学院内を通り抜ける風が、一段と冷たさを増し。
はらり。はらり。と紅葉した葉が舞い落ちる。
寮から本館までの道のりも、トンネルを抜けると、降り積もった葉を踏みしめるたびにカサカサと音をたてる。
相変わらず、僕は二人部屋で一人暮らし。
変わったことと言えば・・・・。
授業が終わると、先生に会いに行くこと。
「先生っ。たっだいま~~。」
机に向かって、なにやら作業中の背中に抱きつく。
「わお!!浜尾、あぶないっ!!データ、消すとこだったろお。」
「ごめん。ごめん。・・・何、してたの?」
先生の手元には、進路希望の山。
「この時期、受験生は不安定になるからなあ。エスカレート組みか、進学組みか、就職組みかで全然違うもんなあ。・・・・ん?お前も、まだ提出してないの?」
「ん・・・。エスカレートでいいや、って思ってたけど、ちょっと思うことあって・・・。」
「外部受験、とか?」
「・・・先生、笑わない?馬鹿にしない??」
「するわけないだろお。浜尾の夢、なら全力バックアップだ。」
「あのね・・・・。お医者さん、目指したいなあって・・・・。ややや。自分の成績はよくわかってるんだけどっ!!先生みたいになりたいっていうか、ずっと側にいたいっていうか・・・。」
目を見開いて動きを止めてい先生。
あああ。やっぱり呆れるよね。こんな時期から進路変更、なんてさ。しかも、医者希望、なんてさ。
「お前、自分で言ってる意味、わかってる?俺をどうしたいわけ??」
ぎゅううううって、息もできないぐらいに抱きしめられる。
「うれしいが、すぎるよ。浜尾・・・。」
「あ。でも、あくまで希望、だから・・・・。」
「お前、勉強はセンスあるからやる気になれば、なんとでもなるよ。現役合格、にこだわらなくてもいいんだし。・・・ってか、さすがに今から、じゃあ難しいわな。祠堂の医学部も足切りあるし。」
「ほんとに、大丈夫って思う・・・??」
「なんとなく、医者になっちゃた俺に希望を与えてくれた浜尾、だそ。もっと自分に自信持てよ。」
反対に、どうして、いつも先生はそんなに自信満々でいられるんだろう・・・・。
「うん・・・。あのね・・・。進路の話で思い出したんだけど、卒業したらどうしよう・・・。大学行くなら一人暮らしさせてもらう予定だったんだけど・・・・。」
「あ。それ、俺も考えてた。浜尾が嫌じゃなければ・・・・。の話だけど、俺のところに来ないか?」
「えっ?だって、先生、ここはどうするの・・・?」
ばさり。と資料の束を渡される。
「もともと、俺は臨時で来ただけだし。ちゃんと新しい先生みつかってるよ。ほら。写真。
それで、これが新しく引っ越す物件の候補リストだろ。」
「・・・・・・これが、養子縁組の書類。おばさんには弁護士通して話しといたから。浜尾の意思にまかすってさ。・・・どう??」
「・・・どうって・・・・どう??」
ちょっと待って。話の展開が速すぎてついていけないよお。
「渡辺京介になる気はないかってこと。名実ともに、お前を守りたい。一生責任を持って。」
ぎゅっと両手を握られて、真っ直ぐに見詰められて。
それって、ケッコンするってこと・・・?・・・あ。違うか。男同士、だもんな・・・。
養子?って、僕が大ちゃんの子供???
「ええと・・。まだ、意味がよく理解できてない気がするんだけど・・・。」
「まあ、書類上、はどうでもいいんだけどさ。俺にまおの一生ちょうだい。ってこと。卒業しても、ずっと一緒にいたいから・・・。ちゃんと、大学の費用も俺が面倒みるし。誰にも、文句は言わせない。」
それって・・・・。
先生の一生を僕にくれるってこと・・・??
「いいの・・・?先生・・・。そんな一生のことを簡単に決めちゃって・・・。」
「簡単、じゃないよ。お前に惚れたときから、ずっと考えてた。どうやったら、お前とずっと一緒にいられるのか。これからも、守っていけるのか。・・・信じろ、って言っておきながら、卒業したらさよなら。なんて薄情な男に見えた?」
「あっ・・・。や・・・・。そういう意味じゃなくて、そこまで考えてなかったなあ。って。
毎日、こうやって保健室に遊びにきて、先生と会えるだけで、幸せだったから。」
「・・・卒業したら、一緒に暮らそう?」
蕩けそうに甘く微笑まれて。
先生が本気、でそんなに色々考えてくれていたなんて、全然知らなくて僕はのほほんと甘えていただけで。僕の気がつかないところで、いっぱい、いっぱい、想像以上に大きくてあったかい愛情で包んでくれている先生。
「・・・あいしてるよ。」
「きょうすけ・・・・・。俺も、愛してる・・・・・。」
ああ。今日はたくさん話す事がありそうだ。
進路のこと。
新しい住まいのこと。
養子縁組のこと。
「先生・・・。今日、先生の部屋に泊まってもいい・・??」
「じゃあ、寮長に浜尾が熱だしました。とでも言っておくよ・・・・。」
ちゅ。と交わされるキス。
「せんせ?熱だした生徒とキスしたら、うつっちゃうよ?」
「じゃあ、腹痛。」
「ええ~~?もっとかっこいい病名がいい~~。」
「ばーか。かっこいい病名なんかにしたら、明日元気に学校行ってたらあやしまれるだろ?」
「じゃあ・・・・。せめて、頭痛・・・。」
「わがままだなあ。キョウスケは。」
キョウスケ・・・・・。くすぐったい呼ばれかた。
先生と同じ苗字になったら、「浜尾」って呼べなくなるもんね・・・。
あ。まだちゃんと返事してなかったや・・・。
でも、わかってくれてるよね。先生。
僕こそ、どんなに貴方と一緒にいたいか。渡辺京介。なんて、どんなに嬉しいことか。
いつだって強引な先生。
でも、それが僕にとってのベストだってことは、十分にわかってるから・・・。
はらり。はらり。と紅葉した葉が舞い落ちる。
寮から本館までの道のりも、トンネルを抜けると、降り積もった葉を踏みしめるたびにカサカサと音をたてる。
相変わらず、僕は二人部屋で一人暮らし。
変わったことと言えば・・・・。
授業が終わると、先生に会いに行くこと。
「先生っ。たっだいま~~。」
机に向かって、なにやら作業中の背中に抱きつく。
「わお!!浜尾、あぶないっ!!データ、消すとこだったろお。」
「ごめん。ごめん。・・・何、してたの?」
先生の手元には、進路希望の山。
「この時期、受験生は不安定になるからなあ。エスカレート組みか、進学組みか、就職組みかで全然違うもんなあ。・・・・ん?お前も、まだ提出してないの?」
「ん・・・。エスカレートでいいや、って思ってたけど、ちょっと思うことあって・・・。」
「外部受験、とか?」
「・・・先生、笑わない?馬鹿にしない??」
「するわけないだろお。浜尾の夢、なら全力バックアップだ。」
「あのね・・・・。お医者さん、目指したいなあって・・・・。ややや。自分の成績はよくわかってるんだけどっ!!先生みたいになりたいっていうか、ずっと側にいたいっていうか・・・。」
目を見開いて動きを止めてい先生。
あああ。やっぱり呆れるよね。こんな時期から進路変更、なんてさ。しかも、医者希望、なんてさ。
「お前、自分で言ってる意味、わかってる?俺をどうしたいわけ??」
ぎゅううううって、息もできないぐらいに抱きしめられる。
「うれしいが、すぎるよ。浜尾・・・。」
「あ。でも、あくまで希望、だから・・・・。」
「お前、勉強はセンスあるからやる気になれば、なんとでもなるよ。現役合格、にこだわらなくてもいいんだし。・・・ってか、さすがに今から、じゃあ難しいわな。祠堂の医学部も足切りあるし。」
「ほんとに、大丈夫って思う・・・??」
「なんとなく、医者になっちゃた俺に希望を与えてくれた浜尾、だそ。もっと自分に自信持てよ。」
反対に、どうして、いつも先生はそんなに自信満々でいられるんだろう・・・・。
「うん・・・。あのね・・・。進路の話で思い出したんだけど、卒業したらどうしよう・・・。大学行くなら一人暮らしさせてもらう予定だったんだけど・・・・。」
「あ。それ、俺も考えてた。浜尾が嫌じゃなければ・・・・。の話だけど、俺のところに来ないか?」
「えっ?だって、先生、ここはどうするの・・・?」
ばさり。と資料の束を渡される。
「もともと、俺は臨時で来ただけだし。ちゃんと新しい先生みつかってるよ。ほら。写真。
それで、これが新しく引っ越す物件の候補リストだろ。」
「・・・・・・これが、養子縁組の書類。おばさんには弁護士通して話しといたから。浜尾の意思にまかすってさ。・・・どう??」
「・・・どうって・・・・どう??」
ちょっと待って。話の展開が速すぎてついていけないよお。
「渡辺京介になる気はないかってこと。名実ともに、お前を守りたい。一生責任を持って。」
ぎゅっと両手を握られて、真っ直ぐに見詰められて。
それって、ケッコンするってこと・・・?・・・あ。違うか。男同士、だもんな・・・。
養子?って、僕が大ちゃんの子供???
「ええと・・。まだ、意味がよく理解できてない気がするんだけど・・・。」
「まあ、書類上、はどうでもいいんだけどさ。俺にまおの一生ちょうだい。ってこと。卒業しても、ずっと一緒にいたいから・・・。ちゃんと、大学の費用も俺が面倒みるし。誰にも、文句は言わせない。」
それって・・・・。
先生の一生を僕にくれるってこと・・・??
「いいの・・・?先生・・・。そんな一生のことを簡単に決めちゃって・・・。」
「簡単、じゃないよ。お前に惚れたときから、ずっと考えてた。どうやったら、お前とずっと一緒にいられるのか。これからも、守っていけるのか。・・・信じろ、って言っておきながら、卒業したらさよなら。なんて薄情な男に見えた?」
「あっ・・・。や・・・・。そういう意味じゃなくて、そこまで考えてなかったなあ。って。
毎日、こうやって保健室に遊びにきて、先生と会えるだけで、幸せだったから。」
「・・・卒業したら、一緒に暮らそう?」
蕩けそうに甘く微笑まれて。
先生が本気、でそんなに色々考えてくれていたなんて、全然知らなくて僕はのほほんと甘えていただけで。僕の気がつかないところで、いっぱい、いっぱい、想像以上に大きくてあったかい愛情で包んでくれている先生。
「・・・あいしてるよ。」
「きょうすけ・・・・・。俺も、愛してる・・・・・。」
ああ。今日はたくさん話す事がありそうだ。
進路のこと。
新しい住まいのこと。
養子縁組のこと。
「先生・・・。今日、先生の部屋に泊まってもいい・・??」
「じゃあ、寮長に浜尾が熱だしました。とでも言っておくよ・・・・。」
ちゅ。と交わされるキス。
「せんせ?熱だした生徒とキスしたら、うつっちゃうよ?」
「じゃあ、腹痛。」
「ええ~~?もっとかっこいい病名がいい~~。」
「ばーか。かっこいい病名なんかにしたら、明日元気に学校行ってたらあやしまれるだろ?」
「じゃあ・・・・。せめて、頭痛・・・。」
「わがままだなあ。キョウスケは。」
キョウスケ・・・・・。くすぐったい呼ばれかた。
先生と同じ苗字になったら、「浜尾」って呼べなくなるもんね・・・。
あ。まだちゃんと返事してなかったや・・・。
でも、わかってくれてるよね。先生。
僕こそ、どんなに貴方と一緒にいたいか。渡辺京介。なんて、どんなに嬉しいことか。
いつだって強引な先生。
でも、それが僕にとってのベストだってことは、十分にわかってるから・・・。