「まお・・・・。どういうこと・・・・??」

「えっ・・・!?こっちが聞きたいよお・・・・。」

「なんで、泣いてたの・・・・??」

「なんでって・・・・・。」

本人目の前にして、言える訳、ないじゃんかあ・・・・・。
タッキーさん・・・・。そんな急に、急用なんてひどいよお・・・・・。

「・・・・・あのさあ。まお。なんで、タッキーに抱きしめられた訳??」
「・・・・えっとお・・・。それは・・・・。おれが、泣いちゃったから??」

「・・・・だから、なんで泣いてたの??」
「・・・・・好きな人がいるんだけど、どうしたらいいかわかんなくて・・・・。」

「・・・そんな、泣いちゃうぐらい、好きなんだ・・・??」
「・・・うん・・・。もう、ものすごく、好き。」

ああ。どうしよう・・・・。目の前に、あんなにも恋焦がれたダイチャンがいる・・・・・。
視線が、合せられない・・・・・。

食べかけの、イチゴショート。

「すっごく優しくって・・・・。カッコよくって・・・・・。オトナで・・・・・・。おれこと、弟みたいに可愛がってくれ・・・・・・。」

最後まで言えずに、胸が熱くなって、大粒の涙が、またポロポロと流れてしまう。

-----------ケーキの甘い匂いに混じって、ふ。と感じる愛しい香り。
-----------ぎゅ。と抱きしめられる、あの懐かしい感触・・・・・。


「なあ・・・・・?まお・・・・。それ、俺のことかもって・・・・。うぬぼれても、いい・・・・??」

言葉にならず、うんうん。と、大ちゃんの腕の中で、うなずく。

「・・・まおのこと。恋として好きだって・・・・。告白しても・・・いい??」

胸が熱くなり、信じられない思いで、うん。うん。と何度もうなずく。
とめどなく流れる涙が、大ちゃんのシャツを濡らす。

「大ちゃん・・・・。好き・・・・・・。」

言っても、いいんだ。この一言を。
何度も、何度も、飲み込んだこの一言を。

ただのお気に入りの後輩。かわいい弟。好きになっても、迷惑をかける。
そうやって、自分に言い聞かせていた、感情を・・・・・・。

「だいちゃああん・・・・・・。好きだよお・・・・・。」

あふれる感情のままに、目の前にあるぬくもりを、しっかりと抱きしめて。
ぎゅううっと、抱きしめてくれる力強い腕に、心がひたひたと満たされてゆくのを感じる。

「俺も、あいしてるよ・・・・。まお・・・・・。」

そっと、頬に触れる、大ちゃんのくちびる。

「まおが、傷つくかもって思って・・・・・。なかなか言い出せなくて・・・・。ごめん・・・な??」
「・・・・なんで、傷つくの・・・・??こんなに、好き、なのに・・・・・。」

「だって・・・・。男同士だし・・・・。まお、まだ高校生だし・・・・・。いろいろ考えちゃって・・・・。」
「・・・・・そんなこと、わかってるよお。それでも、大ちゃんが、どうしようも好き、なんだから仕方ないじゃんかああ・・・・。」


おれだって、コドモじゃないんだから、大ちゃんが男だってことぐらい百も承知で。
でも、なんとなく付き合った彼女には感じなかったトキメキが、大ちゃんには感じられて。

あんなにも、胸がきゅううんとした撮影。
お仕事が終わってしまってからも、ずっとずっと大ちゃんのことで胸がいっぱいで・・・・・。

なんだか、綺麗なはずのイルミネーションが、すっごく切なく感じて。
気がつけば、誰かに助けを求めたくて、タッキーさんの家の前にいた。

「大ちゃん・・・・。好きになっても、いいんだよね・・・・??」
「ああっ・・・・。もう、自分に嘘はつけないよ・・・・・。」

ぽとり。と肩口に落ちる、一粒の涙。

-------ああ。大ちゃんは、オトナだから。おれを守ろうとして、一人で悩んでくれてたんだ・・・・。

「大ちゃん・・・??あのね・・・。真剣に好きになったのって、大ちゃんが初めてだけど・・・・・。これが、本物の恋だってことぐらい、自分でも、わかるよ??」

ぎゅううって抱きしめたまま、無言で聞いてくれる大ちゃん。

「そりゃあ、心無いひともいるかもれないけど・・・・・。だからって、ただの弟になんてなれないんだもん・・・・。どうやったって、ダメ、なんだもん・・・・・。」

------------そう。努力したのだ。

大ちゃんが好きなのは、かわいい弟で、素直な後輩で。
大ちゃんが愛しているのは、ギイであるときの、タクミであるおれだと・・・・。

何度も、何度も、諦めようと、努力したのだ。


「大ちゃん・・・。愛してる・・・・・。」
「まおっ・・・・。愛してる・・・・・。」

耳元で、何度も愛してる、とささやかれ、キスを埋め込まれ。
耳が、とろけそうになる・・・・・。