最近の俺たちは忙しい。

毎日お互いスケジュールぎっしりで、一緒にいても、台本とにらめっこだったりする。
そんな時に、プレゼントのように降ってきた、映画の共演のはなし。

ベッドの上で二人で並んで台本を広げる。

「読み合わせでもしとくか。」

なんとなく、いつもの役割分担で、ナレーションは俺。
あり?これって、まおのセリフほとんどない・・・・・。

「・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」

まおが、目線で台本を追っている。
それでも、一通り読み終わって。

「これ、すっごく難しいよお。ココロを閉ざしてるんでしょ?みんなに。セリフ覚えるとかじゃなくて、全部感情だけで見せないといけないんだ。」
「まおの細かい目の表情とかは、俺も尊敬するぐらいだから。大丈夫だよ。」

「そっかなあ。ココロを閉ざした歩・・・・。タクミクンは、ギイが・・・ダイチャンがいたもんなあ。」

ふふ。と俺のほうをみて微笑むまお。
あの時の楽しかった撮影を思い出しているみたいだ。

「これ、だいちゃんも拒絶してるよねえ。」
「どうかなあ?でも、気にはしてるんじゃない?」



なんだかんだで、忙しくなって、あまりプライベートで二人で、この話をすることがないまま、撮影の日を迎えた。
途中から合流するまお。
いつもそうだけど、衣装を着た瞬間にまおは雰囲気ががらりと変わる。
普段はあんなに可愛くて、ほわほわして、天然なのに、今は急に笑わなくなって、共演者の人たちとも群れていない。
じっと下を向いて、爪を噛んでいる。

ああ。こうやって役を作ってきたんだ。
構いたいけど、構えない。
ああっ。もう、じれったいなあ。
せっかくの共演なのに、じゃれあえないのがさみしい。

もちろん、撮影中は拒絶のオーラが出ていて、どうやってこのココロを開いてやればいいのか・・・。
と、俺も役に入ってしまって、苦しくなる。

「おつかれさまでしたあ~~。」

今日の撮影が終わる。

「ま~~おっ。お疲れさまあ。一緒に部屋帰ろっ!!」
「あ。大ちゃん、おつかれさまあ。」

にこお。と天使の微笑をくれるまお。
あああ。やっぱり癒されるなあ。この笑顔。
このまま、ここで抱きしめたいっ!!!!
・・・けど、いかん。いかん。今回は、二人の関係はばらしていない共演者達。

「お先です~~。」

さりげなく、まおの肩を抱いて、部屋へと向かう。
横井監督、ありがとうございますっ!!
まおと同室にしていただいて・・・。潤い、補給してまた明日がんばりますね!!

部屋に着くなり、
「眠い・・・・。先、シャワー浴びてくるね・・・・。」

と、ハグもしまいまま、バスルームへと直行するまお。
えええええ??せっかくの同室なのに??
まあ、仕方がない。まおもハードスケジュールだったんだから・・・。

おとなしく、ベッドに座ってテレビをつけて待っている俺。
気分がリセットされたら、きっとまおから甘えてきてくれるかな??
「疲れたよおお。大ちゃん、眠らせて~~。」とかって抱きついてきてくれるだろう。

なのに。なのに。

風呂から上がってきたまおは、ふらふらとベッドに行き、ぱふん。つっぷしてしまう。

「ま~お~~。もう、寝ちゃうのかよ~~?」
「んん~~。だって、眠いんだもん~~。あゆむ・・・。疲れた・・・・。」

はいはい。って感じで、俺を抱きしめてくれるけど、しばらくすると背中に回した手の力が抜けていって・・・。スースーと寝息をたてるまお。
ああ。ダメだ。こりゃあ・・・・。
まあ、今日は神経つかったもんなあ。

まおがかまってくれないのに、一人で起きていてもつまらない。
俺も、さっさとシャワー浴びて、寝るか。

まおを起こさないように、そーっとシャワーを浴びて、出てくると・・・。
やっぱり、まだスースーと気持ちよさそうに寝息をたてているまお。
じ~~っとその寝顔を見ていると、やっぱり「かまいたいっ!!!」昼間も、かまえなかったのにっ!!
って、むらむらしてきて。

でも、ストレートに起こすと、眠いのに。って怒られるから。

自分のベッドの上で、ぴょんぴょん跳ねてみる。

「まおちゃ~~ん。なんか、跳ねてるよ~~。ほら。なんか、感じないかなあ??」

スーピー。スーピー。
全く俺に気がつかずに、気持ちよさそうに寝息を立てるまお。
・・・・むなしい。
恥ずかしいじゃないかあ!!俺一人で、ベッドの上でぴょんぴょんしてさあ。

「ま~~お~~~!!」

せっかくの同室なのに、ちっともかまってくれないまおの寝顔が、無性に腹立たしくなって、バフン!!とダイブする。

「ダイチャン・・・・。イタイ・・・・・。」
「あ!!おきたあ??まお。」

「おきたあ?じゃないよ・・・。おれ、ねむいって言ったでしょ・・・?」
「だあってさあ。お前、8時にねたんだぞ。まだ、10時。2時間寝たし、いいじゃん。」

「寝入りばなが、一番ねむいの・・・・。」

そういって、またまどろもうとするまお。

「ま~~お~~。せっかく同室なのに~~。」

布団ごと、まおをゆさゆさ揺さぶる。
んん~~。とかなんとか、寝言のようなものを発しながらも、目をあけようとしたいまお。

「お前、こうなったら実力行使だからなああ。」