何日か、過ぎ・・・・・・。

毎日、あの少年は海の家にふらりと立ち寄っては、飲み物を注文していった。
時々お客が途切れた時に、波間に目をやると、ボードにつかまって、波に揺れている少年の姿を見つける。
素人なのでよくわからないけれど、毎日、少しずつ、波に慣れていっているようだ。

「毎日通って、努力家、なんだなあ・・・・・。」

誰に話しかけるでもなく、そうつぶやく。
オーダーを取る以外に、直接言葉を交わすことはないけれど、毎日そうやって眺めているうちに、なんだか親近感が沸いてきていた。
相変わらず、名前も、年齢も知らないままなのに。


そんな毎日を過ごしていたある日。
夕方になり、お客さんもまばらになってきたので、オープンテラスを片付けていると、いつものようにあの少年がふらりとやってきた。

「今日は暑かったから、なんか飲んで帰ろうと思って・・・・・。
もう、閉まっちゃいますか??」
「・・・・・大丈夫だよ。閉店まであと30分はあるから。」

いつものように、コーラを注文する彼。
いつものように、厨房に戻る俺。

「お待たせ・・・・・・。」

コーラを片手に戻ってくると、ビキニ姿のプロポーション抜群な女性と隣同士で座っている彼。
彼女・・・・?なのか・・・・??

意味もわからず、心の奥がざわめく。
あれだけの美少年だ。彼女がいてもおかしくない。
なんだ・・・・・。彼女との待ち合わせ、だったんだ・・・・・。

などど思いながら、彼のテーブルにコーラを置く。
聞いてはいけない、と思いながらも、二人の会話に耳をそばだててしまう。

「ねえ・・・・。一人で、海にくるなんて、ナンパ目的なんでしょ??」
「いやっ・・・・・。違います。僕はサーフィンをしに・・・・・・。」

近くで見ると、とても困惑した顔の彼。
黒曜石のような瞳が、戸惑いに揺れている・・・・・・・。

なんだ。いわゆる逆ナンってやつか。

毎日、半日がかりでサーフィンの練習に来ているのを知っている俺は、そうわかった途端、急にその女性にムカつきを覚える。
そんな、ちゃらちゃらした男ばかりだと、思うなよ・・・・・。

その気がないなら、はっきり断ればいいのに。中途半端に返事してると、後がややこしいぞ・・・・・。

わざとらしく、伝票を二人の間に置く。

「・・・・注文は、以上ですか?」
「すみません。ラストオーダー終わってしまっているので、またの機会をお待ちしています。」

にっこりと営業スマイルで。
女性に有無を言わせないように、店の外に「どうぞ。」と掌で誘導する。

「あら。貴方もいい男ね。」
「・・・ありがとうございます。また、お店が開いているときにお越しくださいね。」

しっかりと、店の外までエスコートして。
営業スマイルで見送って・・・・・。

振り返ると、少年が心底ほっとしたような表情で、俺を見つめたいた・・・・・・・。