「ただいまあっ。」

ちょっとうきうきした気分でドアを開ける。
だって、今日は御土産があるから。
まおの喜ぶ顔を想像しただけで、ドアを開ける手もついつい勢いがつくというものだ。

パタパタパタ・・・・。

最近のまおは、スリッパを履いているので、奥から飛んでくる足音がはっきりわかる。

「おかえりっ!!大ちゃんっ!!」

跳んできて、ぎゅっと首にしがみついてくれるのは、いつものお帰りの挨拶。
俺もぎゅっと抱き締め返してから、ちゅ。ちゅ。ちゅ。とただいまのキスをする。
暖房をつけていても、首に回された指先が冷たい。

「大ちゃん、冷たいね・・・。外、寒かったでしょう?」

首の後ろに腕を回したまま、少しだけ上目遣いで心配そうに覗き込んでくる。

「・・・ああ。でも今日は心がほかほかだったよ?」
「・・・どうして?」

首をかしげて、不思議そうな表情をするまお。
ああ。どうしてコイツはこんなにもいちいち仕草のヒトツヒトツが可愛いんだろう・・・・。

「コレ。お土産。」

何の飾り気もないドラッグストアの袋ごと渡す。

「・・・・なあに?」
「お前、最近手足冷たいから。ぽかぽかグッズ。」

ごそごそと、袋からふかふかのアニマルスリッパを取りだして「かわいいっ!!」とにぱあ。と春が来た様に笑う。
「ありがとお。ふっかふかで、きもちいい~~。」
と、両手にはめて、ほっぺにすりすりしている。
ああ。俺にとっては、まおのこの笑顔が何よりの暖房だなあ・・・・。

「・・・なんて、本当は俺が24時間抱き締めて暖めてやりたいんだけどなあ。」
「もうっ・・。また、そういう恥ずかしいこと言う・・・。・・・でも、そうだったら、本当に嬉しい。」

両手にスリッパをはめたまま、ぎゅっと抱きしめられる。
胸にぴったりとくっつけられた頬が、くすぐったい気持ちにさせる。


「ごはん、できてるよ?今日は寒いから、チゲ鍋にしたんだけど・・・。」

キッチンで、ほかほかと湯気を立てている鍋が、待ってくれる人のいる幸せの象徴のようだ。
ドアを開ければ、奥からいつも飛んできて、抱きしめてくれて、湯気のたつ暖かい食事が待っている・・・。
当たり前の日常が、こんな幸せに包まれていることに感謝する。

「わあ。これすっごく気持ちいい~~。」

いつもは、冷え対策で5本指ソックスという色気のないものを履いているまおだけれど、ふかふかの感触が気に入ったらしく、素足になってくれている。
まおのすらりとした足首を包む、ふわふわのファーが何ともオトコゴコロをくすぐる。

--------お買い得、だったな。いろんな意味で・・・・。

そのまま、その足首にキスしたい衝動に駆られるけれど。
せっかくの食事が冷めてしまうので、ガマンガマン・・・・。

相変わらずの猫舌で、はふはふと鍋をつつくまおを眺めながら、こんな時がずうっと続けばいいのになあ。と願わずにはいられない。
俺の腕の中で、俺の目の届くところで、ずっとずっと愛でていたい。

でも、そんなかわいい外見に反して、芯はものすごくしっかりして、男らしいことも知っているから。
こうやって一緒過ごせる日常の幸せの一瞬、一瞬をしっかりと噛み締めて生きよう。


「・・・まお?今日も一緒に風呂はいろ?」
「ええ~~?またあ?二人で入ったら、そろそろ寒いんだよね・・・。」

「じゃあ、お前が先入ってていいから。十分ぬくもったら、教えて?」

はい、これ。と今日買ってきたばかりの入浴剤を渡す。

「わあ。うれしい・・・。」

ふふふ。と楽しそうに笑うまお。

「なんで、そこで笑うんだよっ。」
「だって・・・。なんか、入浴剤と、スリッパもってレジに並んでる大ちゃん想像しちゃった・・・・。」

「お前~~。実は、結構恥ずかしかったりしたんだぞっ。」
「うん。それでも買って来てくれたんだよね?ありがとっ。」

にっこりと微笑んで、ぎゅっと抱きついてくれる。
・・・・反則だ・・・。まお・・・。
6年間の付き合いで、俺の扱い方をよくマスターしたなあ。と思う。
本人は無意識だから、予想ができない反応で・・・。

でも、こうやってまおの手のひらの上で転がされているのが、なんだかんだで嬉しかったりして・・・。

「じゃあ、後で呼ぶね?」

するり、と洋服を脱いでゆくまおの背中を見詰めながら・・・・。
「もう、いいよ?」
と、乳白色のお湯に包まれて俺を呼ぶまおを想像し・・・・。

あ。ヤバイ・・・・。

こんなに寒いはずなのに、カラダが熱くなってきた・・・。


冷え性のまおがいれば、俺は暖房要らずだなあ・・・・。