「僕のほうこそ、先生に会えていなかったらどうなっていたか・・・。
なのに、先生のこと避けるようなことしてごめんなさい。好きになっちゃいけない。って思えば思うほど、忘れられなくて。顔を見るのがつらかったから・・・。」
「じゃあ。今は・・・・?」

頬を両手ではさまれて、真正面から瞳を覗き込んでくる。
先生の真剣な目。いつもの包み込んでくれるようなやわらかくて、やさしい瞳じゃなく、僕の心までストレートに突き刺さるような。

「今・は・・・・。」

泣きじゃくって、ひどい顔をまじまじと見詰められていることが、恥ずかしい。
・・・とかって、ことじゃないよね・・・。

「まだ、しんじられない・・・・。」
「じゃあ、信じろよ。」

先生の顔が近づいてきて・・・・。ふわり。とくちびるが重ねられた。
あたたくて、やわらかい。
ドキン。と心臓が跳ね上がるけれど、しばらくするとまるで先生そのもの、みたいな安心感に心が満たされて。

「せんせ・・・・。僕も、あなたのことが好き・・・・・。」

そうささやいて、先生の胸に頬をうずめ、背中に腕をまわすと、そっと抱きしめた。

「浜尾・・・。これからも、そばにいて、お前の涙を笑顔に変えさせてくれる?」
「うん・・・。先生がいてくれたら、一人も怖くないよ・・・。」

「・・・・ううん。一人じゃない、よね?」
「ああ。ずっと一生、お前の家族の分まで、一緒になんでも分かち合おう。」

指先を絡めあい、ふたたび重ねらる唇。

父さん、母さん、兄さん。
一人ぼっちになってしまった僕のために、きっと先生と出会わせてくれたんだね・・。
ありがとう・・・。今、とっても、幸せだよ・・・・。


「今日は一日、ゆっくりしていけよ。入寮のことは、どうする?」
「別に隠してるわけじゃないんだ。もう、現実はしっかり受け止めてる。でもね・・・。話そうとすると、発作が起きそうになって・・・・。」

「じゃあ、3-Cの担任に連絡とって、事情を説明しといてもらうか?先に言っちゃえば、余計な詮索も入らないだろうし。」
「ん・・・。ありがと・・・。」

「じゃ、決まり!!・・・さあさあ。もう少し休んどけよ。」

とベッドに押し込まれ、カーテンを閉められ。

「俺、最近お前のこと気になって、事務仕事溜めすぎだったから、仕事するわ。」

もう少し抱きしめられていたかった気もするけれど、ここは神聖な保健室。先生はお仕事。
カーテン越しに、先生のパソコンをうつ音が聞こえてきて、同じ空間でこうやって過ごしていることに口元がゆるんだ。


・・・・まだ、信じられないよ・・・・・。
先生と両思い、になれたなんて。