おれがシャワーから上がってくると、なにやらPCとにらめっこして調べモノをしている大ちゃん。
「ねえ・・・・?何してるの??」
肩越しに、覗き込めば、月の暦??のページが開いてある。
「なあ。まお。蛍、みたことある??」
「・・・・ううん。ないけど。」
「じゃ、決定。明日の夜、見に行こう。この前買った浴衣着て。」
「わあ。急だねえ。」
「だって、新月だから。暗いほうが、綺麗に見えるだろ?」
「・・・・あ。だから、月調べてたんだ・・・・。」
「そう。まお、両親ずっと忙しかったって言ってたし。高校生から、この仕事してて、プライベートで遊びに行くこともあまりなかったんじゃないかなあ。って思って・・・・。」
「蛍・・・・かあ。綺麗なんだろうねえ。」
「うん。イルミネーションの豪華絢爛とはまた違った美しさ。だよ。一回連れて行ってやりたかったんだ。」
「・・・ありがと。久しぶりの、デート、だね?」
やっぱり、大ちゃんの愛は深くて大きい。
今まで空白だった部分を埋めるように、おれの過去のことまで考えて、デートコースを考えてくれる。
本当に、大ちゃんといることで、広がった世界がどれだけあることか・・・・。
-----------次の日。
お互いに日中はお仕事をして。
夕方帰ってきてから、軽くシャワーを浴びて浴衣に着替える。
白地に、紺の金魚。大空を羽ばたく大ちゃんに憧れていたおれのよう。
でも、今は悠々と水の中を泳いでいる。大ちゃんの愛に包まれて、安心しきっているかのように。
大ちゃんのは、紺地に白抜きのトンボ。
水辺にある木に、羽根を安めにくるかのように。悠々と泳ぐ金魚を見守るかのように。
大ちゃんの帯を、きゅっと腰で巻いてあげる。
やっぱり、しなやかな筋肉がついているから、様になるなあ・・・。なんて見惚れたりして。
「まおの帯びも貸してみ?」
「・・・・はい。」
至近距離で巻かれる帯。大ちゃんの髪の毛が、口元を掠めてドキドキする。
「はい。できあがり。」
「・・・・あ。ありがと。」
見上げられたその視線に、ドキドキが更に大きくなる。
だって・・・・。浴衣の胸元から見える素肌が色っぽいんだもん・・・・・。
おれの心の声を知ってか知らずか。
「惚れ直してんなよ。バーカ。」
と、頭をくしゃりと撫でられる。
毎日、この瞳に見詰められているのに。数え切れないくらい身体を交わしてきたのに。
いつまでたったも、色あせない、トキメキ・・・・・。
「ほら。行こうか。車、下に置いたままだし。」
仕事帰りに、大ちゃんが借りてきてくれたレンタカー。
助手席のドアを開けてくれ、おれが乗り込む。浴衣って、動きにくい・・・・・。
はだけてしまった、足元を直していると、大ちゃんが運転席に滑り込んでくる。
「まお。シートベルトしとけよ。」
なんて、ハンドルに手をかけながら言うもんだから。
浴衣の袖がまくれて、逞しい腕が覗いている腕に見惚れてしまって・・・・・。
「まお。シートベルト!!」
「・・・あ!?ああ。ごめん・・・。」
つい、うっかり聞き損っていた。
にぎやかな都会から、真っ暗な林道へとどんどん静かなほうへと向かっていく車。
「蛍って、水の綺麗なところしか、いないんだよねえ?」
「そうだなあ。川の上流のほうまで行かないとダメだな。・・・俺も、実は大学生の時以来だよ。」
「大ちゃん、カッコイイなあ・・・。ダイガク行ってるんだよね。」
「まだ、夢がはっきり見えてなかっただけだよ。・・・・俺はまおの方が、カッコイイと思う。中学生から、しっかり自分の未来みつけて・・・さ。」
「大ちゃんに、そんなこと言われたら、照れるなあ。・・・・でも、おれがこの世界を目指したから、出会えたんだもんね。」
「ああ。まおが、会いにきてくれたんだ。」
‘会いに来てくれた‘か・・・・・。そのセリフに胸がきゅんとする。
おれのほうこそ、大ちゃんに出会えて、愛してもらえて、こんなに毎日幸せをもらっているのに・・・・。
運転している大ちゃんの横顔をじっとみつめる。
ああ。こうやって、助手席に座っていられる日がくるなんて、思いもしなかったもんなあ・・・・。
ありがとう。の想いを込めて、大ちゃんの左手に、右手をそっと重ね。
手の甲に、ちゅっと口接けた。
こらからも、ずっと一緒にいられますように。と願いを込めて。
道路の隅で、車を止める。
真っ暗でわからないけれど、ドアをあけると、小川のせせらぎの音が聞こえる。
しばらく道沿いに歩いてゆくと・・・・・・・・。
ポツリ。ポツリ。ゆらあ~~。
って感じで、小さな光が揺らめいている。
「・・・あ。あれが、蛍??」
確かに、華やかなイルミネーションと違って、揺らめくろうそくの炎をみているよう。
「もうちょっと上流に行けば、たくさんいるらしいんだけど・・・・。」
大ちゃんと手をつなぎながら、ゆっくりと歩き出す。
カラン。コロン。と鳴る下駄の音と、蛍のほのかな光がなんとも風情があっていい。
こんな、しっとりしたデートも悪くないなあ、なんて思うながら歩いていると。
まるで、クリスマスツリーのような、光の渦にであう。
「わあっ!!綺麗っ・・・・!!」
「・・・まお。シイイ----------。蛍が、びっくりする。」
口元を、大ちゃんの手でふさがれる。
「・・・きれいだねえ・・・・・。幻想的・・・・・。」
イルミネーションと違い、やわらかな光が、不規則にゆらゆらと動きながら光っている。
どうやら、一本の木にとまった蛍ならしい。
隣にいる大ちゃんの肩に、こつんと頭をあずける。
ゆらゆら揺らめいていた蛍たちが、空へと舞い上がって行く。
空に目を向けると、満天の星空。
「ねえ。大ちゃん。蛍って、3日ぐらいで死んじゃうんだよね・・・・・。」
「ああ。短い命、だな・・・・。はかなくも、美しいって感じだな・・・・・。」
「あの蛍たちは、地上で光り輝いて。・・・・命を落としても、あの星のように、空に舞いあがってまた輝くんだね・・・・。」
「ああ。きっとそう、だな・・・・。」
二人並んで蛍の光を見詰める。
「なんか、夏ってはかないよねえ・・・・。セミといいい、蛍といい。エネルギッシュに見えるけれど、実ははかない。・・・だから、今を一生懸命生きてるんだね。」
「・・・・そうかもしれないな。」
友達とわいわい騒いでいるだけでは、気がつけなかった四季のうつろいの楽しみ方。
ダイチャンは、いつもさりげなく教えてくれる。
おれが、年齢の割りに大人っぽい、と言われるのは・・・・・・。
きっと、大ちゃんが色々教えてくれるおかげ。
「ありがと・・・・・。」
絡めあった腕に、ぎゅっと力を込めて。
あなたの気遣いに。あなたのやさしさに。あなたの深い愛に・・・・・・・。
満天のきらめく星と、蛍のはかない光をずっとずっと見つめながら。
ずっと、ずっと、そうやって大ちゃんのぬくもりを感じていた・・・・・・・・。
「ねえ・・・・?何してるの??」
肩越しに、覗き込めば、月の暦??のページが開いてある。
「なあ。まお。蛍、みたことある??」
「・・・・ううん。ないけど。」
「じゃ、決定。明日の夜、見に行こう。この前買った浴衣着て。」
「わあ。急だねえ。」
「だって、新月だから。暗いほうが、綺麗に見えるだろ?」
「・・・・あ。だから、月調べてたんだ・・・・。」
「そう。まお、両親ずっと忙しかったって言ってたし。高校生から、この仕事してて、プライベートで遊びに行くこともあまりなかったんじゃないかなあ。って思って・・・・。」
「蛍・・・・かあ。綺麗なんだろうねえ。」
「うん。イルミネーションの豪華絢爛とはまた違った美しさ。だよ。一回連れて行ってやりたかったんだ。」
「・・・ありがと。久しぶりの、デート、だね?」
やっぱり、大ちゃんの愛は深くて大きい。
今まで空白だった部分を埋めるように、おれの過去のことまで考えて、デートコースを考えてくれる。
本当に、大ちゃんといることで、広がった世界がどれだけあることか・・・・。
-----------次の日。
お互いに日中はお仕事をして。
夕方帰ってきてから、軽くシャワーを浴びて浴衣に着替える。
白地に、紺の金魚。大空を羽ばたく大ちゃんに憧れていたおれのよう。
でも、今は悠々と水の中を泳いでいる。大ちゃんの愛に包まれて、安心しきっているかのように。
大ちゃんのは、紺地に白抜きのトンボ。
水辺にある木に、羽根を安めにくるかのように。悠々と泳ぐ金魚を見守るかのように。
大ちゃんの帯を、きゅっと腰で巻いてあげる。
やっぱり、しなやかな筋肉がついているから、様になるなあ・・・。なんて見惚れたりして。
「まおの帯びも貸してみ?」
「・・・・はい。」
至近距離で巻かれる帯。大ちゃんの髪の毛が、口元を掠めてドキドキする。
「はい。できあがり。」
「・・・・あ。ありがと。」
見上げられたその視線に、ドキドキが更に大きくなる。
だって・・・・。浴衣の胸元から見える素肌が色っぽいんだもん・・・・・。
おれの心の声を知ってか知らずか。
「惚れ直してんなよ。バーカ。」
と、頭をくしゃりと撫でられる。
毎日、この瞳に見詰められているのに。数え切れないくらい身体を交わしてきたのに。
いつまでたったも、色あせない、トキメキ・・・・・。
「ほら。行こうか。車、下に置いたままだし。」
仕事帰りに、大ちゃんが借りてきてくれたレンタカー。
助手席のドアを開けてくれ、おれが乗り込む。浴衣って、動きにくい・・・・・。
はだけてしまった、足元を直していると、大ちゃんが運転席に滑り込んでくる。
「まお。シートベルトしとけよ。」
なんて、ハンドルに手をかけながら言うもんだから。
浴衣の袖がまくれて、逞しい腕が覗いている腕に見惚れてしまって・・・・・。
「まお。シートベルト!!」
「・・・あ!?ああ。ごめん・・・。」
つい、うっかり聞き損っていた。
にぎやかな都会から、真っ暗な林道へとどんどん静かなほうへと向かっていく車。
「蛍って、水の綺麗なところしか、いないんだよねえ?」
「そうだなあ。川の上流のほうまで行かないとダメだな。・・・俺も、実は大学生の時以来だよ。」
「大ちゃん、カッコイイなあ・・・。ダイガク行ってるんだよね。」
「まだ、夢がはっきり見えてなかっただけだよ。・・・・俺はまおの方が、カッコイイと思う。中学生から、しっかり自分の未来みつけて・・・さ。」
「大ちゃんに、そんなこと言われたら、照れるなあ。・・・・でも、おれがこの世界を目指したから、出会えたんだもんね。」
「ああ。まおが、会いにきてくれたんだ。」
‘会いに来てくれた‘か・・・・・。そのセリフに胸がきゅんとする。
おれのほうこそ、大ちゃんに出会えて、愛してもらえて、こんなに毎日幸せをもらっているのに・・・・。
運転している大ちゃんの横顔をじっとみつめる。
ああ。こうやって、助手席に座っていられる日がくるなんて、思いもしなかったもんなあ・・・・。
ありがとう。の想いを込めて、大ちゃんの左手に、右手をそっと重ね。
手の甲に、ちゅっと口接けた。
こらからも、ずっと一緒にいられますように。と願いを込めて。
道路の隅で、車を止める。
真っ暗でわからないけれど、ドアをあけると、小川のせせらぎの音が聞こえる。
しばらく道沿いに歩いてゆくと・・・・・・・・。
ポツリ。ポツリ。ゆらあ~~。
って感じで、小さな光が揺らめいている。
「・・・あ。あれが、蛍??」
確かに、華やかなイルミネーションと違って、揺らめくろうそくの炎をみているよう。
「もうちょっと上流に行けば、たくさんいるらしいんだけど・・・・。」
大ちゃんと手をつなぎながら、ゆっくりと歩き出す。
カラン。コロン。と鳴る下駄の音と、蛍のほのかな光がなんとも風情があっていい。
こんな、しっとりしたデートも悪くないなあ、なんて思うながら歩いていると。
まるで、クリスマスツリーのような、光の渦にであう。
「わあっ!!綺麗っ・・・・!!」
「・・・まお。シイイ----------。蛍が、びっくりする。」
口元を、大ちゃんの手でふさがれる。
「・・・きれいだねえ・・・・・。幻想的・・・・・。」
イルミネーションと違い、やわらかな光が、不規則にゆらゆらと動きながら光っている。
どうやら、一本の木にとまった蛍ならしい。
隣にいる大ちゃんの肩に、こつんと頭をあずける。
ゆらゆら揺らめいていた蛍たちが、空へと舞い上がって行く。
空に目を向けると、満天の星空。
「ねえ。大ちゃん。蛍って、3日ぐらいで死んじゃうんだよね・・・・・。」
「ああ。短い命、だな・・・・。はかなくも、美しいって感じだな・・・・・。」
「あの蛍たちは、地上で光り輝いて。・・・・命を落としても、あの星のように、空に舞いあがってまた輝くんだね・・・・。」
「ああ。きっとそう、だな・・・・。」
二人並んで蛍の光を見詰める。
「なんか、夏ってはかないよねえ・・・・。セミといいい、蛍といい。エネルギッシュに見えるけれど、実ははかない。・・・だから、今を一生懸命生きてるんだね。」
「・・・・そうかもしれないな。」
友達とわいわい騒いでいるだけでは、気がつけなかった四季のうつろいの楽しみ方。
ダイチャンは、いつもさりげなく教えてくれる。
おれが、年齢の割りに大人っぽい、と言われるのは・・・・・・。
きっと、大ちゃんが色々教えてくれるおかげ。
「ありがと・・・・・。」
絡めあった腕に、ぎゅっと力を込めて。
あなたの気遣いに。あなたのやさしさに。あなたの深い愛に・・・・・・・。
満天のきらめく星と、蛍のはかない光をずっとずっと見つめながら。
ずっと、ずっと、そうやって大ちゃんのぬくもりを感じていた・・・・・・・・。