「・・・あれ?まお、なんか甘い香りがする・・・。」

いつものお帰りのキスの後に、ぎゅっと抱きしめられるとくんくんとおれの匂いをかぐ大ちゃん。

あ・・・。

家出る前にケーキ焼いてたからだ。
一時は、毎日のように母さんと一緒に作っていたケーキ。

でも、最近は自分の仕事とか、自分の芸能界をお休みします発表をどう伝えるか、で頭がいっぱいで、忘れていたわけじゃないんだけど、ご無沙汰してしまっていた。

いつもの日常を取り戻しつつある最近は、ふと大ちゃんの誕生日どうしよっかなあ。
って考える余裕がでてきた。

大ちゃんのことを考えながら焼いていたケーキは、少しだけ焦げた甘い砂糖の香りがいつも幸せな気分にさせてくれる。
ほかほかの焼き立てをふうふうしながら口に放り込むあの瞬間の幸せ。
もうすぐ、二人でそんな時間が共有できるんだなあと思うとうきうきしてくる。

「ああ。でも、本当にプレゼントは何にしよう・・・。」



ソファに寝転がってくつろいでいる大ちゃんの横にコーヒーを二つ持って腰掛ける。

「ねえ?大ちゃん。大ちゃんの好きなものって何?」
「・・・・まお。」

う~~ん。と考えた末にくれた答えが・・・・・コレ。

「いや・・・。人じゃなくて、モノ。」
「好きなものって・・・・難しくない?・・反対に、まおの好きなものって何だよ。」

う~~ん。確かに。
好きな・・・好きな・・・・大ちゃんのはらりと垂れた前髪?
洗濯機に入れる前の香水と大ちゃん自身の香りの混じったシャツの匂い?
あ、違う違う。モノ、だよねえ・・・・・。

ゴルフ?も好きなことだし・・・・。

すっかり黙ってしまったおれを見て

「ほら。好きなものって難しいだろ?」
「・・・あ、うん。ほんと・・・・。」

単刀直入に好きなものを聞くのは諦めよう。

「じゃあさあ。行きたいところとか、ある?」
「う~~ん。旅行には行きたいなあ・・・。でも、まとまったオフがないしなあ。」

「旅行かあ・・・・。」

うう。スケジュール的に旅行をプレゼント、は難しいなあ。

「まおと一緒なら、どこに行っても楽しいよ?」
「あ。うん・・・・。ありがと・・・。」

あれえ??なんでおれがお礼言ってるんだ~~!!

「じゃあ、じゃあっ。したいこととかっ!!」
「・・・なあに?まお、誘ってんの?」

ふふ。と意地悪で嬉しそうなにやにや笑いを浮かべる大ちゃん。

「あのさあ。まお。俺のこと思って色々悩んでくれてるんだろうけど・・・。まおがいてくれたらそれでいいから。」
「だって・・・。何か思い出に残るようなものあげたいんだもん。」

うう。なんだか落ち込んでしまう。
大ちゃんはおれが知らないうちに、あんなに色々考えてくれて、感動の連続をくれたのに。

去年も色々考えたのに、結局大ちゃんは全部お見通しで。
おれ、顔にでやすいからなあ・・・。
サプライズ考えても、全部ばれちゃうんだよね・・・・。

しゅん。としてしまったおれの頭をなでなでしてちゅ。と軽いキスをくれる。

「まおの思いのこもったプレゼントなら、何でもうれしいよ?」
「うん。わかってるけど・・・。」

「どんなプレゼントでも、形あるものはいつかなくなるんだし。どこに行っても、いい思い出にはなるだろうけど。・・・・消えないものは、まおの気持ち。31回目の誕生日に一生懸命考えて、何かしてあげたい、って思ってくれた気持ち。」

あ・・・・。

だから、大ちゃんはサプライズが好きなんだ。

相手がどんな反応示すかな?何をしてあげたら、一番喜ぶかな?って一生懸命考える時間がとても幸せで、楽しくて・・・・。

そうだ。おれだって、何をしてあげよう、どんなことして過ごそう、って考えている時間はとっても幸せだった。

「まおが色々悩んでくれるのはとってもうれしいけど・・・。
そんな顔されたら、逆効果だよ?」
「あ。ごめん・・・。ありがと・・・。」

一番大切なことを忘れていた。
何をあげて、どんなことをするのか、よりも愛する人の誕生日を一緒に祝えることを大切にするべきだったのに・・・・。

「強いて言うなら・・・。朝起きて一番に「大ちゃん愛してる。」って言って??」
「わかっ・・・・た・・・・・。」

なんだか面と向かって言われたら恥ずかしい・・・。
いつも自然に言っていることだけど、改めて意識すると・・・・。

かああああ。

なんだか顔に熱が集まってきて、うつむいていると。

「あ~~。まおちゃん照れてるっ!!やっぱ、かわいいなあ。お前。」
「・・・かわいくないから。」

「ああ。楽しみだなあ~~。朝起きて目が覚めた瞬間に、まおの愛してる。のプレゼントっ!!」
「や。ちょっと、まだ決まってないから~~。」


でも、きっと言ってしまうのだ。
大ちゃんがしてほしい、と言うことならば。

こんなプレゼントにもならないようなことで、こんなにも楽しそうに笑ってくれる大ちゃんが大好きだ。
ああ。本当にこの人を好きになってよかったあ、と心底思うよ。

抗議のツッコミを入れながらも、おれの口元もゆるみっぱなしで・・・・。

・・・はっ!?

大ちゃんを幸せにしてあげるつもりが、またおれが幸せになってるじゃん。

・・・・まあ、いっか。

結局のところ、お互いに相手の幸せは自分の幸せ、ってことなんだよね。



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あと3日ですね~~~~。

もう、当日のお話はなんとなく決まっているので。

やっぱり大ちゃんは明るく楽しく・・・まおの幸せが俺の幸せ。って思ってそう~~~。