「何にしよっかなあ・・・。」

まおからもらった青空のプリントされたメモ用紙。
きちんと31歳の俺の毎日、ということで365枚あるんだそうな・・・。

「まお~~??これって、まとめて使っても、オッケー?」
「あ・・・。うん・・・。会えない日もあるもんね。」

ああ。何にしよっかなあ・・・。

「まおの笑顔がみたい。まおの声が聞きたい。まおの手料理が食べたい。まおを抱き締めたい・・・・。」

つらつらと、思いつく限りの希望、を口に出してみる。

「ちょっ・・・。大ちゃんっ!!真面目に考えてよお・・・。」

真っ赤になって、尊大に照れるまお。

「俺は至って真面目だけど?」
「だって・・・・。それって、わざわざお願いしなくても、フツーにしてることじゃん・・・。」

「わかってないなあ。まおは。その普通、が一番いいんだよ。」

当たり前のようにある、幸せな日常。
まおの芸能界卒業の相談を受けた日から、そんな日常が今まで以上に毎日、毎日、とても大切に感じるようになった。

「普通にまおが隣にいて、当たり前のように笑ってくれる。・・・それが、一番の望み、かなあ?」

じーっと黒目がちな瞳を瞬きもせずに俺に真っ直ぐに向け、自分なりに考えているであろうまお。

「・・・うん。わかった。いつでも、大ちゃんに笑顔をあげれるように、頑張る・・・・。」

強い意志の光を放ち、キラリと輝く瞳が俺を安心させる。
もう、まおは悩んでいない。
きちんと自分の選んだ道を歩み、離れていてもしっかりと俺の手を握っていてくれる。

ああ。青空にはそんな思いも込められていたのかもしれないなあ。
365日、ずうっとこの青空の下で、二人は一緒だよ。っていう・・・・。


新聞を取りに、ポストまでゆくと、真っ白な封筒が一枚。
誕生祝いのダイレクトメールにしては、シンプルな封筒。

「誰からだろう・・・。」

部屋に入ってから、一人で封を開ける。

「・・・・・・。・・・・・・。・・・・・・・・・・・・。」

ああ。なんと言ったらいいのか・・・。
本当に、本当にまおは愛されてるなあ。そして、みんなあったかいなあ・・・・。
胸がほんわかして、じんわりと熱いものがこみ上げてくる。

「ま~おっ?お前にも、伝言。」

ああ。まおと一生あゆんでゆこう。
そんな新たな決意を胸に、たった今、開けたばかりの手紙をまおに渡す。


渡辺君へ。

31歳のお誕生日おめでとうございます。

貴方の未来が、今年も輝かしいものでありますように。

6年間、京介を側で見守ってくださり、本当にありがとうございます。

京介は、これから違う道へと進みますが、どうか末永く見守ってやってくださいね。

P.S

京介へ。

ケーキは上手に焼けましたか??
あんまりわがまま言って、渡辺君のこと困らせちゃダメだからね。
渡辺君に心配かけないように、しっかりお勉強がんばってね。

                                   浜尾京介の母より。


「何・・・?これ・・・・???」

読み進むにつれて、まおの目がまんまるになってくる。

「まお。俺たちの関係、お母さんに話してたんだ?」
「ううん。全然・・・・。」

確かに文面だけを読めば、単なるお祝いの言葉と、感謝の気持ちに思えなくもないけれど。
俺への手紙に、一緒にいることを前提でのまおへの追伸があるあたり・・・・。

「やっぱり、母親ってあなどれないなあ。」
「本当に・・・。」

なんだかまおの家族も俺たちのことをずっと前からわかっていて、黙って見守ってくれていた気がして、
感謝と愛情の深さに胸の奥がじんわりとする。

二人でソファに肩を並べて座り、ずうっとその手紙を一緒に眺めていた・・・・。

俺たちの未来へと続く、メッセージ。



二枚目には白紙の便箋。
ここには俺たち自身が二人で歴史を刻んで、まおのお母さんに胸をはって報告できるようにしよう。




------------------------------------------------


ここまでで、誕生日のお話はおしまいっ!!

今からPTAのお仕事です。

いってきま~~す。