまおうか・・・・。
でも、そんなことをしたら余計に二人の距離が離れてしまう気がして。
「やっぱり、大ちゃんの家に行こう。」
そう決意して、一歩を踏み出した。