まおの香りに包まれて、夢の中でまおと愛し合って。
すごく幸せな気分で目が覚めた・・・・けれど、つい、まおのぬくもりを探して、シーツの上を掌でまさぐる・・・と、クーラーで冷やされたひんやりと冷たいシーツ・・・。

ああ。そうだ・・・・。
まおは、いないんだった・・・・・。

ぽっかりと空いた、ベッドの片方の空間を眺める。
一人きりで眠っていたのに、しっかりと壁際に寄って、まお一人分の隙間を空けて眠っていた俺。
そんな無意識の行動に、どれだけまおが俺の中で大きな存在感を示していたかを実感する。

もう、撮影は始まったころだろうか・・・・・。

ベッドサイドの時計をみやる。
この、ノスタルジックな音が好きで、あえてカチコチカチコチと秒針のなる時計をまおと選んだ。ベッドで抱き合いながら、まおの心臓の音と混りあう音。
その音を聞いていると、いつも聞いているまおの心臓のトクトクトクトクと鳴る音を思い出して、切なくなる。

遮光カーテンから一筋漏れ入る朝の光が、活動を開始せよ。と促すけれど・・・・・。なんだか、ぼーっとしてしまって、身体がだるい。
こうやって、なんだかやる気のない日は、まおが「もお~~。遅れちゃうよ。」と、抱きしめて、キスをして、元気をくれるのに。

なんて、思いを巡らしながらベッドでゴロゴロしていると、携帯の震える音。


「大ちゃん。おはよう。・・・起きてた??」
「ああ。目は覚めてた。」

「また、ベッドの中でグズグズしてたでしょ~~。」
「・・・なんで、わかるの?」

「ふふっ。だって、おれがいないといつもそうじゃない??テンションあがんない。とか言って・・・・・。いつも、早起きして、朝ごはん作ってくれるのにさあ。」
「まおは・・・。起きれた??」

「ん・・・・。起きなきゃダメだしねえ。ちゃんと、夢で大ちゃんと逢えたよ。もう、撮影始まってる。」
「そっか・・・。じゃあ、ゆっくり話せないな。」

「ごめん。ちゃんと起きてるかどうか、確かめたかっただけだから。・・・・じゃあ、また。」
「ああ。また・・・・。」

ああ。新着メールがたくさん・・・・。
そうだった・・・。昨日、あのまま、夢でのまおとのデートを邪魔されないように、マナーモードにしてたの忘れてた・・・・。

<大ちゃん。おはよう。よく、眠れた??おれは、今起きたとこです>
<・・・・大ちゃんは、夢でおれに逢えましたか??>
<ジャーン。朝ごはん。ホテルのバイキング。美味しそうでしょ?>
<そろそろ、撮影始まります。大ちゃんももう起きたかな?>

なんて、日記・・・よりも詳しく、行動を報告してくれいるまお。

さっきは、すっかり仕事モードの明るい声、だったけれど、やっぱり俺のことを、いつだって忘れたことはないんだな。

そう感じれて、ふっと笑みがこぼれる。


「よし!!俺も朝メシでも作るか!!」

イングリッシュマフィンを半分に裂いて、ハムとチーズを挟んで。
焼けるのを待っている間に、ついタバコを吸いたいなあ。なんて思ってしまうけれど、ストックもないので、吸えなくて。
まおが、「おれが毎日来るから。」って、たばこも、灰皿も処分してしまった。

ああ。やっぱりまおがいないと吸いたくなるなあ・・・。
もう、随分と吸わなくても平気だったのに・・・・。

いやいや。まおに心配かけないためにも、自己管理はしっかりしなきゃ。

自炊と、禁煙。

まお禁断症状が出ようとも、しっかりと守らなきゃな・・・・。
っていうか、まだ、2日目・・・だぞ・・・。

先は長いなあ・・・・。