終わったら、電話する。とは言われたものの・・・・・・。
なんだか、気になって、気になって、家に帰って待っている気になれなかった。

-------------ので。

スタッフ用の談話室で時間を潰し・・・・。そろそろかな?と思い、現在、更衣室。
ロッカーにもたれて座り込み、ケータイのディスプレイをじっとみつめる。

一回きりの、送信履歴。
--------------まお→渡辺さん
これから、この履歴がどんどん増えていくんだ、と思うだけで、ドキドキ・ワクワクしてくる。

・・・・・あ。名前、変えておこう・・・・・。
アドレスから、渡辺さんを引っ張ってきて、「大ちゃん」に変更する。

ふふふっ・・・・・。だいちゃん、だって・・・・・・。



TRRRRR-----------.

「もしもしっ!?」
「・・・・うわっ。びっくりしたあ・・・・。まお、出るの、すっごく早くない??」

「あははっ。ちょっと、今携帯いじってたから・・・・・。」
「今、仕事終わったんだけど・・・・・。どうする??また、7時ぐらいなら駅に着けそうだけど・・・・・・。」

「・・・・あっ。僕、まだホテルにいます。・・・・更衣室。」
「・・・・もしかして、ずっと待っていてくれたの??」

「あ、はい・・・。っや・・・・。なんか、色々することあって・・・・・。」
「・・・・・そうなんだ。忙しかったんだ??」

素直に、ダイチャンと一緒に帰りたくて。とか、楽しみだったので待ってました。とか言えばいいのに。
なんとなく、照れくさくて・・・・。不自然な言い訳。
平日のホテルで、そんなに忙しいわけがない。

でも、そんな言い訳をしてしまう自分が、なんだか愛おしい。

憧れの渡辺さん、が今日から急にコイビトです。なんて言われて、コイビトとして当たり前のように接することができるほうが、不自然、かもね・・・・・。
彼の、一挙一動が、こんなにも僕の心をかき乱して、ドキドキさせる。

きっと、これが本物の恋、なんだ・・・・・・。


「・・・・じゃあ、俺もダッシュでそっちに行くから、待ってて??」

--------はい。
と、返事をする間もなく、通話が切れて・・・・・・・。

本当に、数十秒後。
ダダダダダッという、足音とともに、息せききって、更衣室のドアが、バタン!!と開く。

「・・・・はあ、はあ、お待たせっ。まお。」

・・・・・ちょっと、びっくり・・・・・・。

渡辺さん、はいつもスマートで、いつもふわりと微笑んでいて・・・・・。
怒っているところとか、あせっているところとか、見たことがなかったから。

その渡辺さんが、文字通り全力疾走してきたんだろう息切れをして、僕の目の前に、いる。

「・・・・いえ・・・。全然、待ってません・・・・・。というか、早すぎて、びっくり・・・・です・・・・。」

「・・・あははっ。だって・・・・てっきり家にいると思ってたから・・・・・。
待っててくれてるなんて・・・・・。つい、テンションあがって、飛んできちゃった・・・・・。」

なあんだ。
スマートで、かっこよくて、いつも微笑んでいる渡辺さんだって、僕と一緒でドキドキしてるんだ。
そう思うと、なんだか9歳も年上のこの彼が、かわいく思えてきた。

「ほうんとうは。。。。僕も、楽しみで、用事もないのに待ってたんです・・・・。」

大ちゃんの袖口を、きゅっとつかむと、ぎゅっと、引き寄せられ、抱きしめられる。

「今から・・・どうする?まお。食事もまだだよなあ・・・・・。俺ん家、冷蔵庫なんかあったかなあ・・・・・。
ごはん、食べて帰ってもいいけど・・・・・・・。」

お洒落なレストランもいいけれど、今日は、少しでもダイチャンといたい気分。
わがまま、かなあ・・・・・??

「あの・・・・。家に、行きたい、です・・・・・・。」

わずかに反応する、ダイチャンの腕・・・・・・・・。

「・・・・・んん??じゃあ、買い物よって、なんか作るか!!まおって、何が好きなの??」

「えっと・・・・・・。ハンバーグとか・・・・。からあげとか・・・・。パスタとか・・・・・・。」

「・・・・ぷっ。なんか、お子様、だなあ・・・・・。いいよ。米炊くの面倒だから、パスタにでもするか?」

いつもの、ふわりとした微笑で、顔をのぞきこまれ、一気に鼓動が跳ね上がる。
・・・・・ダイチャンの、この笑顔に弱いんだ・・・・・。
--------新たな、発見。

「それと、まお!!やっぱり、敬語が抜けてないよ。」
「・・・・あ。ほんと・・・・・。」

「まあ、急には無理だわな・・・・。」
「うん・・・。がんばる・・・・・。」